ミドル脂臭というのは、化粧品会社マンダムが5年前に世界に先駆けて学会発表した中年男性に特有の臭いのことです [1]。
マンダムは、40代前後の男性の頭部付近を中心として脂っぽいような、酸っぱいような独特の臭いがあることを発見し、これを「ミドル脂臭」と名付けました。原因物質は、ジアセチルという、2つのアセチル基がカルボニル基の炭素同士で結合した有機化合物です。当該社による調査では、この臭いは40代をピークにして30–50代の男性に多く発生します(図1)。
ミドル脂臭の発生源が後頭部であるため、自分では気付きにくいとされます。男性より女性の方が不快に感じる臭いのようで、通りを歩いている一般の人たちのモニターテストでもそれが実証されることを放送していました。
このミドル脂臭の軽減と関連して、体の洗い方によって臭いの元になる皮脂の量がどのように変化するかも紹介していました。図2に示すように、シャワーだけよりも泡洗いの方が皮脂の量が落ちますが、泡でゴシゴシ洗いするとかえって皮脂の量が上がることがわかりました。これは洗浄後、体が脂が足りないと判断して皮脂の量を上げる生体反応のようです。
ブログ記事「抗菌グッズを考える」↓でも紹介しましたが、皮脂は私たちの体の健康にとって大切なものです。
すなわち、皮膚の上にいる常在微生物によって皮脂が分解されることで体が弱酸性になり、それによって外来の微生物の侵入を防いでいるわけです。体臭を気にしすぎるあまり洗い過ぎることがないようにしたいものです。
ミドル脂臭についても過度に気にすることはないように思います。原因物質であるジアセチルは皮脂からではなく、汗に含まれる乳酸から発生するものですが、この物質にも抗菌作用があります。
一方で、ジアセチルは、ジアセチルは発酵バターやカッテージチーズのフレーバーとして作用しています。また、マーガリン、バター・チーズ風味のスナック菓子、ワイン、ビネガーなどへの食品添加物としてもに用いられています。ただし、これらの風味に適する量では抗菌作用はありません。
いずれにせよ、人間の体臭は生まれつき持った性質の一つであり、それをことさら忌避するような風潮は、生物学的に考えると劣化した文化のように思えます。
参考文献
1. マンダム:News Release「マンダム、ミドル男性に発生するニオイ成分を特定」. 2013年11月18日.
カテゴリー:生活科学