Dr. Tairaのブログ

生命と環境、微生物、科学と教育、生活科学、時事ネタなどに関する記事紹介

牛乳の殺菌と風味

牛乳は毎日のように飲まれる飲料品の一つです。購入するときには、おそらく牛乳パック上部に記してある賞味期限をチェックすることが多いと思いますが、裏面の表示に目が行くことは少ないのではないでしょうか。
 
裏面の食品表示には、無脂乳固形分、乳脂肪分、原材料名ととに殺菌法が書いてあります。私たちが手に取る市販の牛乳の大部分が130℃、2-3秒の殺菌が施されていると思います(図1)。
 
イメージ 1
図1. 牛乳の食品表示と殺菌法
 
牛乳は「乳および乳製品の成分企画等に関する省令」に基づいて、販売する前に殺菌することが義務付けられています。図2に示すように、牛乳の殺菌法には三つの方法があり、私たちが購入している製品の大部分は「超高温短時間殺菌法 (UHT)」と呼ばれる方法で殺菌されています。この方法は、殺菌効果が高く、賞味期限を長くすることができる利点があります。一方で加熱臭が出る欠点があります。
 
イメージ 2
図2. 牛乳の殺菌法
 
私たちが普段飲んでいる牛乳は、実は加熱臭付きの味です。加熱臭に慣らされているのでこれが牛乳の味だと思いがちですが、搾りたての生乳の味はまったく違います。
 
この生乳に近い風味を再現しているのが「低温保持殺菌法 (LTLT)」で殺菌した牛乳です。これは、62-65℃、30分という低温殺菌の方法なので、殺菌効果が低く、一般に消費期限の牛乳となります。したがって、牧場の現地生産に近いお店などではLTLTの牛乳が販売されていることがありますが、一般のスーパー・コンビニに出回ることはありません。
 
低温殺菌は飲食品の元来の風味を保つという利点があり、とくにアルコール飲料については主要な殺菌法になっています。これについては別ページで紹介したいと思います。
 
重要ポイント
●販売する牛乳は法令で殺菌が義務付けされている
●一般の市販牛乳の殺菌法はUHT(大部分は130℃、2-3秒)
●一般の市販牛乳は加熱臭の風味