愛知県豊橋市の豊橋公園は市街地の中の公園としては比較的広い方であり、ケヤキの木が多いことで知られています。一方で、同じ落葉広葉樹のエノキはそれほど多くありません。しかし、私は二十数年前にこの公園を初めて訪れた時に、エノキを食草とするゴマダラチョウが飛んでいたことに感動したことを覚えています。
昨日この公園を訪れてエノキを中心に植生の観察を行いました。目的の一つとしてエノキの幼木・中低木があるかどうか、もしあるとすればエノキを食草とするゴマダラチョウの幼虫がいるかどうかということの確認です。ちなみに16年前の夏には、この公園でゴマダラチョウの幼虫を発見したことがあります。
写真1は豊橋公園の入り口です。
写真1
公園の西端には復元された吉田城があります(写真2)。
写真2
写真3
写真3の看板の場所にあるケヤキの大木です(写真4)。
写真4
写真5
一方、エノキの本数はやはりそれほど多くありませんでした。写真6は数少ないエノキの低木の一つです。高さは3 m程度です。
写真6
写真7は別の低木です。これも3 m程度の樹高です。
写真7
これらの低木の葉を観たところ食痕はほとんどなく、幹の下の落ち葉の下を探してもゴマダチョウの幼虫は見られませんでした。
以前公園内に見られたエノキの低木はほとんどなくなっており、北側の豊川沿いの散策路の両側に20本程度見られるだけでした(写真8)。これらの幼木にも食痕はほとんど認められませんでした。
写真8
写真8に見られる幼木の下はコンクリートの土手や石が多く、落ち葉がほとんど溜まらないような状態で、とても幼虫が住める環境ではありませんでした。
以前エノキの幼木・中低木が見られた公園の外れに行ってみましたが、ここでも伐採されているようでほとんど見ることができませんでした(写真9)。
写真9
結果として公園内には確かにエノキはあるものの下枝がない少数の大木のみで、幼木・中低木がほとんどなくなっていました。一応大木はありませすが、ゴマダラチョウの生活環境にはなりにくいと思われます。事実、相当探して見たのですが、ゴマダラチョウの幼虫は発見できませんでした。
ゴマダラチョウはどちらかというと成木のエノキを好むようですが、越冬する幼虫が根元に降下するあるいは幹に上るためには物理的制限があるようです。下枝が10 mくらいの位置でも越冬幼虫は見つかりますが、一般的には下枝がかなり低い位置(下から2 mくらいまで)にないと、多くは繁殖しないような印象を受けます。
さらに、気になったのは普通公園内でみられるヤマトシジミやイチモンジセセリなどのチョウの普通種が、11月とはいえ、まったくみられなかったことです。確かにカタバミなどの下草がほんとんどなく、吸蜜ができるような花も樹液を出す木もきわめて少ない状態でした。
公園は見かけ上緑が多いように思えますが、昆虫に関しては多様性を確保できるような植生にはなっていないというのが正直な印象です。とにかく以前たくさん見られたエノキの幼木・中低木がなくなっていたことは残念でした。