ツマグロヒョウモン(Argyreus hyperbius)は、国産のヒョウモンチョウの中では珍しく、南方系のヒョウモンチョウの仲間です。いま北上化を続けており、食草とするスミレ科植物(園芸用のパンジーやヴィオラ)の人為的移動・拡大と地球温暖化が関わっていると考えられています(https://blogs.yahoo.co.jp/rplelegans130/16435595.html)。現在、関東以南では最も普通に見られるヒョウモンチョウです。
この種に限らず、チョウの翅の模様には個体差があって、写真を撮って画像を確認するたびにそれを感じさせられます。ツマグロヒョウモンの写真もたくさん撮ってきましたが、画像が増えるたびにやはりすいぶんと個体差があるものだなあと感じています。
とはいえ、今回撮ったツマグロヒョウモンのメスは、これまで私が見てきた中では最も変わり者と言えるものでした。どのように異常かと言うと、前翅の形が通常とは異なってくびれが入り(そのため相対的に前翅が小さい)、かつヒョウモンチョウに特有の黒紋が大きいことです(図1)。
図1. 異常な翅(前翅のくびれ)と黒紋模様をもつツマグロヒョウモンのメス
わかりやすく通常の範囲の翅と模様をもつ個体と比べてみると、図2のようになります。図2Aが普通の個体、図2Bが今回の異常な個体です。
図2. ツマグロヒョウモン♀の通常の個体(A)および翅と模様が異常な個体(B)
さらに、より見やすくするための右の翅だけを比べた画像を図3に示します。図3A、Bが通常の個体で、図3Cが今回の異常個体です。
図3. ツマグロヒョウモ♀の通常の個体(A)および翅と模様が異常な個体(B)
図3Cに今回の個体の主な特徴を番号1〜5で示します。まとめると以下のようになります。
1. 前翅中央の黒紋が大きな逆三角形で、周囲の黒紋も大きい
2. 前翅先端の白帯に通常ある小さな黒点がない
3. 前翅に右方向からのくびれがある
4. 後翅の胴体に近い黒紋が大きくコウモリのような形
5. 後翅のギザギザがゆるやか