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米CDCガイドラインとwithコロナ

はじめに

昨日(8月12日)、このブログで、米国CDCのCOVID-19対策に関する改訂ガイドラインを紹介しました(→COVID-19インパクトの最小化ー米CDCガイドライン)。このガイドラインパンデミック対策の主旨がきわめて明確に記述されています [1]。しかし、同時にwithコロナ(ウィズコロナ)の方針をとる欧米諸国の舵取りの難しさも感じました。日本も然りです。

ちなみに、米国において、直接ウィズコロナ(living with the coronavirus)という言葉を発せられることはないようです。欧州の専門家でもそうであり、この言い方をするのはもっぱら政治家やマスコミです。一方、日本では、政治家、医療専門家、メディア、国民がこぞってこのフレーズを口にします。

日本では、また、メディアが「コロナと共存」(living together...)。「コロナとの共生」(coexit with...)というフレーズを盛んに用いますが、このような言い方は諸外国では、私は聞いたことがありません。それも当然でしょう。なぜなら「共存」という言葉は相手(ウイルス)の存在を許す言い方ですし、「共生」は何らかの相互利益を意味する言葉だからです。

このブログ記事では、米CDCのガイドラインと照らし合わせた流行の状況を踏まえながら、あらためてウィズコロナの現状を考えたいと思います、ここでは、ウィズコロナを「ウイルスの攻撃に対して被害を最小化することで耐え抜き、一定レベルの被害・犠牲が出ることを容認した上で社会経済活動を推進する」という、英国に近い意味で進めます。なおこの意味では、日本の政府、専門家、メディア、一般人のステークホルダ間のリスクコミニュケーションにおいて、明確な合意形成はできていないと思います。

1. 米CDCガイドラインの概要

CDCのガイドラインでは、COVID-19に対する脆弱者として高齢者、基礎疾患を有する人、免疫不全者を挙げ、これらの重症化リスクの高い人たちを防護するために何をなすべきかというパンデミック病の基本を明確に述べ、そのための公衆衛生の取り組みを示しています。ワクチン接種、治療薬などの医薬的介入に加えて、検査・隔離、換気、マスク着用などの非医薬的介入によって、COVID-19のリスクは大幅に低減できたとしています。

医薬的介入においては、ワクチン接種を最新にすることが強調されています。また、COVID-19の治療薬としてラゲブリオ[モルヌピラビル]、パクスロビド[ニルマトルビルおよびリトナビル]などの抵ウイルス剤の具体的名称まで挙げて強調されています。ワクチンと治療薬はもちろんCOVID-19の重症化や死亡を防ぐものとして有用なわけですが、これらが全て米国発であることを考慮しておく必要があります。利権が介在することも考えると、強調しすぎている嫌いもあります。

ワクチンの副作用という言葉も出てきますが、基本的にリスク/ベネフィット比はきわめて小さいというニュアンスで、世界のワクチン推進の先頭に立っている感があります。抵抗ウイルス剤にしても、ラブゲリオは変異原であり、パクスロビドはP450阻害剤入りのきわめて使用が限定される薬剤でありながら、ガイドラインでは非常にポジティブな書き方です。日本では、パクスロビドの使用は低調であることが伝えられています [2]

結論として、COVID-19は、依然として公衆衛生上の脅威ではあるが、その医学的に意味ある病気のリスクはいま大きく低下させることができるとしています。その理由として、ワクチンおよび自然感染によって誘導される国民の免疫性が高いこと、有効な医薬的、非医薬的介入が可能であることが述べられています。そして、これら一連の有効な公衆衛生手段が広く利用可能であることに支えられているからこそ、病気と死亡のリスクを最小化し、医療システムの負担を減らすという目標に焦点を当てることができると強調しています。

1. 米国および他のG7諸国における被害状況

以上のようなCDCのガイドラインがある状況で、米国はいま全数把握をやめ濃厚接触者の隔離も解きながら、社会経済活動を抑制することなくウィズコロナの方針を進めているわけです(ただしウィズコロナという言葉を使っていない)。

それでは米国でのいまの流行状況はどのようなものか、日本やその他のG7諸国と比較しながら見てみましょう。図1に、感染者の全数および発生率(人口比感染者事例)の推移を示します。日本の突出した感染者数と同時に米国での横ばい状況が特徴としてみてとれます(図1上)。発生率においても日本は米国を軽く抜き、いまG7諸国トップ(世界でもトップ)であることがわかります(図下)。

しかし、米国ではCDCガイドラインに示されているように、感染者の追跡はリスクが高い環境に限定し、陽性把握も病院内の患者に限定して行なっていますので(自宅での検査陽性は含まれない)、全数ではないことに注意が必要です。英国でも同様です。図1は、米国においては、実際には、依然として日本より高いレベルでダラダラと流行が続いていることを示唆しています。

図1. G7諸国における最近の感染者の全数(上)および発生率(人口比感染者数、下)の推移(Our Word in Dataより).

