Dr. Tairaのブログ

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生ゴミ処理に使う基材


家庭で生ゴミ処理を行なう場合(乾燥式を除く)、電動式、非電動式に関わらず基材が必要になります。ちなみに、市販の電動処理器の場合は必ず基材が付属しています。基材の定義と重要ポイントは以下のとおりです。

基材の重要ポイント
●基材とは生ゴミ分解に働く微生物の足場になる固形物、あるいはその固形物と微生物を含む混合物を指す
●基材がなくても生ゴミは分解されるが、ドロドロの液状になり、臭いが発生する
●基材は通常難分解性の天然高分子であるが運転とともに徐々に分解される

インターネット上には生ゴミ処理の基材についてさまざまな紹介がありますが、上記の重要ポイントから外れた使い方や誤解も多く、混乱のもとになっています。ここでは、利用できる基材について比較しながら紹介したいと思います。表1にインターネット上に見られるいくつかの基材候補とその特徴について列記します。

表1. インターネット上で紹介されている生ゴミ処理用基材の適性と特徴
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最もよく使われている基材として木クズモミ殻があり、電動処理機もこれらを付属していることが多いようです。天然高分子素材であり、分解されにくく、かつ数ヶ月を経て徐々に分解されるという基材として相応しい性質をもっています。

ココナツ繊維もこれに似た性質がありますが、やや高価という難点があります。これらの市販品は乾燥状態で供給されますので、微生物をほとんど含有していないという特性があります。したがって、生ゴミ自身から供給される微生物が基材を足場にして増殖し、その中で順応した微生物が次第に生き残って働くようになるまで時間がかかります。

生ゴミ負荷量によって異なりますが、順調に働くようになるまで最低1ヶ月はかかり、2ヶ月を経て完全馴養の状態になります。すなわち、運転1ヶ月までは微生物の状態は不安定なので、ショックロード(一度の大量投入など)を与えないことが重要です。

インターネットでは基材としてピートモスが紹介されていますが、特に外国産のものは酸性(< pH 5)でしかも高価です。実際用いても他の基材に比べて立ち上がりが悪いです。このようなものをわざわざ基材として用いることの積極的な理由は見当たりません。

ピートモスとともによく紹介されるのが米ぬかですが、最も誤解の多いモノの一つです。米ぬかは食物繊維、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルなども含むこれ自体が有機物の塊であり、基材としての適性よりも有機物の負荷の方がはるかに大きいシロモノです。米ぬかには微生物が含まれていますが、乳酸菌(発酵性)など生ゴミ処理には優占して働かないものが中心です。生ゴミ処理に優先的に働く微生物は好気性であり、むしろ生ゴミから供給されますので、基材としても微生物の植種源としても米ぬかを使う妥当性はありません。

基材として最も適性があるのが市販の園芸土腐葉土です。また堆肥として市販されているものも同様です。これらは比重が軽く、難分解性の固形有機物を含み、グラム当たり億単位の好気性微生物をすでに含んでいます。価格も40 Lで500円程度で手に入り、安価です。基材としては最も速く生ゴミ処理プロセスを立ち上げることができます。これらに似た土状のものが生ゴミ処理用として自治体から供給されている場合もありますので、これを使うこともできます。

最後に庭土ですが、これはケイ酸など無機物を多量に含みます。したがって比重が高く、通気性も悪いという特性があります。微生物を多数含むことは利点ですが、かき混ぜるのにけっこう苦労します。電動処理機に使うとインペラーが折れるなどの事故も起こりやすくなります。基材としては不適です。