Dr. Tairaのブログ

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アカボシゴマダラ幼虫の微妙な形態変化

 越冬から目覚めたアカボシゴマダラの幼虫ですが、越冬前に検出したエノキ幼木・低木上の数から判断するとほぼ幹上に出揃った感じがします。一部の幼木では全く幼虫が見られないか一晩で上っていた全員がいなくなるなどの不思議な現象が観察されますが、急激な温度変化などの環境ストレスに耐えられない緊急避難か、寄生バチ(ハチ)による体崩壊、あるいは天敵による捕食などが考えられます。
 
一方で、幹上に止まっている幼虫の形態には微妙な変化が見られるようになりました。落ち葉下での越冬中の縮こまった体型よりもやや太り気味になり、かつ頭部の突起と胴体の間の境界がくっきりとしてきました(写真1矢印)。
 
ちなみに写真1左上に見える枝上の白いテープは昨年12月にマーカーとしてつけていたものです。すなわち、越冬前と同じ位置に上っています。
 
イメージ 1
写真1
 
これだけだと体型変化がわかりにくいので、落ち葉の下で越冬中の幼虫と現在の幹上の幼虫を比べてみましょう。写真2左に見られるように越冬中の幼虫はほっそりとしていますが、現在の幹上の幼虫は太り気味でやや大きくなり頭部突起と胴体の間がくっきりとしています(写真2右)。5齢への脱皮が近づいてきている証拠です。
 
イメージ 2
写真2
 
しかし、ゴマダラチョウオオムラサキも同様ですが、数ヶ月間エサを食べていない中で落ち葉の下から幹上まで上ったり位置どりをしたするのに、かなりのエネルギーを使うと考えられます。そして若葉が出て食草が得られるまでの形態変化には関連する遺伝子の発現とタンパク質の合成が伴い、ここでもエネルギーを消費するはずです。どこにそんなエネルギーが余っているのか、考えれば考えるほど不思議です。