感染者数で国際比較するのは、もはや無理があるので、より統計的把握がしっかりしている死亡者数でみてみましょう。図2に、死亡の全数および死亡率(人口比死亡者数)の最近の推移を示します。

死亡者数の推移をみて顕著なのは、米国が圧倒的に多く(4百−5百人/日規模)、しかもダラダラと微増していることです(図2上)。人口が多いので当然とも言えますが、図1上の感染者数と比較してみれば、流行が全く減衰しておらず、一定レベルで続いている(むしろ上昇している)ことをうかがわせるものです。BA.5流行が続く欧州でも死者数が増加していましたが、今は減衰に向かっています。そして、これは過去の流行の波に比べると小さいものです。

図2. G7諸国における最近の死亡者の全数(上)および死亡率(人口比感染者数、下)の推移(Our Word in Dataより).

このようにしてみると、今の米国の流行(400人以上/日の死者数)は依然として日本よりも被害が大きい状況にあると考えられます。しかし、これまでの2千人以上/日の犠牲者を出した4つの大きな波に比べれば、今は減衰状態にあるとみなせるということなのでしょう(死亡率自体は日本よりはるかに下 [図2下])。それが、CDCガイドラインにあるように、COVID-19は依然として公衆衛生上の脅威ではあるが、医学的に意味ある病気のリスクはいま大きく低下していると言わしめているところでしょう。

つまり、米国は、自国内だけで見れば、オミクロン流行になってから確実に被害を最小化し、リスクを低減しているということなのです。これは欧州でも同じで、対策が有効に働き、過去の波に比べればオミクロン流行で確実に被害を低下させているという実績が見えます。その上で、ウィズコロナ戦略を貫いているということです。

ただ、この戦略には、長期コロナ症(long Covid)が社会に及ぼす影響が考慮されていません(米国での長期コロナ症は現役世代だけでも1,600万人)。感染によって起こる労働者不足と生産性の低下は、いま欧米で深刻な問題になっています。世界のウィズコロナ戦略の舵取りの難しい面があります。

2. 日本の対策の失敗

一方で日本はどうでしょうか。形だけのウィズコロナを進める日本は第7波でまたまた医療崩壊を起こし、防疫、公衆衛生対策は完全に失敗という状況です(元々防疫対策は無きに等しいですが)。それはパンデミック全期間における感染全数と死者数の推移を見れば明らかです。

図2に日本と世界平均を比較した流行パターンを示しますが、日本は流行の波を経るごとに被害と犠牲者を増やしていることがよくわかります。現在、世界平均をはるかに上回る勢いで推移しています。流行を追うごとに犠牲者数を減らしている欧米諸国とは、きわめて対照的です。いかに日本が過去に学ばず、有効な対策を打ち出せず、放置してきたかが分かるデータです。

図2. パンデミック期間における日本と世界の感染発生率(人口比感染者数)と死亡率(人口比死亡者数)の推移(Our Word in Dataより).

被害を最小化するためにやるべきこと(検査拡充、無症状者のサーベイランス、医療窓口とアクセスの拡大、コロナ専門病院の設置、感染症法上の運用の効率化、リスクコミュニケーションの徹底など)をほとんどやらず、ほぼ成り行き任せにしてきた政府と政府系専門家の責任が問われるべきでしょう。たとえば米国では、発熱外来ではなくオンライン診療が基本であり、無料検査(専用サイトで無料キット申し込み可能)が充実し、CDCがCOVIDガイドラインを出していますが、日本ではこのような取り組みはありません。

そしていま、専門家は、防疫、公衆衛生、医療提供体制に関する方策の強化に関する提言をすべきなのに、蔓延状態で手に負えなくなり、「医療を守る」名目での医療アクセス制限に言及する始末です。さらに、コロナは「一般の病気」論を持ち出して、国民の自己責任に押し付けようとしています。

偏に、パンデミック当初の対策の不備、準備不足がずうっと尾を引いていて、改善が追いつかないまま第7波に至っていると言えます。政府の力のなさ、登用した専門家集団の力のなさと言ってしまえばそれまでですが、それにしてもお粗末すぎます。そして、為政者や専門家は、感染症法の弾力的運用ができず、蔓延した状態で手に負えなくなると、今度は感染症法の縛りが悪いと見直しを言い出し、責任を転嫁しようとしているわけです(→打つ手なしから出てきた5類相当への話)。

