7月20日は土用の丑の日です。それに向けてウナギ商戦がたけなわです。スーパーマーケットには、うなぎと書いた赤いのれんや掲示物がこれでもかと飾られています。暑い夏の疲れた体にはビタミンが豊富なウナギの摂食が最適であり、日本の伝統食文化の一つとなっています。
写真1はまだおとなしい方のお店の飾りです。
写真1
こっちのデコレーションは華々しく、所狭しと宣伝物がベタベタ貼られています(写真2)。
写真2
私は、以前、会社でウナギの養殖のための高機能餌料の開発を担当していた時期があり、営業で全国(静岡県、愛知県、鹿児島県など)のウナギの養殖場を訪れていました。写真3は、静岡県のウナギの養殖場の一つです。
写真3
写真3のような開放系で養殖しているところは実際ほとんどなく、多くは屋根付きのプールの中で飼われています。プール内には大量のウナギがいるので、酸素不足にならないように、回転翼がついた装置で常に曝気が行われています(写真4, 写真5)。
写真4
写真5
写真6は養殖プールからウナギを引き上げたところです。この後、1匹を試食させていただきました。よく調理される蒲焼きではなく、白焼きにして醤油とマヨネーズでいただきました。今まで食べた中で、一番美味しかったと記憶しています。
写真
ウナギの養殖とは言っていますが、実は完全養殖ではなく、シラスと呼ばれるウナギの稚魚を沿岸から採取し、それを養殖場に運んで育てています。完全養殖は、技術的には一応成功していますが、それが市場レベルに乗ることはむずかしいと言われています。
ウナギの生態はほとんど解明されていませんが、太平洋のマリアナ諸島付近でふ化したあと海流にのって、日本の川へとやってくることがわかっています。この沿岸から川に上る直前のものをシラスウナギと言っているわけです。
このシラスウナギの採捕においては、乱獲や密漁の問題も起きています。現状では、市場に供給される50%以上が密猟・無報告のシラスウナギであり、資源管理がまったくできていません。今年は、ウナギが余っているのに高値が続いている問題もあります。
私の子供の頃は、川にカゴを仕掛け、天然のウナギをよく捕まえていたものです。今では天然物を捕まえることは、かなりむずかしくなりました。
2014年、国際自然保護連合(IUCN)はニホンウナギを「絶滅する危険性が高い絶滅危惧種」として、レッドリストに掲載しました。日本では、伝統的な食文化と「絶滅危惧種を食べていいのか」という自然保護の声のせめぎ合いの場になっています。