Dr. Tairaのブログ

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プラスチック汚染問題-3

このところTBSテレビが連日環境のプラスチックごみ汚染を伝えています。とくにマイクロプラスチックによる海洋汚染です。環境中に排出されたプラスチック廃棄物は、物理的に細かくなり、マイクロプラスチックという状態になって浮遊するようになります。
 
こうなると海洋動物はおろか動物プランクトンのような微小動物まで摂取できるようになり、それによって個体数を減らすことがベルギーのコリン・ジャンセン博士のグループの研究によって明らかにされています(本ブログ関連記事)。
 
こうなると海洋生態系に大きな影響を及ぼすことが危惧されます。
 
日本近海のマイクロプラスチックの汚染は世界でも最大規模です。昨日、世界平均と比べると日本のマイクロプラスチックの汚染量は27倍であるとTBSは報じました(図1)。このプラスチック汚染に関する情報源は、Isobe et al. [1] の論文と思われます。彼らの論文では、東アジア海域はマイクロプラスチック汚染の"hot spot"とされています。

なぜ日本近海は汚染量が多いか、理由は簡単です。プラスチックの消費量が多いからです。TBSニュースでは、「プラスチックごみの排出が多い国だということが背景にある」という東京農工大学高田秀重教授の弁を取り上げていました。日本でのプラスチック消費量は年間900万トン、レジ袋使用量は300億枚と言われています。
 
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図1. 日本における海洋プラスチック汚染ーマイクロプラスチック汚染量は
世界平均の27倍(20183.29 TBS Nスタより)
 
今日、TBSテレビが、プラスチック汚染問題に関する中川雅治環境大臣の記者会見の様子を報じました(図2)。大臣は「プラスチックごみ汚染は、世界が連携して取り組むべき地球規模の課題である」と述べ、近い将来の国内におけるレジ袋禁止への対策を示唆しました。すでにEUのいくつかの国々ではレジ袋の使用が禁止になっています(図3)。
 
私たちはスーパーで買い物をするとき、マイバッグを持って行くことは割と当たり前になっていますが、買い物台の上のロール式の極薄ポリ袋を取り出し、パックされた食品をさらにそれに入れて持ち帰ることは日常的に行なっています。この行動が近い将来なくなる可能性があります。
 
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図2. プラスチック汚染問題への取り組みに関する中川環境相の記者会見
(2018.3.30 TBSニュースより)
 
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図3. レジ袋を禁止している国や地域(2018.3.30 TBS NEWS23より)
 
実は、マイクロプラスチック汚染の問題は、私たちの身近な生活にも忍び寄っています。一つは、市販されている調味料としてしての食塩に微量ながらマイクロプラスチックが混入していることが、昨年Scientific Reportsに報告されました [2]

また、フォーブズ紙ウェブ版は、各国で販売されている複数の主要ブランドを対象とした調査で、ボトル入り飲料水にマイクロプラスチック粒子が混入していたことを報じました [3]。これはニューヨーク州立大学フレドニア校が行った調査結果で、9か国(中国、ブラジル、インド、インドネシア、メキシコ、レバノンケニア、タイ、米国)で販売されている11ブランドのボトル入り飲料水の大部分にマイクロプラスチックが含まれいると報告しています [4]
 
これを受けて先日、世界保健機関(WHO)はボトル入りの飲料水に含まれるプラスチック粒子の危険性についての調査を開始すると発表しました [5]。WHOの関係者は、マイクロプラスチック繊維が人間の健康にとって害であることを示す証拠はないが、この問題は新たな懸念事項だと述べています。
 
参考文献
 
1. Isobe, A. et al.: East Asian seas: A hot spot of pelagic microplastics. Mar. Pollut. Bull. 101, 618-623 (2015). 
 
2. Karami, A. et al.: The presence of microplastics in commercial salts from different countries. Sci. Rep. 7, 46173 (2017). 
 
3. Forbes Japan「ボトル入り飲料水に混入のプラスチック粒子、ネスレの商品が最多」: 
 
4. Mason, S. A. et al. Synthetic polymer contamination in bottled water. FREDONIA State University of New York: 
 
5. BBC News Plastic: WHO launches health review: