Dr. Tairaのブログ

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市販生ゴミ処理機と自治体の購入補助金制度


はじめに

世の中には様々な生ゴミ処理機(器)が市販されてきました。家庭用の電動式の生ゴミ処理機が市販されるようになったのは1990年代からと思われますが、新製品の登場と淘汰を繰り返しながら、現在はいくつかのメーカーと機種に集約されているようです。

現在使われている電動式生ゴミ処理機は乾燥型と生分解(バイオ)型に二分されます。両者を併せたハイブリッド型というのもあるようですが、基本的には生分解型です。ここで両型の処理機および市販の非電動式生ゴミ処理器について簡単に解説してみましょう。
  

1. 電動式生ゴミ処理機ー乾燥型

●原理と特徴
生ゴミを電熱、温風によって乾燥し、90%以上に減量化するタイプです。したがって、生ゴミ処理機というよりも生ゴミ乾燥機と形容した方がより相応しいでしょう。メーカーによっては生ゴミ乾燥減量機とより正確に名付けています。減量化を目的とする処理機であり、残渣を再利用することには向いていません。水分が抜けただけなので、もし畑や土に投入すれば元の生ゴミに戻ってしまいます。

●長所
本処理機のメリットは何と言っても手軽さでしょう。基本的に屋内外兼用であり、家の中に置いておいて生ゴミを入れていけばどんどん乾燥してくれるので、台所でほとんど臭いもすることなく減量化ができます。生ゴミ量にもよりますが1〜2週間取り出す必要もありません。取り出した乾燥物は可燃ゴミで排出すればよいだけです。また、比較的小型でスペースをとりません。このため、現在最も普及している電動式生ゴミ処理機です。

●短所
デメリットとして、購入価格が高いこと(3万円弱から8万円くらいまで)、電気代がかかること(約1,000円/月)があります。また意外と音もしますし、乾燥に時間もかかります。機種によっては独特の焦げ臭さがあり、生ゴミによっては臭いを発生することがあります(魚の内蔵等)。あと、これも機種にもよりますが使い続けていると内部が汚れてきますので、面倒ですが毎回の取り出した後の掃除も必要になります。


2. 電動式生ゴミ処理機ー生分解型

●原理と特徴
生ゴミを微生物によって文字通り分解していくタイプで、基材として木材チップなどが付属品として付いています。したがって、機械が生ゴミを処理するのではなく、処理するのはあくまでも微生物です。処理機は基材を入れる器として、そして内部のインペラーによる撹拌、ファンによる温風乾燥などの装置として機能しています。乾燥の程度は機種によって異なり、とくに乾燥力が強いものはハイブリッド型と呼ばれたりします。

●長所
本処理機のメリットは生ゴミを長期間(数ヶ月感)入れ続けても取り出す必要がないことです。水分の蒸散(乾燥)と生分解の両方で生ゴミが減量化されますので、乾燥型と異なり生ゴミは実際に無くなっていきます。しかし完全に無くなるのではなく、未分解分と乾燥物は必ず残ります。取り出した処理物は二次処理すれば堆肥として使えます。ただし、堆肥として使用する場合は、塩分とpH上昇を抑えるために2〜3ヶ月毎に処理物を取り出し、二次処理を行なう必要があります。

減量率は高く90%以上になります。この点については私たちのこれまでの研究がありますので、別途紹介したいと思います。

●短所
デメリットとして、購入価格が高いこと(5万円から10万円くらいまで)、電気代がかかること(400〜1,000円/月)があります。また処理機が大型で、雨の降り込まない屋外設置になります。屋外で電源を確保しなければならない物理的制約もあります。


3. 市販の非電動式生ゴミ処理器

●原理と特徴
すべて生ゴミを微生物によって分解していくタイプです。しかし処理器によってその分解様式は大きく異なり、発酵分解するものと呼吸により酸化分解するものとに分かれます。発酵分解型には通常微生物資材が、酸化分解型の場合は基材が付属品として付いています。処理器はこれらを入れる器としてのみ機能しており、木箱、プラスチック容器などがあります。型式によっては手動のインペラーが付いているものがあります。

なお、発酵分解と呼吸による酸化分解の違いについては「生ゴミ処理の生物学的原理」https://blogs.yahoo.co.jp/rplelegans130/16121641.htmlを参照ください。

●長所
酸化分解型について言えば、生分解型電動式生ゴミ処理機と同じく、生ゴミを長期間(数ヶ月感)入れ続けても取り出す必要がないことがメリットです。水分の蒸散(乾燥)と生分解の両方で生ゴミが減量化されていきます。取り出した処理物は二次処理すれば堆肥として使えます。ただし、堆肥として使用する場合は、塩分とpH上昇を抑えるために2〜3ヶ月毎に処理物を取り出し、二次処理を行なう必要があります。

加えて、電動式に比べて価格が安いこと(数千円から2万円)、電気代はもちろんかからないことがメリットとしてあります。

●短所
酸化分解型
運転・維持が人任せ、天候任せになりますので、処理効率が不安定であり、とにかくケアが必要です。また寒い時期は分解効率が落ちます。これらの欠点はコンテナーや植木鉢を利用した方法(https://blogs.yahoo.co.jp/rplelegans130/16117212.html)と基本的に同じです
発酵分解型
発酵分解型は、基本のメカニズムが発酵なので、二酸化炭素と水に分解されるわけではなく、発酵生産物が残って行きます。したがって減量化に長時間を要しますし、処理過程で必ず臭いを発生します。またベランダで行なうものではなく、設置に庭が必要です。基本的に生ゴミ処理器というものではなく、生ゴミ置き場として使う性質のものです。


4. 自治体による購入補助金制度

上に示した市販の生ゴミ処理機(器)の購入についてはほとんどの自治体が補助金制度を設けているようです。電動処理機については価格の半分まで、上限として2〜3万円までというところが多いようです。非電動処理器についても価格の半分まで、あるいは1万円を越えるものについては3,000円程度で買える程度の補助金を出している場合が見られます。

自治体がこのような生ゴミ処理に補助金制度を設けていること自体は、市民レベルでゴミ減量を達成する動機となり、好ましいことと思われます。しかし自治体によっては、市販品購入ありきが前提となって補助金を考えるところもあるように感じられ、また、生ゴミ処理器としては位置づけられないようなものについても、補助金を出している場合も見受けられます。一考をお願いしたところです。

すなわち、このブログでも紹介しているとおり、生ゴミ処理は工夫をすれば、市販品を購入することなく手軽に家庭で行なうことができます。自治体はまず科学的根拠があり、簡単でお金のかからない方法を市民に紹介して十分な選択肢を与え、その上で補助金制度を設けるべきだと考えます。補助金は市民からの大切な税金ですので、多様な生ゴミ処理法を紹介することがより有効な税金の使い道と考えます。