Dr. Tairaのブログ

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台風の発生数


今日、台風21号が日本本土に上陸しました(図1)。テレビなどでは、しばしば台風の発生やその勢力に及ぼす地球温暖化の影響が話題になることがありますが、実際はどこまでわかっているのでしょうか。

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図1. 台風21号に関するテレビ報道(2018年9月4日14:22 TBS「ゴゴスマ」より)

そこで、気象庁の統計情報から得られるデータ[1]をダウンロードして、台風の発生件数の周年変化をグラフ化してみました。図2に、過去66年間における台風の発生件数と上陸数を、図3に、月別発生数と上陸数を示します。

図2から見る限り、台風の発生数は増加しているということはなく、ほとんど変わらないか、むしろ少し減っているように見えます。発生数は平均すると約26/年になります。経年変化で強い台風が増えているかどうかはわかりませんでした。

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図2. 1951-2017年における台風の発生数(上)および上陸数(下)

台風の発生や上陸は、当然ながら夏から秋にかけて多いということは、私たちは経験済みです。図3にそれが現れています。

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図3. 1951-2017年における月別にみた台風の発生数(上)および上陸数(下)

いろいろな文献やウェブ情報も参照してみましたが、結局、台風の発生数に及ぼす地球温暖化の影響については、現状ではよくわからないということのようです。ただし、今後より強力な台風が増えていくということは示唆されています。

気象庁気象研究所や地球科学技術総合推進機構を中心とする研究グループは、21世紀末頃を想定した地球温暖化と気候に関するシミュレーション実験を行なっています、それによれば、地球規模での熱帯低気圧の発生数については、減少気味になる一方、最大風速が45m/sを超えるような強い台風の出現数については、温暖化に伴って増加する傾向があるとされています。

2016年にネイチャー・ジオサイエンスに発表された論文では、地球温暖化に伴って台風の勢力が大きくなることが示されています [2]。すなわち、過去数十年間に、東アジアや東南アジアに上陸した台風は、海岸近くの海面温度が上昇した結果として、より強力になったとされています。今後、日本を含めた東アジアの国々は、さらに被害の大きい台風を経験することになると、論文は示唆しています。

今日のテレビでは、台風の強さの階級についても解説していました(図4)。今後、年を経るごとに、数は多くなくても、より強い台風がやってくることは毎違いなさそうです。

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図4. 台風の強さの階級(2018年9月4日14:22 TBS「ゴゴスマ」より

台風21号は「非常に強い」に相当し、相当の被害が予想されます。これだけ強力な台風にもかかわらず、内閣府防災は、9月3日以降ほぼ1日ツイートなしです [3]。どういうことでしょうか。


参考文献


2. Mei, W. and Xie, S.-P.: Intensification of landfalling typhoons over the northwest Pacific since the late 1970s. Nat. Geosci. 9, 753-757 (2016). https://www.nature.com/articles/ngeo2792