越冬から覚めたアカボシゴマダラ幼虫は、気温が上がり始めるこの時期にさまざまな動きを示します。まずは、半数の個体はまだエノキの低木・幼木の枝の二又の位置に止まっています(写真1)。体は落ち葉の下と比べてだいぶ大きくなっています。
写真1
一方で一部の個体は幹や枝の上を盛んに動き回っています(写真2)。
写真2
前のページでも紹介したように、枝上の新芽にたどり着いたものはそれをボリボリ食べる様子が観察されます(写真3)。葉っぱが大きくなる前に食べるとは...。
写真3
そして、これも前ページでも紹介しましたが、脱皮して若葉が出るまで待機している個体もいます(写真4)。
写真4
このように紹介していくとすべてのアカボシゴマダラの幼虫が元気にしているように感じられますが、すでに半数近い個体が力尽きて幹上から脱落していきました。ちなみに幹上で越冬できた個体は若葉を見ることなくすべて脱落し、死亡しました。
「アカボシゴマダラの幼虫は幹上でも越冬するのでゴマダラチョウよりも早く若葉にたどり着くことができるという有利性がある」とまことしやかに言われています。しかし、そもそも樹上で越冬するアカボシゴマダラの幼虫は全体の数%しかなく、樹上越冬できたとしても生存率はきわめて低いです。
ゴマダラチョウとアカボシゴマダラの越冬幼虫の全体のポピュレーションで比べれば、後者に有利性があるとはとても言えないと思います。