近年、豪雨による災害が毎年のように起こっています。最近の5年間を見ても豪雨による被害は甚大です。2014年, 2015年, 2017年, そして今年といずれも二桁から三桁に及ぶ死者・行方不明者を出しています(表1)。
表1. 日本における過去5年間の記録的豪雨と被害(死者・行方不明者)
図1. 「平成30年7月豪雨」における消防、警察による救助、救援作業の様子 [2]
表1には、2016年が抜けていますが、気候による災害がなかったというわけではなく、この年は8月台風第10号が太平洋上をジグザクと進んだ挙句、8月30日に岩手県に上陸し、死者23人、行方不明4人の被害を出しました。
7月5日放送のNHK「クローズアップ現代」では、記録的降雨を「キロクアメ」と呼んで、そのメカニズムについて放送していました [3]。キロクアメは、大気変動のエネルギーが日本に到達する現象「シルクロード・テレコネクション」と「海水温の上昇」に関係があるということで、東京大学海洋大気研究所 木本昌秀教授が解説していました。
シルクロード・テレコネクションは初めて聞いた言葉でしたが、簡単に言うとアジア大陸のシルクロード帯に沿って高気圧と低気圧が並び、それらを避けるように偏西風が大きく蛇行し、順番に東に移ってくるような形で、ついに太平洋にある高気圧がすごく強くなって、その手前で梅雨前線による豪雨が起きたということらしいです(図2)。
今回の豪雨で言えば、気象庁は、すでに7月5日14時の段階で、「西日本と東日本では、記録的な大雨となるおそれがあります」とpdf版の詳細情報を添えて発表していました [4]。にもかかわらず、これだけの甚大な被害が出るとは...というやるせない思いです。
政府・行政による豪雨災害への準備も今回の豪雨における初動対応も適切だったのでしょうか。記憶も新しい、昨年の九州北部の豪雨災害の教訓も生かされていないような気がします。
いずれにせよ、近年の豪雨は地球規模での気候変動と温暖化に関係あると誰しもが感じます。もとより日本は、地震、台風、豪雨に見舞われる災害大国であり、国民の命と財産、国土を守ると言うことであれば、政府・行政は、まずはこれらの災害に対する早急な対策と予算措置を講じるべきでしょう。これが現実的な国土防衛の姿であると思います。
参考文献
1. 気象庁:今般の豪雨の名称について. https://www.jma.go.jp/jma/press/1807/09b/20180709_meishou.html
2. 毎日新聞:豪雨 死者105人に、不明87人、警報は解除. 2018年7月9日11時08分 https://mainichi.jp/articles/20180709/k00/00e/040/149000c
3. クローズアップ現代:"キロクアメ"に異例の猛暑 この夏どうなる? 2018年7月5日. http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4155/index.html
4. 気象庁:西日本と東日本における8日頃にかけての大雨について. 2018年7月5日 http://www.jma.go.jp/jma/press/1807/05b/2018070514.html