Dr. Tairaのブログ

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今日のゴマダラチョウとアカボシゴマダラ

今日は国道沿いの里山に近い環境に生えているエノキと根元の Hesina 越冬幼虫の調査を行いました。大木は少なく、大きくても樹高10 mちょっとでした。多くは幼木と低木です。一般の車道や田んぼのあぜ道、車が通れない林道をチャリを漕ぎながら、延々と全6時間の行程でした。風がとても強く寒さがこたえました。
 
調べたエノキは30本あまりで、そのうち成木3本からゴマダラチョウが、幼木2本からアカボシゴマダラが出てきました。写真1はそのうちのエノキの成木を示します。ここの根元から3頭のゴマダラチョウ越冬幼虫が出てきました。
 
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写真1
 
エノキの樹高や幹径などを測定していたら幼虫の1頭が起き出してきました(写真2)。落ち葉を裏返しにしてケースに入れ、そっと影の部分においていたのですが、やはり環境の変化に敏感ですぐに動き出したようです。
 
頭部はツノが生えたキティーちゃんやコアラのような可愛いらしい顔でマニアには人気があるゴマダラチョウですが、冬眠中の動きは余計な体力の消耗になり死亡に繋がります。すぐに根元に戻しました。
 
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写真2
 
風が強くてエノキの根元は落ち葉がどんどん飛び去るような状態でしたので、元の位置のできる限り奥に幼虫達を戻し、落ち葉を被せ、さらに枯れ木や小石でカバーをしました。それでも寄生虫や捕食などの影響もあるので、この地域でも無事成虫までたどりつける個体はごく少数でしょう。
 
夕方になってそろそろ調査を終えようと思い、国道を進んでいたら、沿道にエノキの幼木が並んでいるのが目に入りました。そしたら、アカボシゴマダラのサナギの抜け殻がひらひらとぶら下がっている1本の幼木が目に止まりました(写真3、4)。
 
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写真3
 
イメージ 3
写真4
 
ひょっとしたら、この幼木にも越冬幼虫がいるかもしれないと思って、根元の落ち葉を探してみました。しかし、幼虫は見当たりませんでした。
 
残念と思いつつその場を立ち去ろうとしてふと根元を見直したら、なんと幹上に幼虫が1頭へばりついているではありませんか(写真5)。「こんなところにいたのか」と、寒さと乾燥と車の排気ガスにジッと耐えている幼虫を見て感心しました。
 
イメージ 5
写真5
 
幹上では寄生虫に冒される危険性は減りますが、環境に耐える辛抱強さが必要になります。現在まで確認しているアカボシゴマダラの幹上の越冬の割合は5%程度です。少ないながらも、このような越冬形態の多様性がアカボシゴマダラの全体の生存性を高めているのではないかと思いますが、樹上越冬で生き残る割合は小さいです。