おわりに

米CDCのガイドラインと日本の分科会や専門家有志の提言を比べてみたら、その差がよく分かります。CDCは、COVID-19に対してリスクが高い人は誰かを明確化し、そのリスクを最小化するための公衆衛生学的取り組みを具体的に述べています。ワクチンや治療薬などの医薬的介入に加えて、検査・隔離、換気、マスク着用、無症状者のサーベイランスなどの非医薬的介入の重要性を挙げています。

一方、日本の分科会や専門家有志が提言していることは、現在の医療崩壊に対する対処療法的な方策に終始し、依然として防疫・公衆衛生学的取り組みにおいては全くと言っていいくらい触れていません。すなわち、「外来・入院対応可能な医療機関を拡大」、「重症患者以外は今後保険診療で対応」、「全数把握をやめ重症化懸念患者の情報把握を継続」などを述べているに過ぎず、パンデミック下において脆弱者をどのようにして保護し、被害を最小化するかという観点はありません [3]

その上で、蔓延している状態を感染力の強いウイルス変異体の出現のせいにしたり、コロナを「普通の病気」としてみなすべきとか、国民の一人一人の努力が大事という自己責任論にまで言及する始末です [4](→起こるべくして起こった医療崩壊、そして専門家有志提言の無味乾燥感)。諸外国との被害の推移を見れば、ウイルス変異体のせいにすることはできないはずです。

普通の病気と言ったところで、カゼみたいなものと言ったところで、コロナの性質が変わるわけでもなく、公衆衛生学的に改善されるわけでもなく、被害が少なくなるわけでもありません。逆に彼らの言うことを認めれば、日本は「普通の病気」で、「カゼみたいなもの」で医療崩壊している、ますますんでもない国になります。

ここまで来るともう精神論の世界であり、合理的な具体策を打ち出せない言い訳として、国民の自己責任論になるのだと思います。

このような非常に危なっかしい状況で、日本は「感染対策と経済活動の両立」という単なるスローガンでウィズコロナを進めているのです。土台政府が進める有効な感染対策などありません。第6波に続いて第7波の被害拡大(おそらく最悪の犠牲者数)は、行動制限なしも手伝って、起こるべくして起こったと言うべきでしょう。国民もウィズコロナを勘違いすべきではありません。

ウィズコロナで社会を進める難しさは世界共通です。日本のテレビは、欧米では「マスクもつけていない」、「日常の生活に戻っている」風の伝え方をしますが、COVID流行はまったく終わっていないのです。とはいえ、少なくとも欧米は公衆衛生学的取り組みの基本がある一方で、日本にはそれがなく、被害を拡大しているという状況です。

引用記事

[1] Massetti,, G. M. et al.: Summary of guidance for minimizing the impact of COVID-19 on individual persons, communities, and health care systems — United States, August 2022. MMWR Early Release August 11, 2022. https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/71/wr/mm7133e1.htm

[2] 産經新聞: ファイザー飲み薬、投与敬遠 併用不可多く「活用低調」. Yahoo Japanニュース/ 2022.08.12. https://news.yahoo.co.jp/articles/50c8ad645e8f49f91f7fbed53cc3ba283cebed48

[3] NHK特設サイト「新型コロナウイルス」: 新型コロナ 専門家の有志が今後の医療や保健所の対応で提言. 2022.08.02. https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/medical/detail/detail_255.html

[4] 日刊ゲンダイDIGITAL: 尾身会長がNHKで“職務放棄”の仰天発言!コロナ対策は自助で、犠牲は国民の「許容度」の問題. 2022.07.25. https://news.yahoo.co.jp/articles/bbf6c5a1347727b4ac9001925e3013f8b0bc2f74

引用した拙著ブログ記事

2022年8月12日 COVID-19インパクトの最小化ー米CDCガイドライン

2022年8月8日 起こるべくして起こった医療崩壊、そして専門家有志提言の無味乾燥感

2022年7月15日 打つ手なしから出てきた5類相当への話

                    

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年)

COVID-19インパクトの最小化ー米CDCガイドライン

はじめに

米国CDCは、8月11日(現地時間)、COVID-19感染症対策や公衆衛生に関するガイドラインを改訂しました [1]。日本のメディアは早速これをとりあげていますが [2]、「米CDC、コロナ感染者の接触者は隔離不要、高性能マスク着用に」などと、「軽くなった」ことを強調するようなキャッチーな伝え方で、今ひとつ正確に伝わっていないように思います。ひょっとすると日本国民に誤解を与えるかもしれません。

