2022.07.11:00:25更新
はじめに
いま参議院選挙の投票が終わりました。各局は早速投票結果の解説を始めていますが、この二日間のプロパガンダとも言える異様なテレビ報道で、すっかりメディアの堕落と劣化を感じることとなりました。その思いを以下のようにツイートしました。
今こそ日本の全てのテレビ、大手メディアの堕落、劣化を感じたことはない。投票が済んだら各局特番を組んで最もらしい投票結果の解説をするんだろうけど、もうその資格さえないのではないか。 https://t.co/tSl1Xuk8iQ
— AKIRA HIRAISHI (@orientis312) 2022年7月10日
メディアの堕落と感じたのは、故安倍元首相に哀悼の意を表すのは当然だとして、彼の功罪や政歴評価は今直ぐできるものでもないのに、どのテレビ局もほぼ無批判に礼讃することに終始していたことです。祖父の岸信介、父の安倍晋太郎まで登場させ、その後継者とか華麗なる一族とか、日本政治の諸悪の根源である世襲政治をまったく批判することなく(むしろ称賛する風に)、報じていました。これでは北朝鮮と同じです。
しかも、今日は投票日だったわけです。投票日当日まで集中的にこのような報道をすることで、それが自民党にとって有利なプロパガンダの様相を呈していたことは否めません。自民党を始め、改憲勢力が大きく議席を伸ばすことでしょう。
そして、安倍殺害事件の動機のキーワードとして出てきた宗教団体について、各局も大手新聞も一切のその名を明らかにしていないという異常さがあります。この点も含めて、今回のテレビ報道を「違和感を感じる」として批判するウェブ記 [1] がありますし、SNS上でも批判が展開されています。その点、海外のメディアは事実を淡々と報じているところが多いようです。
1. 日曜討論での放送事故
今回の安倍元首相の殺害に関して、Bloombergが興味深い記事を配信しているのを今日目にしました [2]。何と、先月のNHKの日曜討論における放送事故ともとれるNHK党黒川敦彦幹事長(つばさの党党首)の主張を取り上げたのです。黒川幹事長は日曜討論で司会の制止にも気に留めず、安倍批判を展開する暴走ぶりを発揮し、最後には綾野剛ネタをぶっこみ「安倍のせいだ〜♪」と歌い始めました。YouTubeにその部分の動画がありますので引用します。
www.youtube.comなぜ、Bloombergがこんなことを取り上げたのか、そこには陰謀論的な匂いもするけれども、本質的なものを彼らは感じたからではないかと思います。すなわち、安倍殺害で一躍クローズアップされている当該宗教団体やその背景のことです。
ちなみに私はNHK党をまったく支持するものではないですが、Bloombergの当該記事は、今回の安倍殺害事件、NHK党、つばさの党に関して、論評抜きで事実を淡々と伝えているところは、非常に興味深く感じました。
2. Boom記事の内容
Bloomberg記事 [2] の見出しは、このブログ記事のタイトルに書いたとおりで、「NHK党員、選挙戦で安倍首相と宗教団体を結びつける」、「宗教団体に怒り爆発か: 共同」というサブの見出しがついています(下図)。
以下、全翻訳文を紹介します。
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安倍晋三元首相が暗殺されたことで、日曜日の参議院選挙を前に、宗教団体とのつながりがあるとして安倍氏を批判していた少数政党に注目が集まっている。ソーシャルメディアユーザーは、先月のNHKでの選挙討論会での発言を取り上げている。それはNHK党の黒川明彦幹事長が「外国のスパイ活動の隠れ蓑として使われているとされる日本の宗教団体への不明瞭な資金提供は、安倍元首相の責任である」と主張したことだ。
NHK党は、日本の「国営放送」の財源に使われている強制受信料を廃止する目的で2013年に結成されたが、この党と容疑者には直接的なつながりはない。一方で、この党の政治家の発言は、犯人の動機に光を当てる可能性のある政治の系統を浮き彫りにしている。その中には、日本でも人気を博しているQAnonが流布している陰謀を彷彿させるような疑惑もある。
共同通信によると、安倍首相暗殺の容疑者である山上徹也容疑者は、当初、自分の母親がある宗教団体に多額の寄付たことで破産したと考え、その宗教団体のリーダーを攻撃するつもりだったと警察に語ったという。彼はまた、安倍元首相に恨みを抱いており、元首相が日本でその宗教団体を宣伝したと警察に主張したという。一方で、政治的動機による銃撃は否定しているという。
黒川氏とNHK党首の立花孝志氏は金曜日の記者会見で、安倍首相への襲撃を非難した。NHK党のウェブサイトに掲載された声明で、立花氏は銃撃事件に「大きな衝撃を受けている」と述べ、同時に「安倍」自民党の政策も批判した。
