私は常々都市公園における植栽管理のあり方を疑問視してきました。それは人工的な植え込みを維持管理し、それを増やすことが、「自然との共生を図り、生物多様性を推し進める」ことという大きな勘違いがあることです。
そもそも人工的な公園には自然はなく、生物多様性を維持できる場所でもありません。もし、都市公園のさまざまな目的と機能を維持しながら、本気で自然との共生や生物多様性を考えていくなら、庭の園芸の延長で公園管理を行う発想自体を変えることが必要と考えます。
私は昨日都内のある公園を47年ぶりに訪れました。この公園は近隣公園の規模であり、自然との共生および生物多様性の観点からは比較的成功している場所だと考えられます。園内にはテニスコートや体育館もあり、スポーツやレクリエーションの環境を維持しながら、園内の動植物も楽しめるエリアを創り出すというゾーニングの姿勢が伺えました。
久しぶりに訪れて感動したのが立派に成長したエノキです(写真1)。園内には数えただけでも10本ほどのエノキの大木があり、伐採されずにそのまま維持されていたことをうれしく思いました。樹高は20 mを越えていました。
写真1
エノキは日本を含む東アジアの温帯地域を代表する代表する樹木であり、鳥が実を運ぶためにあちこちで容易に生えてきます。しかし、近隣公園の規模だとしても、多くの公園内ではその幼木が生えてくると、なぜか伐採されてしまいます。ほかの自然発生的な樹木について同様です。
代わりに、関東では本来なじみのないマテバシイやヤマモモなどの常緑樹が、わざわざ公園内に大量に植栽されることが多いようです。そして、周囲をツツジやアベリアなどの低木でぐるりと囲んでしまう判で押したような近隣公園を多くみかけます。
自治体から委託された園芸業者が、初期植栽以外の自然発生した樹木をバチバチと伐採し、公園を盆栽庭のようにしてしまう光景をよく見かけます。もちろん委託された業者には責任はないですが、市の担当部署の意識の程度が見事に公園の植栽管理に現れているようです。
その意味で、今回訪れた公園は、お馴染みのツツジやアベリアでぐるりと囲まれることもなく、初期設定からの自然の植生を反映させたような姿になっていたことは好ましい限りです。自然観察ゾーンでは散策路から両側へ踏み込むことを禁止するような管理がなされていることも印象に残りました。
東京都区内の近隣公園は、割とこのような方針・思想がはっきりしたものが多く、かつ個性があるように思います。
上記のエノキの大木の周囲のいくつかは囲みがしてありました(写真2)。木のよってはさらに太い切り枝で防波堤の落ち葉の飛散を防ぐ処置がしてあり、明らかに意図的にエノキ根元の落ち葉を保護する姿勢が見られました。
写真2