9月23日、日本経済(日経)新聞のRDD世論調査の結果が報道されました [1]。それによると、安倍内閣支持率が55%に上昇し、不支持率は39%に下がったということです。自民党総裁に再選された後のご祝儀の要素もあるとはいえ、各大手メディアの世論調査でも支持率にやや回復の傾向が見えます。
ところで日経新聞は、世論調査で内閣支持率が最も高く出るメディアとして知られています。最も低い支持率の数字を出す朝日新聞や毎日新聞のそれと比較して、いつも議論になりますが、一体何が違うことでこのような結果になるのでしょうか。ここで、これまでの日経新聞と朝日新聞の世論調査のデータを比較しながら、あらためて考察してみたいと思います。
まず、前もって指摘しておきたいことは、以前のページでも述べましたが(https://blogs.yahoo.co.jp/rplelegans130/16363566.html)、日経新聞の世論調査では二次質問のデータを入れて内閣支持率を出している点です [2]。以下に質問の仕方を具体的に示します。
一次質問:「あなたは安倍内閣を支持しますか、しませんか」
↓
わからない・いえないと回答すると:
↓
二次質問:(いえない・わからない」と回答した方)にお気持ちに近いのはどちらですか:支持する、支持しない
つまり、一次質問に「いえない・わからない」とした場合には、二次的質問の誘導によって、仕方なく回答させられることになります。その結果、二次質問の回答が上積みされることになり、内閣支持率が55%となっているわけです。一次質問だけだと内閣支持率は50%(不支持32%)となり、二次回答の上積みで内閣支持率が5%も上がっていることになります。二次質問も「お気持ちが近いのはどちらですか」ときわめて巧妙・誘導的な問いになっています。
もちろん二次回答の上積みを行うと、不支持の割合も高くなってしまいますが、内閣支持率を切り取って強調する場合には、こちらの方が効果的です。
日経新聞の一次質問だけの場合と二次質問の回答込みの場合の内閣支持・不支持の割合の変化(本年のデータ)を、図1に示します。比較として朝日新聞のRDD調査のデータ [3] を示します。日経と朝日の傾向は似ているようにも思えます。
そこで、図1のデータを使って、日経新聞と朝日新聞による内閣支持率の関係を二次元プロットとして図示してみました(図2)。両者には相関関係があり、国民の傾向を同じように吸い上げていると思われます。しかし、回帰式から判断できるように、日経新聞の一次回答による内閣支持率は朝日新聞のそれよりも5.5%高くなっており、二次回答込みになると8.5%も高くなっています。
一次回答のデータのみを使った場合においても、日経新聞の方が朝日新聞より5.5ポイントも高い内閣支持率を与える理由は何でしょうか。日経新聞は回答者の帰属に関する詳細データを公表していないので、この疑問に対する答えは明確に出すことができません。しかしながら推察をすることはできます。
これまでこのブログで何回か示してきたように、男女間や年齢層間で内閣支持率は大きく異なります。簡単にいえば、男性は女性よりも10ポイント近く内閣支持率を高く与えます。また若年層と高齢層でも大きな開きがあります。たとえば男性18-29歳層と男性69-69歳層の場合では、前者が20%くらいの高い内閣支持率になります↓。
世論調査に見る男女・世代間のギャップ
つまり、回答者の男女・年齢層に偏りがあれば、大きな内閣支持率の違いになって現れることは考えられるわけです。意図的に男性(とくに若年男性)の割合を多くするように回答者を選択すれば、容易に内閣支持率を上げることができます。
日経新聞と朝日新聞の世論調査では、内閣を支持する・支持しない理由の質問についても大きく異なります(図3)。日経新聞では、「国際感覚がある」、「指導力」、「安定感がある」などの内閣にポジティヴになるような質問項目があります。朝日新聞にはこれらはありません。
一方で、朝日新聞にある「他よりはよさそう」、「首相が安倍さんだから」という項目は日経新聞にはありません。「他よりはよさそう」という項目は、他社メディアの世論調査でも「内閣を支持する主理由」としてありますが、日経新聞では意図的にこれを外しているような気がします。
図3. 日経新聞(左)および朝日新聞(右)の世論調査における「内閣を支持する・支持しない」の理由の項目(ピンクで影を付けた部分):日経では複数回答の%、朝日では支持・不支持を合わせて100%となっている
参考文献・データソース
1. 日本経済新聞: 内閣支持率、7ポイント増の55% 本社世論調査. 2018年9月23日. https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35685690T20C18A9MM8000/