Dr. Tairaのブログ

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アカボシの幼虫の群れ

 
海外からの移入種と推定されている関東のアカボシゴマダラ Hestina assimilis ですが、本ブログでも何度も取り上げているように、本年の1月に特定外来生物に指定されました。
 
この特定外来生物に指定には昆虫学者の強力なプッシュがあったと聞いています。同じエノキを食草とする在来種ゴマダラチョウ Hestina japonica との競合を危惧してのことらしいですが、少なくとも文献上それを証明する論文は見当たらないようです。
 
科学的根拠が希薄とも言えるのに、ほぼ推測だけで特定外来生物に指定するとは少々乱暴な話ですが、とにかく科学的知見を積み重ねていく必要があります。本来は飼育も含めて多くの人による観察、研究が必要と思われますが、特定外来生物扱いになると、研究に制約がかかることも確かです。
 
というわけで、私自身日常的にあちこちに出かけては、アカボシゴマダラとゴマダラチョウのフィールド調査を続けています。11月はちょうど幼虫が越冬モードに入る時期なので、特にその動態についての精査が必要と考えられます。
 
今日もあるポイントに出かけて、エノキの幼木・低木を中心に探索を行いました。現場ではかなり幼木が伐採されているようでしたが、調べた数は60本を越えました。すでに葉上からはほとんどの幼虫が姿を消しているので、幹上や直下の落ち葉をくまなく探す作業になり、結構大変です。
 
今日のポイントでは、たくさんのアカボシの幼虫が見つかりましたが、ゴマダラチョウは1頭も発見できませんでした。これまでも大勢の人が指摘していますが、アカボシは落ち葉の下だけでなく幹上でも越冬することができると言われています。しかも群れをなして幹上にとまっていることが特徴として挙げられます。
 
写真1はある幼木の幹上の群れです。3頭います。ほとんど例外なく、枝分けれ(二又)の位置に静止しています。
 
イメージ 1
写真1
 
写真2は別の幼木の群れを示します。部分的に見えるものも含めると6頭います。
 
イメージ 2
写真2
 
さらに別の低木にとまる群れを示します(写真3)。9頭います。幼虫はエノキの幹・枝に擬態化しているのでわかりにくいですが、慣れれば次々と見つけることができます。
 
イメージ 3
写真3
 
この日見つかった幼虫の位置としての「エノキの幹上」と「落ち葉の下」の比率は約7:3でした。これから厳冬期に向かえば、枝から落ち葉に降りてくる個体が増えることが予想されます。
 
ゴマダラチョウもときどき幹上にいることがありますが、上記のように群集の状態で見つかることはありません(少なくとも私は経験がありません)。
 
このように気温に応じて幹上でも群れで越冬できることが、アカボシの生存性の確率を高めているのではないかとよく言われています。果たしてアカボシゴマダラの越冬幼虫が冬を通して幹上で過ごすのか、正確な情報はまだないようです。私の従来の観察では厳冬期には結局落ち葉の下に潜るのではないかと予想しています。いずれにせよ精査が必要です。