実際、このガイドライン改訂文 [1] を読んでみると、かなり詳しくまとめられており、ワクチン、投薬、検査、隔離などについて、明確にどうすべきかが指南されています。そしてこのガイドラインのベースには、米国では無料検査が利用できることや遠隔診療、オンライン診療が通常の医療アクセスになっていることがあります。日本が、いま検査や発熱外来でパンクしている状況とは雲泥の差です。また、このような公的なガイドラインは、日本にはありません。

私たち日本人にも参考になることがあると思うので、ここでこのガイドライン改訂文を翻訳して紹介します。

1. 冒頭のまとめ

このガイドラインのタイトルは、"Summary of Guidance for Minimizing the Impact of COVID-19 on Individual Persons, Communities, and Health Care Systems — United States, August 2022"となっています。冒頭には以下の3つのことが並べられています。以下翻訳文です。

●すでにわかっていること

高いレベルの免疫および効果的なCOVID-19の予防・管理ツールの利用により、医学的に意味ある病気のリスクや死亡のリスクが減少している。

●この報告書で何が追加されたのか?

医学的に重要なCOVID-19や死亡を防ぐには、人々は自分自身のリスクを理解し、必要に応じてワクチン、治療薬、非薬物的介入で自己と他人を守る手段を取り、曝露したら検査を受けマスクを着用する。また、症状が出たら検査を受け、感染していたら5日以上隔離しなければならない。

●公衆衛生の実践にはどのような意味があるか?

医学的に重大な疾病、死亡、医療システムの負担は、ワクチン接種と重症化予防のための治療によって減らすことができる。さらに、曝露リスクを減らすための複数の予防法の使用と重症化リスクの高い人の保護に重点を置くことによって補完される。

2. 本文

さらに、改訂本文の冒頭には以下のような図があって、国民がとるべき4つの重要事項が要約されています。1番目として自分のリスクを知ること、2番目として自分自身を守ること、3番目として濃厚接触した場合にとるべき行動、そして4番目として実際に病気になった時、あるいは検査陽性になった時とるべき行動が挙げられています。

タイトルに"severe COVID-19"とあるように、リスクは軽減できるようになったけれども、新型コロナは依然として「深刻な病気」であるというニュアンスになっています。

以下、筆者による翻訳文を載せます。

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COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2が世界的に循環し続ける中、ワクチンや感染による高い免疫レベル、有効な治療法や予防手段の利用により、医学的に重大なCOVID-19疾患(重症急性疾患およびCOVID-19後の症状)のリスク、および関連する入院や死亡のリスクが大幅に低下した。こうした状況により、現在、公衆衛生の活動は、医学的に重大な疾病をさらに減少させるとともに、医療制度への負担を最小限に抑えることに寄与しており、社会・教育・経済活動への障害を軽減する持続可能な方策に焦点を当てることで、COVID-19の個人および社会的健康影響を最小化することが可能になっている。

医学的に意義あるCOVID-19の個人リスクは、SARS-CoV-2に曝露するリスクと、感染した場合に重症化するリスクに依存する。曝露リスクは、換気の改善、屋内でのマスクや呼吸器の使用、検査など、医薬品以外の介入によって軽減することができる。医学的に意義ある病気のリスクは、年齢、障害の状態、基礎疾患によって増加するが、ワクチン接種、過去の感染、またはその両方による免疫、および効果的な生物医学的予防策と治療法を適時行うことによって、かなり軽減される。

CDC の公衆衛生に関する勧告は、科学の発展、生物医学および公衆衛生ツールの利用可能性、および人口における免疫レベルや現在循環しているウイルス変異体などの状況に応じて変化する。CDCは、COVID-19が健康と社会に与える影響を最小限に抑えるための戦略的アプローチを推奨しており、それは重症化を防ぐためのワクチン接種と治療法に依存し、実行可能な場合は多面的予防策を使用し、重症化のリスクが高い人を守ることに特に重点を置いている

医学的に重大な病気のリスクや死亡のリスクを減らすために、免疫不全者に対する曝露前予防、抗ウイルス剤、治療用モノクローナル抗体の使用など、ワクチン接種や治療法へのアクセスを拡大する努力を強化する必要がある。重症化リスクの高い人を守るための努力は、すべての人が個々のリスクを理解するための情報を入手し、ワクチン接種、治療法、検査、その他の予防策を効率的かつ公平に利用できるようにする必要がある。

すなわち、現在、医学的に意義ある病気を予防するための優先事項として、1)自分のリスクを理解し、2)必要に応じてワクチン、投薬、非薬物的介入によって自分と他人を守る手段を講じ、3)曝露した場合は検査を受け、マスクを着用し、4)症状がある場合は検査を受け、感染した場合は5日以上隔離することを確実にすることに重点を置くべきである。

