Dr. Tairaのブログ

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炭水化物ダイエットで老化する


今朝TV朝日の羽鳥モーニングショーを観ていたら、レギュラーの玉川氏のコーナーで炭水化物ダイエットの影響について伝えていました。結論は「炭水化物ダイエットで老化する」ということです。取材情報源は、東北大学大学院農学研究科の都築毅東北大准教授(http://tsuduki.sakura.ne.jp/の研究室です。

都築研究室において、マウスを通常食、高脂肪食、糖質制限食に分けて飼育したところ、糖質制限区に通常より早い老化が見られました(図1)。具体的には、平均寿命より25–25%短命であることがわかりました。

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図1. 通常食、高脂肪食、糖質制限食を行ったマウスの写真(2018.5.3 TV朝日モーニングショーより)

糖質制限食区のマウスにはサイトカインの一種であるインターロイキン-6(IL-6)が量が1.5倍になっていることがわかりました(図2)。

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図2. 糖質制限食のマウスではインターロイキン-6 (IL-6)が増加(2018.5.3 TV朝日モーニングショーより)

サイトカインとは、私たちの免疫を司っているリンパ球の一種が外からの異物(抗原)を受け取ったときに放出する特殊なタンパク質の総称です。感染防御、生体機能の調節、さまざまなな疾患の発症の抑制に重要な役割を果たしています。

サイトカインの代表的なものにインターロイキンがあります。IL-6と呼ばれるインターロイキンの一種は炎症系サイトカイン、加齢やストレスで分泌量があがります

糖質の代謝というのは、微生物からヒトまで共通にみられる原始的な生命システムです。そこを極端に人為的に制限するということは、生命活動の基本を変えることになり、そもそも無理があります。ましてや私たちの脳の活動には多量のグルコースが必要です。

番組ではそこを強調していて、何事も過ぎたるは及ばざるが如しということで、極端な食事制限はいい結果を生まないということを述べていました。

現在は、40–50年前よりも米を食べなくなり、炭水化物の摂取量が少なくなっています(図3)。代わりにタンパク質と脂質の摂取量が増えています。現在の食事のバランスは、健康維持の面で必ずしもいいとは言えないようです。

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図3. 1975年頃と現代の3大栄養素の摂取量の違い(2018.5.3 TV朝日モーニングショーより)

玉川氏の「では、私たちにとってどのような食事がよいのか」という問いに、都築准教授は1975年頃の日本の食事が理想と答えていました(図4)。1970年代は和食に欧米食が融合し始めた時期で、伝統的な和食の良さに栄養の充実が加わってきた頃です。

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図4. 健康にとって理想的な食事の形態(2018.5.3 TV朝日モーニングショーより)

とはいえ、1975年頃といえば、白米の消費量が今よりも多い時代で、白米そのものの多量の摂取は、血糖値の上昇やインスリンの分泌量の増加の原因にもなります。すなわち、糖尿病へと進む可能性もあるわけです。

そこで、炭水化物の摂り方としては、玄米や穀類のような精製していないものを食べるというのがいいのでは、というのが番組での示唆でした。

私の感想としては、確かに世間で炭水化物ダイエットと言われている風潮は行き過ぎで、結局炭水化物の摂り過ぎがよくないということを再認識しました。食事によって腸内のマイクバイオーム(微生物の集団)にも影響があるはずで、その点からの検証も必要ではないかと思います。