Dr. Tairaのブログ

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プラスチック汚染問題-1

生ゴミは生物学的に処理できますが、厄介なのはプラスチックごみです。生分解性のプラスチック製品はだいぶ市場に出回るようにはなりましたが、依然として私たちが使っているものは大部分が石油からできたプラスチックであり、環境負荷をかけないで処理をするのは容易ではありません。ポリスチレン(食品のトレー)やペット(図1)などのリサイクルの分別収集の対象になっているものもありますが、ほとんどはプラスチックごみとして回収されても生ゴミと一緒に焼却処理されています。
 
石油から作ったものを燃やすわけですから、当然大気中の二酸化炭素濃度を増加させます。ちなみに、生ゴミはもともと大気中の二酸化炭素を固定化してできた光合成産物に由来しますので、理論上それを燃やしても二酸化炭素濃度は増えません(=カーボン・ニュートラルの考え方)。
 
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図1. プラスチックのマーク(左)と実際の表示(右)
 
今日、テレビのニュースを観ていたら、環境のプラスチック汚染について報道していました。オランダの研究者、フラネカー(Jan Andries Van Franeker)博士の調査を取り上げて、レジ袋を食べた海鳥が飢餓のために多数死んでいることを伝えていました(図2)。プラスチックを食べてしまうとそれで胃袋がいっぱいになってしまい、実際の食べ物が入らなくなることで死んでしまうようです。
 
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図2. プラスチック汚染による海鳥の犠牲の現状(2018.3.21 TBSニュースから)
 
フラネカー博士の研究グループは海洋のプラスチックごみ汚染に関する論文を多数出版していますが、そのうちの一つとして魚の体内のプラスチック汚染についての調査があります [1]。北海で獲れたニシン、タラ、ハドック、アジなど7種の魚を調査した結果、2.6%にマイクロプラスチック(大きさ0.04–4.8 mm、平均0.8 mm)が見つかりました(種としては7種のうち5種)。魚の体の大きさと取り込まれたプラスチックの大きさは関係ないと報告されました(図3)。

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図3. 魚の体長と取り込まれたプラスチックの大きさとの関係 [1]

環境中のプラスチック汚染はいま深刻な問題であり、私たちの生活圏から排出された大量のプラスチックが海洋を浮遊していることが知られています [例えば文献2]。その膨大な量の塊を形容して、第七の大陸と言われているほどです。
 
プラスチックごみは、海洋生物や生態系に重要な影響を与えていると言われており、東日本大震災のときは津波でプラスチックに付着した日本固有の生物が米国へ外来生物として到達したことも報告されました [3]
 
さらに驚くべきことに、微小なプラスチック(マイクロプラスチック)が、私たちが日常的に使う食塩の中にも混入していることが報告されました [4]。目下のところ、その混入量はわずかであり、すぐに健康被害を与えるとは考えられませんが、私たちもプラスチックを食べていることは気持ちよいことではありません。注視して行く必要があります。
 
 
参考文献
 
[1] Foekema, E. M. et al.: Plastic in North Sea fish. Environ. Sci. Technol. 47, 8818-8824 (2013). 
 
[2] Cole, M. et al.: Microplastics as contaminants in the marine environment: 
a review. Mar. Pollut. Bull. 62, 2588-2597 (2011). 
 
[3] Carlton, J. T.: Tsunami-driven rafting: Transoceanic species dispersal and 
implications for marine biogeography. Science 357, 1402-1406 (2017). 
 
[4] Karami, A. et al.: The presence of microplastics in commercial salts from 
different countries. Sci. Rep. 7, 46173 (2017).