「デフレがインフレに変わる一方で、与党はデフレの時に削減した年金や社会保障の水準を引き上げていない」と立花氏は述べた。「もちろん政策をめぐる議論に暴力は許されないが、生活苦にあえぐ人々やこの国の一部の人々が、こうした政策の遅れによって絶望的な状況に置かれていることが、一つの要因である可能性も見過ごせない」とも語った。
土曜日に黒川氏に話を聞こうとしたが、成功しなかった。NHK党の代表は、黒川氏を党首とする「つばさの塔」に黒川氏に関する質問を問い合わせたが、同党のウェブサイトに記載されている固定電話への電話は不通であった。
つばさの党は全国的な存在ではないが、2人の党員が東京近郊の市議会議員を務めている。ホームページには、消費税廃止や反グローバリズムなどの政策が掲載されている。サイトにはいくつかの動画もあり、そのうちのひとつは「ユダヤの麻薬資金、アイゼンバーグ、安倍家と麻生家 」と題した安倍氏の画像を使ったものだ。
NHK党は小規模な政党だが、放送の公平性の観点から、選挙期間中は放送出演時間が確保されている。選挙の比例代表で2%以上の得票を得たグループが政党として認められている。
先月、黒川氏はNHKの討論番組で、日本は外国からの資金で潤う宗教団体の「静かな侵略」に苦しんでいると語った。司会者が改憲の話題に限定するよう促しても、黒川氏はその制止を聞かず、次の言葉で始まる歌で発言を締めくくった。「安倍のせいだ、安倍のせいだ、日本がこうなったのは」。
黒川氏はまた、安倍首相の祖父である岸信介元首相が、集団結婚式で知られる韓国系の統一教会を日本に持ち込んだことを非難していた。また、連立与党の公明党を支持する仏教徒組織である創価学会と中国共産党の密接な関係にも言及した。
NHK党のホームページでは、安倍首相に対する疑惑には一切触れず、公共放送の報道と資金調達に対する批判に重点を置いている。
昨年9月、日本共産党機関紙「赤旗」は、安倍首相が統一教会関連の団体の集まりに祝辞のビデオメッセージを送ったと報じた。
自身もNHKの元職員である立花氏は、2019年の参院選で当選したが、1カ月後に辞職し、同党の次点者に議席を譲り渡した。今年1月には、NHKの受信料データをネット上に流出させると脅したとして、執行猶予付きの判決を受けたと毎日新聞は報じている。
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翻訳は以上です。
おわりに
日本の大手メディアは、先月の放送事故の件も、今回の宗教団体のことも具体的に伝えていません。当該宗教団体が、統一教会(現:世界平和統一家庭連合)であることは明白であるにもかかわらずです。統一教会という名を出せば、安倍晋三元首相のみならず、岸信介元首相、そして自民党との関係が否応無く表に出てくることになり、それを嫌っている、あるいはそうなることを自主規制(忖度)していることの現れでしょう。
私がメディアの堕落を感じるのは、そのような自主規制をする一方で、元首相の称賛報道に終始したことであり、しかも選挙の直前、当日にそれを展開したことです。TBSサンデーモーニングのコメンテータは民主主義を鍛え直さなければならないと言っていましたが、それはまさしくメディア自身に向けられるべき言葉だったと思います(以下、今日の筆者のツイート)。
#サンモニ 松原氏、「民主主義を鍛え直す」とコメントしていたが、それはそのままメディアに向けられるものではないか。この数日の報道を見ていたら直に感じる。
— AKIRA HIRAISHI (@orientis312) 2022年7月10日
2022.07.11:00.25更新
最初の記事ではNHK党党首立花氏の名の漢字が間違っていました。ツイッター上での指摘により修正しました。
引用記事
[1] 鎮目博道: 「宗教団体の名前を伏せる」「各局揃って喪服」……「安倍元首相銃撃事件」テレビ報道への4つの“違和感”. 現代ビジネス. 2020.07.09. https://gendai.ismedia.jp/articles/amp/97303?skin=amp&imp=0
[2] Bloomberg News: Shinzo Abe’s Death Highlights Fringe Japan Political Party That Criticized Him. Bloomberg. 2022.07.09. https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-07-09/shinzo-abe-s-death-highlights-fringe-japan-political-party-that-criticized-him
カテゴリー:社会・政治・時事問題