2-1. ワクチンと治療薬 医学的に重要な病気を減らすために

●COVID-19のワクチン接種

COVID-19ワクチンは、重症化および死亡に対する高い防御力を持つが、無症状および軽度の感染に対する防御力はそれほど高くはない。推奨されるすべてのブースターを接種していない場合やワクチン接種を最新にしていない場合、一次接種のみでは、感染および伝播に対する最低限の防御となる。最新のワクチン接種を受けると、直近の接種後、一時的に感染や伝播に対する防御力が高まるが、時間の経過とともに防御力が低下する可能性がある。

COVID-19に関連した入院および死亡の割合は、推奨されるCOVID-19ワクチン接種を受けた成人、特に65歳以上の成人よりもワクチン未接種の成人の方が大幅に高くなっている。また,感染前のワクチン接種がCOVID-19後遺症に対するある程度の予防効果を持つこと、COVID-19後遺症のある人がワクチン接種を受けると症状が軽減する可能性があることを示す証拠も出てきている。

重症化を防ぐためには、接種率の継続的な向上と最新の接種状況の確認が不可欠である。米国では全体的にブースター接種率が低いままであるが、これは懸念すべきことである。ブースター接種がもたらす重症化および死亡のリスクの有意な減少や、ワクチン誘発免疫の衰退に対抗するためのブースターの重要性を考えなければならない。

ワクチン接種の機会を拡大し、公平な接種を促進するための公衆衛生の取り組みにより、ほとんどの人種・民族で一次接種の接種率が同程度になっているが、ブースター接種率には人種・民族間の格差が現れている。地域社会のパートナーシップを支援し、信頼できる情報源を活用することは、根強い格差をなくし、ブースター投与率の公平性を達成するために、教育努力の強化や公平なワクチン接種の普及活動などを通じて継続しなければならない。特に、感染性や免疫侵襲性の高いウイルス変異体を対象としたワクチンについては、すべての人に最新のワクチン接種を促進するための公衆衛生活動を継続する必要がある。

●曝露前予防

重症化に対するCOVID-19ワクチンの効果は、免疫不全者ではそうでない人に比べて低く、免疫不全者でCOVID-19を持っている人は、ワクチン接種の有無にかかわらず集中治療室入院と入院中の死亡のリスクが高くなる。COVID-19ワクチン接種後に十分な免疫反応を示さないかもしれない中等度から重度の免疫不全者、および重度の副反応リスクのためにCOVID-19ワクチン接種が推奨されない人に対しては、エブスヘルド(2種類のモノクローナル抗体 [チキサゲビマブとチルガビマブ] の組み合わせ)による前曝露予防が有用である。感染した場合の早期抗ウイルス治療に加えて、中等度または重度の免疫不全者には、COVID-19の重症化を防ぐために、本人およびその近親者に対する最新のワクチン接種、早期検査、非医薬的介入、および感染した場合の迅速な治療へのアクセスの補助として、COVID-19曝露前予防薬を使用するとよい。

●COVID-19の治療薬

高齢者、ワクチン未接種者、特定の疾患を有する者など、重症化のリスクが高い人のCOVID-19の治療には,抗ウイルス剤(ラゲブリオ[モルヌピラビル]、パクスロビド[ニルマトルビルおよびリトナビル]、ベクルス[レンデシビル])およびモノクローナル抗体(ベブテロビマブ)が利用できる。抗ウイルス剤は、診断後すぐに投与することで、入院や死亡のリスクを低減する。連邦政府のTest to Treatイニシアチブは、SARS-CoV-2検査の結果が陽性であった治療適格者に対して、COVID-19の経口治療を迅速かつ無料で提供するものである。

最近、パクスロビドの処方権限が薬剤師に拡大され、アクセスがさらに容易になる予定である。モノクローナル抗体療法を受ける場合の人種・民族差、および地域社会の社会的脆弱性による経口抗ウイルス剤処方の調剤率の格差を減らすための継続した取り組みが必要である。

2-2. COVID-19予防戦略

●COVID-19の予防活動の指針となるCOVID-19地域社会のモニタリング

人々は、地域社会におけるCOVID-19の現在の影響レベルに関する情報を利用することで、自分自身や家族の重症化リスク、リスク耐性、および環境特有の要因に基づいて、どの予防行動をいつ(常時または特定の時間に)行うかを決定することができる。

CDCの「COVID-19地域社会レベル」(COVID-19 Community Levels)は、COVID-19が地域社会に及ぼす現在の影響を反映しており、過去一定期間の入院率、病院のベッド占有率、COVID-19発生率に基づいて、COVID-19関連の深刻度の増加が見込まれる地理的地域を特定している。 COVID-19地域レベルに基づく予防勧告には、医学的に重大な疾病を減らし、医療制度への負担を抑えるという明確な目標がある。

