Dr. Tairaのブログ

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エノキの高木とゴマダラチョウ

前のページでゴマダラチョウアカボシゴマダラの棲み分けの可能性を指摘しました。すなわち、ゴマダラチョウの幼虫は食草であるエノキの中では高木を好み、かつ低幼木でも発生しているということがありますが、アカボシゴマダラの幼虫はもっぱら幼木に親和性があり、高木はあまり好まないという可能性です。
 
このようにゴマダチョウはエノキの高木との関係が深いわけですが、ではどのくらいの高さのエノキを最も好むのでしょうか。この点について、文献を探してみましたが具体的なものは見当たりませんでした。またウェブ上で得られる情報を見ても、「高木」というざっくりとした表現が多く、ゴマダラチョウについては果たして好む高さや主幹の大きさがあるのかよくわかりません。
 
私はこれまでの経験から樹高よりも下枝の付き具合(どの程度の根元まで枝があるか)がゴマダラチョウの産卵に影響しているのではと考えてきました。なぜなら、1–2 mの高さの葉上で幼虫を見ることが多く、またこのくらいの下枝がついているエノキの高木で落葉下の越冬幼虫を見ることが多かったからです。もっともそれ以上の高さだと確認することは実際困難ですが。
 
そして越冬型幼虫が葉上にいる位置(高さ)は、冬に降りてくる場合の物理的な制約に関係しているのでは?となんとなく思っていました。

しかし、高木の観察を多く重ねてくるとけっこう高い位置にも幼虫がいるということがわかってきました(確認できた最高では8 m)。今日観察したエノキは樹高19 mで、最も低い下枝は2.5 mの高さにありました(図1)。当然、私の手の届かない位置にあります。この根元にしっかりゴマダラチョウの幼虫がいました。

イメージ 1
図1. 観察した樹高14 mのエノキの高木(下に見えるメジャーは2 mスケール)
 
写真1は、今日エノキの高木下で見つけたゴマダラチョウの幼虫です。時間がなくて10分ほどしか探索できず、発見したのはこの1頭だけでした。
 
イメージ 2
写真1
 
下枝が高い位置にあるエノキでは春に起眠した越冬幼虫が上って行くのにより体力を使います、力尽きて死亡することもあるでしょう。もっとも私の観察では幼虫の幹上での移動移動速度は約2.6–5.0 m/hなので、このくらいの高さであれば短時間で上ることができる計算になります。