今朝のNHKでもサンゴの白化現象を取り上げ、わかりやすく解説していました。こういう朝のスキマ時間での放送は、私のような在宅仕事をしている者にとってはよいですが、通勤の仕事、学校での勉強、家事で忙しい一般の人にとっては目に触れにくく、誠にもったいない気がします。
今日の放送では紀伊半島沖のサンゴが死滅していること、その原因が海水の低温化であることを説明していました(図1)。
サンゴの白化が起こる原因としては、海水温の上昇や強すぎる光がよく言われています(図2)。サンゴの生育の適温は25-28℃ですが、高温になると共生している褐虫藻の光合成が停止し、サンゴ自体も死んでしまいます。今回の紀伊半島沖のサンゴの場合は、逆に海水の低温化で、黒潮の蛇行によるものだと説明されています。黒潮がなぜ蛇行するようになるのかについてはよくわかっていません。
図2. サンゴの白化の原因(2018.4.18 NHKくらし解説より)
放送ではさらに、海洋の酸性化の脅威についても触れていました(図3)。海洋の酸性化についても私のブログ記事でも述べていますが、大気中のCO2濃度の増加に伴う地球温暖化とセットになっており、ポジティヴ・フィードバックの現象として捉えられています。すなわち、大気中CO2の増加→地球温暖化と同時のCO2の海水中への溶け込み増加→海洋の酸性化→サンゴの骨格を形成する炭酸カルシウムの溶け出し→サンゴによるのCO2固定化能消失→大気中のCO2増加、というポジティヴ・フィードバックです。
海洋の酸性化に引き起こされる海洋生態系の変化は考えるだけでも恐ろしいです。ペルム紀の史上最大の大量絶滅は有名ですが、これは海洋の酸性化が原因で起こったことが報告されています [1, 2]。現在の海洋酸性化のスピードはこのペルム紀事件の20倍以上です。このままでは、おそらく21世紀中に、海洋生物への大規模な負の影響が起こり、私たちの貴重な水産・食料資源も失われるでしょう。
私たちはしばしば自分が生物であることを忘れがちであり、ますます脳が発信する欲望のままに非生物学的に生きるようになって、地球環境も変えてしまう存在になっています。しかし、子孫にこのような生物学的に過酷な運命を背負わせる権利はありません。
参考文献
[1] Clarkson, M. O. et al: Ocean acidification and the Permo-Triassic mass extinction. Science 348, 229-232 (2015).
[2] Wits, A.: Acidic oceans linked to greatest extinction ever. Nature 09 April 2015.
東北大学理学研究科報道発表, 2016年8月18日.
原著:Kaiho, K. et al. Effects of soil erosion and anoxic–euxinic ocean in the Permian–Triassic marine crisis. Helion 2, August 2016, e00137. https://doi.org/10.1016/j.heliyon.2016.e00137