Dr. Tairaのブログ

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本年初めのゴマダラチョウ


私は定期的に昆虫の定点観察を行なっています。カメラを片手にウロウロしている分にはそれほど怪しまれませんが、帽子を被り、顔にマスクをし、手袋をし、木の根元の落葉をゴソゴソかき分けながら幼虫探しをしている時にはかなり怪しい状態です。ほぼ2回に1回は通行人に「何してるんですか?」と声をかけられます。

昆虫探しに理解のある人ならばいいのですが、そうでない場合も少なからずあります。とくに私有地付近の場合は厄介です。「迷惑だ」と言われたことも何度かあります。いつも人目を気にしながら、テキパキ迅速にやっています。

というわけで、正月は通行人も畑で仕事している人も少なく、落葉の定点観察には好都合です。正月早々ゴマダラチョウの幼虫の定点調査に出向きました。年の初めから落葉をひっくり返していろ暇人も少ないと思いますが、とにかく今がチャンスです!
昨日、今日と2日間出かけました。

今回訪れたエリアは都市郊外の雑木林に隣接する農地域です。いわゆる里山に近い環境にあります。このエリアでは、これまでいくつかのエノキの成木下でゴマダラチョウの越冬幼虫を発見しています。今回は以前から目をつけていた農地の中にあるエノキの成木群を調査しました。

写真1はそのうちの一つのエノキ群を示します。農地の脇に樹高13–18 mの成木が4本立っているところです。ゴマダラチョウは、このように独立して存在するするエノキ成木を好んで産卵する性質があるようで、幼虫が見つかる確率は雑木林よりもむしろ高いです。

イメージ 1
写真1

ほとんどのエノキの下には笹が群生しており、作業するのにだいぶ苦労しましたが、落葉が風で吹き飛ばされずに残っていて、むしろ好都合でした。調査した成木の約半分から越冬幼虫を検出することができました。写真2は昨日発見した幼虫達です。

イメージ 2
写真2

ちなみに、アカボシゴマダラの幼虫は、予想どおり調査したすべての成木から発見できませんでした。出てくる幼虫はすべてゴマダラチョウでした。おもしろいのは、200 mくらい離れたエノキの幼木からは逆にアカボシゴマダラが見つかることです。

ゴマダラチョウの生息ポイントとして、エノキの成木であればよいかと言うとそうでもなく、いくつかの条件があるようです。そのうちの一つはやはり下枝の高さです。下枝が低い位置についている大木ほど発見できる確率が高いように思います。

私が中学生の頃はどこにでもいるゴマダラチョウで、冬休みになるといつもエノキの落葉をひっくり返して幼虫を見つけては遊んでいました。それが今では、成虫の急減とともに、場所とエノキを選ばないと幼虫も見つけるのがむずかしくなりました。逆にそのことで、皮肉にもだんだんとゴマダラチョウの生態が具体的にわかってきたような気がします。