Dr. Tairaのブログ

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晩秋の自然観察会

 
今日は、昆虫の姿が見られる今年最後になるかもしれない、晩秋の自然観察会に参加してきました。しかし、あいにくの曇り空で、昆虫が動く姿を見るのは期待薄です。とはいえ、わくわくしながら午前9時半に指定された最寄りの駅前まで行きました。
 
集合場所には40名ほどの子供を含めた参加者が集まり、4グループに分かれて観察を行うことになりました。私は大人の参加者だけで構成されるグループの一つに入ることになりました。1グループにつき3〜4名の自然観察指導員がつき、目的地まで出発しました。
 
出発してすぐに、街のケヤキ通りがあり、落葉を始めているケヤキZelkova serrata)の観察を行いました。ケヤキの種子は、種子が単独で落下するタイプと、小枝に着いた着果短枝となって母樹から離脱して落下するタイプがります。指導員の指示に従って、 着果短枝を探したところ、すぐに見つかりました(写真1)。
 
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写真1
 
やがて公園に通じる歩道と自転車道を進みました。道の両側に、クスノキ、ツバキ、サザンカシラカシ、コナラ、マテバシイ、ヤマモモなどの樹木が立つきれいな並木道です(写真2)。
 
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写真2

シラカシマテバシイの実を拾いながらあれやこれや観察を続けていくと、指導員の方がクスノキ Cinnamomum camphora を葉をつまみながら、ダニ室の説明を始めました。

ダニ室は、植物がその葉を害する小動物や菌を捕食するダニを住まわせるためのものとされています。植物は、ダニ室の中にダニを常在させて天敵を食してもらう双利共生の関係を構成していると言われていますが、詳しいことはわかっていないようです。写真3は。クスノキの葉の小さな瘤のようなダニ室を示します。
 
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写真3
 
公園の真ん中には池があり、カルガモが泳いでいました(写真4)。
 
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写真4
 
池の周りには、コンクリートの柵があり、そこにアオスジアゲハ Graphium sarpedon の蛹がありました(写真5)。アオスジアゲハは、クスノキの葉に蛹を形成することが多いですが、ときどきこのように木を降りてきて蛹化します。越冬態は蛹なので、このまま冬を越すのでしょう。
 
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写真5
 
樹木の幹のところどころには、ヒロヘリアオイラガParasa lepida)の繭の跡がありました(写真6)。繭はカルシウムを含む卵状の殻で、国内の昆虫がつくる繭の中で最も固いと言われています。本種は、イラガ科のガの中では繭にも毒があることで知られています。
 
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写真6
 
さらに、公園内の並木道を進んでいくと、葉の上に思いがけずニホンアマガエル Hyla japonica がいました(写真7)。
 
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写真7
 
公園を抜け、やがて最終目的地である小川が流れる谷津田に到着しました。周辺は台地と丘ですが、典型的な里山の風景です(写真8)。右に見える樹木はエノキです。
 
 
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写真8
 
谷津田に着いて、さっそくアオサギ Ardea cinerea) に遭遇しました(写真9)。サギ科アオサギ属に分類される鳥類です。樹木のてっぺんに静止している珍しい光景が見られました。そのほかダイサギもいましたが、カメラに収めることができませんでした。

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写真9
 
付近はクズ、セイタカアワダチソウコセンダングサが繁茂しており、ツチバッタやオオカマキリがたくさん見られました。
 
晴れていれば、チョウ目、ハチ目、ハエ目の昆虫が、これらの黄色い花に訪れていたでしょうが、この日はほとんど見られませんでした。飛んでいる昆虫と言えば、ヤマトシジミモンキチョウアキアカネくらいでした。
 
小川の橋を渡るところで、コンクリートの壁にスズバチ Oreumenes decoratus の泥巣がついていました(写真10)。
 
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写真10
 
あぜ道を歩いていると、カマキリのスポンジ状の卵鞘を見つけました(写真11)。卵鞘は、気温の変化などの環境ストレスに耐えられる構造になっていて、中の卵を守っています。
 
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写真11
 
セイタカアワダチソウには、よくアワダチソウグンバイ Corythucha marmorata がいて吸汁していることがあります。カメムシ外来種です。セイタカを調べてみたらちゃんといました(写真12)。体長3 mmほどの小さい虫です。
 
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写真12
 
自然観察会は午前中で終了しましたが、全行程でおもしろい植物や鳥類、小昆虫が見られる盛りだくさんの内容であり、とても時間が足りないという感じでした。子供を含めた観察会ということであれば、これくらいの時間ということで致し方ありません。指導員の方の解説も丁寧で、とてもわかりやすいものでした。
 
途中途中で、エノキの幼木がたくさんあって、ちょっと見たところアカボシゴマダラの幼虫がいました。じっくり観察したかったのですが、全体行動で先に進まなければならず、皆さんといっしょに元の駅前の場所に戻ってきました。
 
とはいえ、このまま帰るのはとてももったいない気持ちで、ランチを終えた後、一人でまた公園や谷津田まで観察に行きました。エノキ上のアカボシゴマダラを観察した結果は、別に紹介したいと思います。