すべてのCOVID-19地域レベル(低、中、高)において強調すべき推奨事項は、ワクチン接種の最新化、換気の改善、有症者・曝露者の検査、感染者の隔離である。COVID-19地域レベル(中)では、推奨される戦略として、重症化するリスクの高い人のための保護を追加している(例えば、より高いレベルの着用者保護を提供するマスクや呼吸器の使用)。

SARS-CoV-2の流行が続く中、ある管轄区域のCOVID-19地域社会レベルの変化は、個人の重症化リスク、または家庭や社会的接触のリスクに基づき、いくつかの予防戦略の使用をいつ中止または増加すべきかを知らせるのに役立っている。COVID-19 地域社会レベルは、公衆衛生担当者や管轄区域が、公衆衛生上の介入の必要性を評価するために地域の情報を組み合わせることによって、地域の状況に基づいて必要に応じて使用し、適応させるための幅広い枠組みを提供するものである。

●非医薬的介入

複数の予防戦略を実施することは、SARS-CoV-2への曝露から個人と地域社会を守り、感染リスクを減らすことで医学的に重大な病気と死亡のリスクを減らすのに役立つ。複数の非医薬的な予防的介入の実施は、特にCOVID-19地域社会レベルが増加する場合や重症化リスクの高い人々の場合で、ワクチンや治療薬の使用を補完することができる。

CDCのCOVID-19予防勧告は、もはや人のワクチン接種状況による区別はない。これは、一般に軽症ではあるが、ブレイクスルー感染が起こるためであり、また、COVID-19に感染したワクチン未接種の人は、以前の感染から重症化に対してある程度の防御があるためである。すべてのCOVID-19地域社会レベルで推奨される戦略に加えて、個々の人が医学的に重大な病気にかかるリスクを理解するための教育やメッセージは、リスクに基づく予防戦略の推奨を補うものである。

●検査

診断のための検査によって感染を早期に特定することで、感染者はウイルスを伝播するリスクを減らすための行動をとることができる。もし、臨床的に判断されれば、重症化や死亡のリスクを減らすために治療を受けることができる。すべての人は、症状がある場合、またはCOVID-19に感染している人がいることが分かっている場合、あるいはその疑いがある場合に、実際に感染しているかどうか検査を受けるべきである。

曝露が知られていない無症状の人のスクリーニング検査をどこで実施するかを検討する場合、公衆衛生当局は、長期介護施設、ホームレスシェルター、矯正施設などの高リスクの集合環境、および医療へのアクセスが制限された集合住宅を含む職場環境を、優先的に検討するであろう。これらの種類の高リスクの集合環境におけるスクリーニング検査は、無症状の感染者を特定することによって、有症者の診断検査を補完できる可能性がある。

スクリーニング検査は、ワクチン接種の有無にかかわらず、すべての人を対象とする必要がある。スクリーニング検査は、特にCOVID-19の有病率が低い場合、一般的なコミュニティ環境では費用対効果が低くなる可能性がある。

●隔離

症状のある人または感染者は速やかに隔離すべきである。感染者は5日間以上隔離し、他の人と一緒にいる必要がある場合は、密着性の高品質のマスクまたは呼吸器を着用する必要がある。感染者は5日後、薬を使わずに24時間以上熱がなく、他のすべての症状が改善した場合にのみ隔離を終了することができ、10日目までは家庭や公共の場で他人のそばでマスクや呼吸器を着用し続ける必要がある。

抗原検査が可能で、マスク着用中止の判断に検査を使用する人は、少なくとも6日目まで最初の検査を受けるのを待ち、解熱剤を使用せずに24時間以上熱がなく、他のすべての症状が改善される必要がある。検査間隔を48時間以上空けて2回の抗原検査を行うと、検査感度が向上し、より信頼性の高い情報を得ることができる。マスク着用を中止するためには、2回の検査結果が連続して陰性である必要がある。どちらかの検査結果が陽性の場合、周囲に対してマスクを着用し続け、2回連続して陰性となるまで48時間ごとに検査を継続する必要がある。

SARS-CoV-2への曝露管理

CDC は現在、医療施設および特定の高リスクの集合施設においてのみ、症例調査および接触者追跡を推奨している。その他の状況では、公衆衛生の取り組みは、症例通知および濃厚接触者者に検査を受けるための情報およびリソースを提供することに集中できる。最近、感染者と確認された、または疑われる接触を受けた人は、公共の場で屋内にいるとき、周囲に対して10日間マスクを着用し、接触後5日以上空けて(または症状がある場合はより早く)、ワクチン接種状況にかかわらず検査を受けるべきである。また、抗SARS-CoV-2血清有病率の高い人口レベルに照らし合わせて、また社会的・経済的影響を抑える意味からも、濃厚接触者の隔離はもはや推奨されない。これはワクチン接種の有無にも関係ない。

