スクミリンゴガイの脅威
日本における外来生物の中で、最も深刻な被害をもたらしているものの一つがスクミリンゴガイ Pomacea canaliculata です。今日のTBSテレビ「噂の!東京マガジン」では、この外来生物による農業被害の状況を伝えていました。
スクミリンゴガイは俗にジャンボタニシと呼ばれている南米原産の淡水巻貝(図1)ですが、タニシではありません。1980年代前半に食用のためアジア各国に持ち込まれ、日本では1981年、台湾から長崎県と和歌山県に持ち込まれました。しかし結局、市場には広がらず、今はほとんどの国で商品価値をなくしています [1]。
現在見られるスクミリンゴガイは、商品化に失敗した過程で放棄されたものが野生化したものであり、稲への加害などで各国で大きな問題になっています。現在では、沖縄県から関東に至る36都府県で、生息していると言われています。日本では九州などの水田で被害が生じていましたが、今回の放送では、千葉県における被害を伝えていました。
ちなみに、放送では一貫してジャンボタニシという俗称を使っていました。
図1. スクミリンゴガイの形(2018.6.24 TBS「噂!の東京マガジン」より)
スクミリンゴガイは、国際自然保護連合(International Union for Conservation of Nature, IUCN)によって、「世界の侵略的外来種ワースト100」の一つとされています(図2)[2]。放送でもこれを紹介していました(図3)。
スクミリンゴガイは、英語でもapple snailというように、赤からピンク色の卵を産みます。1回で産む卵は200–300個になり、多い時は年8,000個を産むとされています。ちなみに、なぜ「スクミ」という接頭語かは調べてもわかりませんでした。
卵は、水田の稲や用水路のコンクリートの壁などに、赤い塊の集団として見えることがあり、壮観というか、ちょっと気味が悪いです(図4)。
図4. 土管に産み付けられた卵の様子(2018.6.24 TBS「噂!の東京マガジン」より)
食害は水田の稲において顕著です。貝が食べた後は、稲がまばらになり(図5A)、もはや湿原様になっている場合(図5B)もあります。稲や周辺のコンクリートにはたくさん卵を見ることができます(図5C, D)。
図5. 千葉県の水田における貝による食と産卵の状況(2018.6.24 TBS「噂!の東京マガジン」より)
スクミリンゴガイの食害を防ぐには、寒さに弱いという性質を使用したり、天敵を使うことも考えられます。
水棲昆虫のゲンゴロウやトンボのヤゴ、カニ、エビなどはスクミリンゴ街を捕食できるとされています。昔であれば、天敵になり得る可能性がありましたが、今では農薬の影響で、これらの生物は水田環境からほとんど姿を消してしまいました。
上記の放送では、より大型のカメなどを使って捕食する案も紹介していましたが、広範囲に食害が起こるようなところでは、このような生物補填法は期待薄かもしれません。
参考文献
2. GLOBAL INVASIVE SPECIES DATABASE: 100 of the World's Worst Invasive Alien Species. http://www.iucngisd.org/gisd/100_worst.php
カテゴリー:生物多様性・外来生物