Dr. Tairaのブログ

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越冬へ向けたアカボシゴマダラ幼虫


環境省は、移入種アカボシゴマダラ Hestina assimilis と在来種ゴマダラチョウHestina  japonica が生活において競合する可能性があるとして、すでに前者を特定外来生物に指定しています。両者に競合があるかどうかの知見を得るためには、一つとして彼らの越冬の動態を知ることが重要です。しかしながら両者が幼虫で冬を越すとしても、同じような越冬形態になるのか、それとも違いがあるのか、よくわかっていないことが多いようです。

アカボシゴマダラの幼虫は、越冬へ向けて葉上→幹上→地面(落ち葉の下)というように移動するとされています。この時期まさに、空中固体表面から地面への移動が起こっている最中です。しかし、よく観察してみると幼虫の行動・移動はゴマダラチョウに比べてきわめて複雑なようです。

私は幼虫がいつ、どのようにして、どのくらいの速さでエノキの葉上・幹上から移動するのか、その決定的瞬間を捉えたいと思って定点カメラで追跡していますが、バッテリー切れが多くてまだ撮影成功には至っていません。

一方で、出向いた観察ポイントで偶然地面へ移動中の幼虫を動画撮影できた機会がいくつかあります。そのうちの一つはツイッター上で一部紹介しています↓。

アカボシゴマダラの移動
https://twitter.com/rplelegans/status/1069002591533592576

まだ目撃回数が少ないのですが、これらの動画から計測してみると、主幹から地面へ移動する幼虫の速度は予想よりも速いものでした。目撃回数を重ねてより精査したいと思っています。

もう一つ不思議に思っていることがあります。それは幼虫の変態とその時期です。一般に越冬する幼虫は4齢まで脱皮すると同時に、頭上の突起が通常よりも短い越冬型に変化します。そしてこの形態の幼虫が、葉上→幹上→地面(落ち葉の下)と移動して行きます。

ところが12月に入って、越冬型ではないと思われる幼虫が、葉上から主幹の根元付近に移動し、そこに止まっている例が少なからず見られます(写真1)。体長はいずれも20 mmを超え、越冬型に比べると30%以上大きいです。少なくとも私はゴマダラチョウではあまり見たことがないような変態変化に伴う行動です。

このような非越冬型幼虫は果たして越冬できるのでしょうか、それともこれから越冬型に形態変化するのでしょうか。

イメージ 1
写真1

さらに、12月になってもまだ葉上にいる越冬型幼虫が見られます(写真2、3)。いずれ低温になれば引越しすると思いますが、葉が青い限りはまだ止まっているのか、注視していきたいと思います。

イメージ 2
写真2

イメージ 3
写真3