2-3. 重症化リスクが最も高い人の保護

高齢、障害、中等度または重度の免疫不全、その他の基礎疾患(妊娠を含む)などでリスクが特に高い人においては、医学的に重大な病気と死亡のリスクを大幅に減らすために、複数の非薬物的および医学的予防策が利用可能である。ワクチン接種を常に最新の状態に保つことを推奨することに加え、高リスクの人を保護するための公衆衛生戦略には、着用の保護を強化するマスクまたは呼吸器(すなわち、N95/KN95などの特殊なフィルター付きマスク)の使用、曝露前予防措置(たとえば免疫不全の人)、抗ウイルス薬の早期入手と使用、が含まれる。

COVID-19 地域社会レベルが中、高の場合、重症化するリスクの高い人とその接触者は、曝露と感染のリスクを減らすために、ろ過性能と装着性に優れる保護性能が高いマスクや呼吸器の着用を検討する必要がある。高リスクの人と家庭内または社会的に接触する人は、中・高COVID-19地域社会レベルの場合、接触前に感染を検出するための自己検査を考慮すべきである。

公衆衛生の取り組みは、曝露前予防措置、検査、経口抗ウイルス剤へのアクセスを拡大するために、重症化リスクの高いすべての集団に意図的に働きかけ、健康の公平性を促進する必要がある。公衆衛生専門家および組織は、疾病管理努力を補完し、重症化または死亡リスクが最も高い人々を保護する予防戦略を強化または追加するかどうかを決定する際に、その地域または設定された集団の特徴を考慮すべきである。また、公衆衛生に関するコミュニケーションやメッセージを強化することは、重症化に対する個人のリスクレベルを評価し、その知識に基づいて、自分自身と周囲の人々を守るための予防行動を選択するのに役立つ。

3. 考察

COVID-19は、依然として公衆衛生上の脅威である。しかし、ワクチンおよび感染によって誘導される高いレベルの免疫と、医学的および非医学的介入が可能であることから、COVID-19における医学的に意義ある病気のリスク、および入院、死亡のリスクは大幅に低下している。

SARS-CoV-2の感染が続く中、医学的に重大な病気、死亡、医療システムの負担を減らすことに現在焦点を当てているが、これは現在の一連の有効な公衆衛生手段が広く利用可能であることに支えられた適切かつ達成可能な目標である。予防戦略の転換を必要とする新たなウイルス変異体の迅速な特定には、その検出、監視、特徴の解明が必須である。COVID-19の影響を軽減するための行動を、長期的に持続可能な日常業務に組み込むことは、社会と公衆衛生にとって不可欠である。

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翻訳文は以上です。

おわりに

日本のメディアが紹介していた「濃厚接触者は隔離必要なし」は、上記したように正確に言えば、10日間マスクを着用し、濃厚接触後5日以上空けてワクチン接種状況にかかわらず検査を受けるべき、発症した場合にはより早く検査しろというものです。さらにここのパラグラフでは、日本のメディアが伝えていた「高性能マスク」という記述は見当たらず、単にマスクとなっています。高性能マスクの着用は、高リスクの人に接触する場合やCOVID-19地域社会レベルの中以上に絡めて示唆されています。

この改訂ガイドラインには、とにかく、誰がリスクが高いか、それに対してどのように保護をすべきかというパンデミック対策の基本が念入りに記述されており、かつ個人が状況に応じてどのような行動をとるべきかが具体的に示されています。日本の感染対策にみられない記述としては、地域社会レベルに応じた公衆衛生対策の重要性、無症状者のサーベイランスの重要性などです。そして、リスク低減はできるが、COVID-19が依然として脅威であるという、病気に対する見解が示されています。

ただ、地域社会におけるCOVID-19の現在の影響レベルに関する情報を利用することで、「自分自身が予防行動をどのようにするかを決定できる」と述べていることについては、結局は「市民の自己責任」だと思われる部分もあります。

翻って日本はどうでしょうか。政府系専門家からは「普通の病気」、「季節性インフルエンザ並み」、「一般人が自分で判断しろ」、「自主的に努力しろ」など、観念論ともいうべきことばかり聞こえてきて、肝心の具体的感染対策、公衆衛生対策が見えてきません。このあたりが、やたら感染者を増やし、BA.5流行でのリアルタイムでの人口比死亡率で米国を上回った結果に現れているのではないかと思います。

