Dr. Tairaのブログ

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静電気と柔軟剤

今朝のNHKあさイチ」では、生活における静電気を取り上げていました。冬になると静電気が発生しやすくなります。服を脱ぐ時やドアノブを触った時にパチパチっとするあの嫌な感触であり、誰もが経験しています。
 
番組でまず紹介していたのは、服の素材と静電気の発生のしやすさとの関係です。
 
天然素材である綿、麻、絹は帯電しにくいので、静電気の発生源としてはなりにくいです。一方、石油からできるアクリル、ポリエステルなどはマイナスに帯電し、ナイロン、ウールなどはプラスに帯電することが知られています(図1)。つまり、マイナスとプラスに帯電した素材同士が擦れるときに静電気が発生するわけです。
 
服を買い、着るときにはどういう素材のものか、意識しておくといいでしょうね。
 
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図1. 服の素材による帯電の仕方の程度(2018.12.17 NHKあさイチ」より)
 
そこで、とくに肌に直接身につける下着としてどういう素材があるか、調べてみたところ、以下の4つが出てきました。

綿(コットン)
綿+エラスタン(ポリウレタンなど)
ナイロン・ポリエステル系
レーヨン・モダール系

 
いろいろあるようですが、私は以前から綿か綿+エラスタンのものを選んでいます。
 
話は変わりますが、会社や大学の研究室で働いていたときは、実験でアルコール類や引火しやすい有機溶剤を頻繁に使用していたので、必ず綿製の白衣か作業着を着用していました。静電気発生防止のためです。
 
私が直接経験した(見た)静電気に関わる事故として、会社支給のポリエステルの作業着を身につけて仕事をしていた技術員が作業中にエタノールを腕に浴びてしまい、火傷を負った事例があります。急いで上着を脱いで着替えようとした際に静電気が発生し、引火してしまったわけです。静電気の怖さをあらためてこのとき知りました。
 
上記番組では柔軟剤の話も出ていました。服を洗濯する際には洗剤を使いますが、今の洗剤には陰イオン性の合成界面活性剤が入っています。このため、洗濯後は一般に服がマイナスに帯電し、かつゴワゴワとした感じになります。そこで家庭で洗濯をするときは、柔軟性の付与と帯電防止(静電気発生防止)のために、柔軟剤で後処理することが一般的です。

図2に、私が使っている柔軟剤の表示を示します。柔軟剤には一般的にエステル型ジアルキルアンモニウムという陽イオン(カチオン)性の界面活性剤が入っています。これは第四級アンモニウムカチオンに分類され、溶液のpHに関わらず常に帯電しているという特徴があります。これでマイナスに帯電した洗濯物を中和するわけです。
 
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図2. 柔軟剤の表示例(赤枠内にエステル型ジアルキルアンモニウム塩の表示がある)
 
第四級アンモニウムカチオンのそのほかの特徴として、殺菌効果があります。この種の殺菌剤・消毒剤として用いられているのが塩化ベンザルコニウムです(図3)。塩化ベンザルコニウムを含む市販消毒剤は、病院や公共施設のほかスーパーマーケットなどでも備え付けられているのを見ることができます。

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図3. 四級アンモニウム塩系界面活性剤ー塩化ベンザルコニウム
 
柔軟剤に殺菌効果をもつ物質が入っていることは一般にはあまり理解されていないでしょう。柔軟剤を使うということは、このような殺菌剤が洗濯した服に残っているかもしれないということです。直接肌に身につける下着などに殺菌剤がついているということは、ひょっとしたら皮膚を守っている常在菌にとって悪い影響を与えているかもしれません。

私が使っている柔軟剤は、日本のメーカーのもので微香性です。日本ではこのようににおいを抑えるための微香タイプが主流でしたが、10年ほど前から香りの強い外資系の製品が入ってきて、これが今ブームになっているようです。テレビを観てもP&Gなどの外資系会社の芳香性柔軟剤がCMが盛んに流れています。
 
本来の柔軟剤使用の目的は柔軟性(肌触りのよさ)の付与と帯電防止であったわけですが、今の消費者は柔軟剤購入において「香りを重視しているようです。いささか本末転倒の感があります。道で人とすれ違ったり、電車の中に入ったりすると、プーンと強烈な外資系柔軟剤の「臭い」がすることがあります。
 
そのためか、柔軟剤に含まれる香料等の化学物質による体調不良やアレルギー症状を起こす人が増え、健康被害が懸念される時代になっています。私自身は臭い等による体調不良などはありませんが、今の人々が柔軟剤由来の大量の化学物質に塗れて日々を過ごすというのは、やはり不自然な感じがします。
 
                 
カテゴリー:生活・健康と科学