Dr. Tairaのブログ

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受動喫煙

私は20代の頃喫煙者でしたが、タバコを止めた後はその煙や臭いに対してとても敏感になりました。たとえば、野外で50mくらい離れた場所にいてもだれかがタバコを吸っていると感じるほどです。これは、割と早い時期に禁煙に成功した方に訊くと、皆さん同様に感じることのようです。受動喫煙健康被害との関係で大きな社会問題になっていますが、日本は意識や対策の上ではまだ後進国と言わざるを得ないようです。
 
今朝のNHKあさイチを観ていたところ、受動喫煙の問題を取り上げていました(写真)。受動喫煙と明らかに因果関係があったとみなされる場合に限っても、年間
15000人の方が亡くなっているという冒頭の説明は予想以上で驚きました。その内訳は脳卒中8000人、心筋梗塞4500人、そして肺がん2500人です。
 
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さらに、報告は続きます。タバコを吸っている人がいると、そこから半径25 mの範囲は受動喫煙の影響があり、タバコの煙が衣服に付着し、その服からさらに有害ガスが発生するということでした。また、煙がなくてもタバコを吸った直後ではその人の吐息から4分間に亘ってアセトアルデヒドが検出され、室内に入るとその人の吐息による影響は45分間が続くということです。
 
アセトアルデヒドは、飲酒した時に体内でアルコールが分解してできる物質でもあり、発ガン性があります。その機構について、最近、アセトアルデヒドがDNAを不可逆的に損傷し、発ガンを促進するということがネイチャー誌で報告され [1]、ニューズウイーク日本版でも取り上げられました[2]

受動喫煙ぜんそく、虫歯、中耳炎、乳幼児突然死症候群にも関わっているということです。タバコに含まれるニコチンは体内でコチニンに代謝変換されますが、一部の小学生の尿を調べたところ、2割にコチニンが検出されたという衝撃的な報告がありました。子供の三次受動喫煙はきわめて重大な問題だと思われます。
 
国会議員においては、タバコに関する議員連盟があります。一つは、「自民党たばこ議員連盟」で、2013年に発足した日本の自由民主党議員が結成した連盟です。もう一つは、2002年に超党派の国会議員によって設立された禁煙推進議員連盟で、2014年に「東京オリンピックパラリンピックに向けて受動喫煙防止法を実現する議員連盟」と改名して活動しています。これらの議員連盟の考えも反映した上で、今年の1月末、厚生労働省健康増進法の一部を改正する法律案、つまり受動喫煙防止強化案を発表しました[3]
 
しかし、残念ながら受動喫煙防止に関しては骨抜きになるような案になっています。すなわち、飲食店は原則喫煙が禁止でありますが、自民党の反対で100平方メートル以下の店は除くとされました。これは全ての飲食店の55%に当たります。国民の健康、とくに将来を担う子供たちの健康を真剣に考えるならば、政府はより積極的な受動喫煙防止対策を取るべきと考えます。
 
引用文献

[1] Garaycoechea, J. I. et al.: Alcohol and endogenous aldehydes damage 
chromosomes and mutate stem cells. Nature 533, 171-177 (2018). https://www.nature.com/articles/nature25154
 
[2] ニューズウイーク日本版「アルコールとがんの関係が明らかに DNAを損傷、二度と戻らない状態に」:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/01/dna2.php
 
 
               
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