Dr. Tairaのブログ

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都市公園の植栽管理ーエノキを考える

前のページで、私が昆虫の定点観察を行っている都市公園の一つにおいて、市による定期的な植栽剪定、伐採が行われている状況を紹介しました(https://blogs.yahoo.co.jp/rplelegans130/16550385.html)。この作業により、公園内に生えていた200本近いエノキの幼木が根元から伐採されました。生き物好きの一人としてこの状況を少し考えてみたいと思います。
 
写真1は、当該公園における剪定・伐採が終了した後の一部のツツジの植栽エリアです。ツツジは70 cm前後の高さに切られていますが、このエリアにはヤブガラシとエノキに覆われていました。
 
このエリアには、南北に伸びる車道に沿って60本程度のエノキの幼木がありましたが、大きいものは1.6 mくらいに成長していました。ここから、エノキを食草とするアカボシゴマダラの幼虫とともにゴマダラチョウの幼虫が見つかったことは、先に報告したとおりです(https://blogs.yahoo.co.jp/rplelegans130/16550385.html)。
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写真1
 
写真2は、東西の車道に沿う植栽の剪定・伐採後を示します。ツツジとアベリア等を残して、60-70 cmの高さにきれいに切られています。このエリアには100本以上のエノキ(大きいもので2 m)がありましたが、すべて伐採されていました。単に高さを揃えて剪定するのではなく、根元から切られているので、意識的に、選択的に除去されたものと思われます。
 
ここからもアカボシゴマダラといっしょにゴマダラチョウの幼虫が見つかりました。
 
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写真2
 
私はこれまで30年間、この公園内でゴマダラチョウの成虫を見たことは一度もありません。その理由が今回の剪定・伐採の状況を見てわかったような気がします。
 
過去、市は零れ種で生えてきたエノキやそのほかの樹木を、伸びるたびに定期的に伐採していたのでしょう。私はヤブガラシとエノキの幼木が生えている風景しか印象に残っていないのですが、そのように考えると納得がいきます。つまり、伐採後にまたエノキは復活し、数年かけてある程度伸びると稀にゴマダラチョウが戻ってくるものの、その度にまた伐採されてしまうので成虫になれないのではないかと想像されます。
 
そしてこの伐採は、あくまで公園の計画植栽の美観にこだわる(自然に生えたものを嫌う)市の踏襲方針・施策であって、アカボシゴマダラの駆除対策ということでないことも確かです。なぜなら、このチョウが特定外来生物に指定されたのがつい最近(今年1月)であるからです。
 
一方、アカボシゴマダラは、エノキの幼木が一本でもあればどこにでも産卵する、繁殖能力が高い都市適応型のHestina属種と思われます。少々の幼木の伐採など何の影響もないでしょうし、たとえ駆除しようと思ってももはや不可能だと思います。そもそも環境省特定外来生物指定の根拠が希薄なような気がします。
 
であるとするなら、ゴマダラチョウ復活へ向けて公園内に少しエノキを残すような剪定方法に変えてもらいたいというのが、私の個人的考えです。
 
他の自治体ではどのように公園内の剪定・伐採を行っているのか、アカボシゴマダラやゴマダラチョウを見かける地域の公園(写真1の公園より広い面積)に行ってみました。
 
写真3は、当該公園の植栽の剪定の様子を示します。上記の市のやり方とは異なり、ツツジの植栽の中から伸びてきたエノキを伐採せず残してありました。
 
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写真3
 
また、ツツジの植栽の横で、零れ種で生えてきたエノキの幼木はそのまま切らずに残してありました(写真4)。
 
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写真4
 
さらに、単独で生えてきたエノキも周辺の草だけ刈り取られた中でそのまま残してあります(写真5)。
 
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写真5
 
このように市によって、都市公園の植栽管理の仕方が違うことには少し驚きました。どちらの市のホ−ムページ、報告書にも生物多様性という言葉が出てきますが、公園管理等においてどちらがこの言葉にふさわしい施策をとっているか、わかるような気がします。