Dr. Tairaのブログ

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植木鉢式生ゴミ処理の特性評価

はじめに
 
先のページで「ベランダでできる生ゴミ処理」を紹介しました。↓

ベランダでできる生ゴミ処理 - Dr. Tairaのブログ

 
その中で植木鉢を利用した生ゴミ処理(flowerpot-using solid biowaste composting, FUSBIC)を取り上げましたが、このページではそのFUSBIC法の処理特性について少し具体的に述べたいと思います。
 
情報源は研究成果リスト↓の一番上にある論文(平石:生物工学 77, 493 [1999])です。


1. 生ゴミ減量率

FUSBIC法は、生ゴミを投入しながら一定期間処理物を引き抜かない反復回分処理(fed-batch)の方式です。処理容器として通常12号植木鉢(容量約20 L)を使用し、この中に分解基材として園芸土を6 kg(12〜14 L)を入れて毎日生ゴミを投入していきます。投入量は夏期で最大0.3 kg/日、冬期で0.2 kg/日です。園芸土の中に含まれる微生物の力で生ゴミを分解すると同時に、太陽光と自然風を利用して水分を蒸散させながら減量化していきます。

夏期と冬期における典型的な1ヶ月間の減量の推移を図1に示します。処理は愛知県豊橋市で行なったもので、国内の中では比較的温暖な気候かつ風が強い土地になります。図1左は1998年9月のデータで、投入した生ゴミの累積量9.2 kg(負荷量0.31 kg/日)に対して、植木鉢の重量増加は0.93 kgでした。したがって、減量率は約90%になります。図1右は1999年2月のデータで、投入した生ゴミの累積量は5.8 kg(負荷量0.31 kg/日)に対して、植木鉢の重量増加は0.53 kgでした。したがって、減量率は同様に約90%になります。
 
このように季節に応じた適切な生ゴミ投入量を守っていけば、減量率90%を達成できることになります。実際は雨天が多い梅雨の時期では減量率は低下しますので(70%程度)年平均では83%くらいの減量率になります。
 
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4人家族ですと0.7 kg/日の生ゴミが出ることが知られていますので、これに対応するためには植木鉢を3〜4基使うことになります。年間では250 kg程度の生ゴミが出ることになりますので、83%の減量率であれば、約43 kgの処理物が出る計算になります。
 
実際には増加分の処理物を二ヶ月おきに引き抜いて別の植木鉢に移し、二次処理を行ないます。この過程で処理物はさらに重量ベースで8割程度に減り、堆肥になります。したがって、最終では生ゴミ250 kgから34 kgの堆肥ができあがることになります。
 
ちなみに、少々重たくなりますが30 Lの植木鉢2基や40 Lのプラスチック製コンテナー2基で生ゴミを処理した場合には余剰の処理物はかなり少なくなり、同じ250 kgの生ゴミ量で年間で それぞれ5 kgおよび3 kgの堆肥の生産になりました。すなわち、園芸に使える堆肥量を生産するほどもない程度に減量化を達成することができました。

2. 温度と重量変化からみる分解活性
 
生ゴミ処理では、微生物が生ゴミをエサとして摂取し、酸素呼吸によって最終的には二酸化炭素と水に変換します。この過程で微生物はエネルギーを得るわけですが、生ゴミ成分のすべてをエネルギーに変換できるわけではなく(変換効率は最大で40%)、多くは熱として放出してしまいます。つまり、生ゴミを分解すれば必ず発熱するわけです。したがって処理器内の温度を測定すれば微生物の働き具合がわかります。
 
図2左生ゴミを投入してからの24時間の温度変化と重量変化を示します。生ゴミ処理器の中心温度は、投入後からすぐに上昇し始め、4時間程度で最大に達し(図では45℃)、その後徐々に低下していきます。このとき外気温と比べて処理器内温度は10–20℃高いのが特徴です。図では0.38 kgの生ゴミを投入していますが、その重量低下は2段階になることがわかりました。まず、投入後2時間で急激に重量が低下し、その後低下が止まります。そして5–6時間後からまた緩やかな重量低下が起こることがわかりました。おそらく、最初の重量低下は水分の蒸散によるもの、2回目の重量低下は生ゴミの分解によるものと推察されます。
 
処理器の深さ方向に温度を測定すると図2右のようになります。処理器中心部になるほど温度は高くなり、深さ8 cmで最大となりました。太陽光に当てた植木鉢とそうでないものとを比べた場合では中心温度はほとんど変わらず、微生物の代謝熱による温度上昇であることがわかります。とはいえ、昼間と早朝とでは処理器内の温度は10℃近く差があり、太陽光による輻射熱(保温)効果が大きいことがわかります。
 
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3. 二次処理の効果
 
処理器(一次処理)から引き抜いた処理物を2ヶ月間二次処理(熟成処理)し、堆肥としての性質を有しているか成分分析を行ないました。表 1に示すように有機物と無機物(ミネラル)の比はほぼ1:1でした。炭素量は25%、窒素量は2%でC/N比は12となりました。
 
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まだ炭素含有量もC/N比もやや高いですが堆肥として使えるレベルに近づいている数字です。