庭にあるベニカナメモチの先っぽの葉っぱがまた赤くなってきました(写真1)。
写真1
赤い葉っぱにアリとアブラムシがいっしょにいます(写真2, 3)。
写真2
昆虫のアリとアブラムシは共生関係にあることが知られています。すなわち、アブラムシからは甘露(honeydew)と呼ばれる甘い液体が排泄されますが、これをアリがごちそうになる代わりに、アブラムシの天敵を排除するという関係にあります。写真2, 3はまさにこの関係を示しているのではないかと思います。
写真3(写真2の拡大)
アリとアブラムシの関係は相利共生の一つですが、この関係は相利から片利、さらには敵対にいたるまで多様な形態が存在し、生態的・進化的な多様性があるといわれています [1]。おもしろい論文がたくさんあるので、日本の研究者によるものを選んで、あらためて少し読んでみました。
ミツバチなど昆虫には高い学習能力が認められていますが、アリにもこれは当てはまります。トビイロシワリの働きアリは、生まれてから一度もアブラムシと触れ合ったことがない場合、アブラムシを攻撃しますが、アブラムシから甘露をもらった経験ができると、アブラムシに対する攻撃性が低下するようです [2]。アリにおける学習効果の一つです。
アリはアブラムシと家族単位で共生関係をむすぶそうですが、働きアリたちがパートナーである多様なアブラムシ種をどのようにして選ぶかについては、社会学習が関わっていると報告されています [3]。すなわち、どのアブラムシ種が相手かという情報は、一つのアリから別のアリへ伝えられるということです。どうやって情報伝達が行われるかことになりますが、働きアリ間で栄養を“口移し”で交換することで伝わるということが認められています。
このような社会的学習は、大きな脳を持ち、高度な社会生活を営む高等動物においては当たり前ですが、小さな昆虫までもが高度な情報処理能力または意思決定システムをもっている可能性があることは驚きです。
参考文献
1. 片山 昇: アリ-アブラムシ共生系における今後の展望 : 内部共生細菌や天敵群集を含めた複合共生系とアブラムシの適応との相互作用. 日本生態学会誌 57, 324-333 (2007). https://doi.org/10.18960/seitai.57.3_324
2. Hayashi, M. et al. (2015) Ants learn aphid species as mutualistic partners: Is the learning behavior species-specific? J. Chem. Ecol. 41, 1148–1154 (2015). https://link.springer.com/article/10.1007/s10886-015-0651-1
3. Hayashi, M. et al.:Social transmission of information about a mutualist via trophallaxis in ant colonies. Proc. Royal Soc. B 284, pii: 20171367 (2017). http://rspb.royalsocietypublishing.org/content/284/1861/20171367.long