Dr. Tairaのブログ

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人工甘味料入りのヨーグルト

 以前のページでも紹介しましたが、市販のヨーグルトの中で、プレーン以外の甘味タイプには、大部分に代替甘味料が添加されています。現在、食品添加物として認められている代替甘味料のなかで、最もよく使われているものとして、天然甘味料ステビア人工甘味料スクラロースアセスルファムKがあります。
 
これらの代替甘味料は、とくに人工甘味料の場合、体内で消化されにくいので吸収されずにそのまま体外に排泄されます。したがって、代替甘味料自身の健康への害は考えにくく、これらが安全な食品添加物として認められている主な理由です。一部ウェブ上の記事で人工甘味料が肝臓に蓄積されて危険などの情報がありますが、そのような事実を示した科学的報告はありません。
 
とはいえ、私自身は二つの理由で、代替甘味料が添加されたヨーグルトやその他の飲食品は、なるべく摂取しないように心がけています。一つは、代替甘味料のくどい甘さと後味の悪さという味覚の問題です。もう一つの理由は、体内で消化・吸収されないということは、微生物による分解も受けにくいということになり、環境への負荷が危惧されることです。
 
代替甘味料が使用される理由は、単に売る側にとっての経済的都合しかありません。すなわち、砂糖の数百倍の甘さを有する安価な代替甘味料を使えば、砂糖の添加量をそれだけ減らすことができ、原材料費を抑えられるからです。このような経済効率を優先する流れに、あまり乗せられたくないという気持ちもあります。
 
では実際に、どのメーカーのヨーグルトに、どのような代替甘味料が使われているのでしょうか。メーカー側も消費者の嗜好性に対していろいろと考えているようで、時とともに種類を変えたり、または使用を中止したところもあるようです。これまで調べた中で、代表的なものを以下に示します。
 
図1は、グリコの製品についている食品表示を示します。「BifiXブルーベリーヨーグルト」には砂糖とともにスクラロースアセスルファムKの2種類の人工甘味料が使われていることが表示されています。一方、「BifiXイチゴのヨーグルト」には砂糖のみで、人工甘味料の添加表示はありません。
 
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図1. グリコ製の「BifiXブルベリーヨーグルト」(左)および「BifiXイチゴヨーグルト」(右)における甘味料表示
 
図2は、明治の製品の表示です。「朝のフルーツミックスヨーグルト」には砂糖とともに、ステビアの添加が表示されており、「プロピオヨーグルトLG21」(右)においても同様にステビアの表示があります。
 
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図2. 明治製「朝のフルーツミックスヨーグルト」(左)および「プロピオヨーグルトLG21」(右)における甘味料表示

明治製ヨーグルトはステビアの添加のみかと思いきや、製品によってはほかの代替甘味料が使われています。図3に示すように、「プロピオヨーグルトLG21低脂肪」にはスクラロース添加の表示が見られる一方、「プロピオヨーグルトLG21ドリンクタイプ低糖・低カロリー」にはアスパルテームが添加されています。

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図3. 明治製「プロピオヨーグルトLG21低脂肪」(左)および「プロピオヨーグルトLG21ドリンクタイプ低糖・低カロリー(」右)における甘味料表示
 
図4は、森永の「アロエヨーグルト」と協同乳業の「果実ヨーグルト」の表示を示します。両方ともスクラロースの使用が明示されています。

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図4. 森永製「アロエヨーグルト」(左)および協同乳業製「Doleフルーツミックス&ヨーグルト」右)における甘味料表示

一方でダノン製のヨーグルトには、製品の目立つところに人工甘味料無添加の表示があります(図5)。ダノンジャパンは今年(2018年)の4月、販売している5種類すべてのヨーグルトブランドについて、着色料、人工甘味料、および人工香料を使わないことを発表しました[1]
 
人工甘味料を含めた添加物を使わないという取り組みは、大手のメーカーは初めてのことであり、ブランドイメージを高めることと他者との差別化を図る狙いがあると思われます。

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図5. ダノン製ヨーグルトにおける人工甘味料不使用表示

最後に、主なメーカーにおけるヨーグルト製品(甘味タイプ)の代替甘味料の使用状況をまとめます(表1)。私が実食した範囲内では、人工甘味料を使っていないメーカーは上記のダノン以外では、オハヨー乳業小岩井乳業があります。

表1. 市販のヨーグルト(プレーン以外)に含まれる甘味料
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* 天然甘味料は青色、人工甘味料は赤色で示す.
** HPのQ&Aコーナーでステビア入りであることを明示.
 
人工甘味料を含めた代替甘味料は、その化学構造上代謝されにくい性質があり、一応安全な食品添加物として認められているものです。各メーカーはこのルールに従って、適宜代替甘味料を使用しているわけですが、食品としての必要性が必ずしもあるわけではなく、あくまでも経済性の点から使われているものです。
 
最近では、人工甘味料が直接健康に及ぼす影響という観点からではなく、人工甘味料を摂取することによって起こるエネルギー代謝の変化や腸内細菌叢の変化などに焦点を当てて研究が行われています。天然甘味料のステビアもその意味では同じことです。
 
もとより、生分解されにくい人工甘味料は、私たちの体を通して環境へ排泄され続けているわけですが、それらが及ぼす影響についてはまったくわかっていません。生分解されないマイクロプラスチックと同様な生態学的影響を懸念する声も少なからずあります。
 
ダノンの人工甘味料不使用の方針は、こうした専門家の漠然とした懸念や、消費者の嗜好性や健康に対する考え方を先取りする形で決定されたものと思われます。
 
 
参考文献
 
1. 筒井竜平: ヨーグルトに着色料や人工甘味料使わず/ダノンジャパン. 朝日新聞デジタル 2018年4月16日. https://digital.asahi.com/articles/ASL4D56F0L4DULFA011.html