引用文献・記事

[1] Massetti,, G. M. et al.: Summary of guidance for minimizing the impact of COVID-19 on individual persons, communities, and health care systems — United States, August 2022. MMWR Early Release August 11, 2022. https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/71/wr/mm7133e1.htm

[2] NHK NEWS WEB: 米CDC コロナ感染者の接触者は隔離不要 高性能マスク着用に. 2022.08.12. https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220812/k10013766281000.html

                        

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年)

起こるべくして起こった医療崩壊、そして専門家有志提言の無味乾燥感

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年)

はじめに

全国で感染拡大が止まらない新型コロナウイルスオミクロン変異体亜系統BA.5)の第7波ですが、もはや検査による患者確定が追いつかず、頭打ちの様相を呈してきました。欧米先進諸国は全数把握をやめていますので、もはや感染者数では比較しようがないですが、まだ統計データとして比較可能な新規死亡者数では、米国を除けば日本が最悪になろうとしています。お盆の頃には、死亡率(人口比死者数)で日本は世界トップに躍り出るでしょう。

このような中、先月終わりに、全国知事会は、新型コロナの感染症法上の2類相当から5類へ見直しを求めました [1]。8月2日には、尾見茂氏を含む専門家有志による新型コロナウイルス感染症に対する出口戦略の提⾔がありました。そして、日本感染症学会、日本臨床救急医学会、日本救急医学会、ニホンプライマリ・ケア連合学会による、いわゆる「医療を守る」ための4学会声明が出されました(図1)。

私はこれらの動きに対して、これまでの感染対策の総括がなく、国民の自己責任を強いる感が強い、その場しのぎおよび先送りの提言であるとして、先のブログで批判しました(→ゾンビのように復活した「37℃, 4日以上」のなぜ?)。政府や政府周辺の専門家はこれまでの流行波の経験を対策に生かせず、ほぼ成り行き任せでした。いま起こっている医療崩壊は、起こるべくして起こったと言えるでしょう。

図1. 医療を守るための4学会声明(日本感染症学会HPより).

専門家有志の提言については BuzzFeed Japan Medical が記事にしています [2, 3]。このブログでは、医療崩壊に至る感染対策のプロセスの問題点を挙げながら、BuzzFeedの記事に対しての感想を述べ、専門家の提言の意図について考えたいと思います。

1. 何が問題か

いま日本では、感染拡大とともに医療崩壊が起こっています。この医療崩壊にまで至った新型コロナ感染症対策の問題点を私なりにまとめたのが以下の6つです。

-------------------------

1. 医療アクセスの狭さ

2. 感染症対応病院(発熱外来)の不足

3. 検査資源不足

4. 流行把握手法の煩雑性・非効率性

5. パンデミック下でのエンデミック対応

6. 防疫対策の不備

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医療崩壊の原因は、単純に言えば、対応可能な病床数以上に感染者が増えてしまったことにあるわけですが、その過程には基本防疫対策の弱さ、医療提供の仕組みの欠陥、医療マネージメントの拙さ、そして防疫・検査・医療についてのロジスティクスの欠落が関わっています。国がコロナ専門病院を設置できず、感染症診療の窓口を広げられず、保健所が入院調整しているような段階で、もう医療崩壊は始まっているようなものです。

1.の「医療アクセスシステムの狭さ」というのは、新型コロナについては簡単に医療にアクセスできない状態のことです。国民皆保険と言いながら、いま発熱したからといって簡単に一般病院で診てもらえるわけではありません。多くが受診拒否されます。

欧州のようなかかりつけ医制度も普及しておらず、米国で行なわれているような感染症用の遠隔診療もほとんど実施されていません。遠隔診療は、発熱外来を設ける必要がない点できわめて有効ですが、ある程度のICT環境が要求され、診療報酬も安くなりますので、日本での導入はハードルが高いのかもしれません。とはいえ、スマートフォンを活用したオンライン診療などは簡単に整備できるはずでしょう。

軽症の場合は、自宅療養・自主隔離というのは当初からの世界標準の措置です。とはいえ、調子が悪い場合はいつでも電話でかかりつけ医や遠隔診療医に相談できるというのが欧米の医療アクセスシステムです。日本はここがきわめて脆弱なのです。

そして、今極めつけが救急医療外来にアクセスできないことです。救急依頼しても繋がらない、救急車で運んでも病院が見つからない、入院できないという、救急医療崩壊が起こっています。これは実働可能な病床数以上に感染患者が急増したこと、軽症・中等症患者の医療マネージメントの拙さ、確保病床数と実働可能な病床数とのギャップによる情報バイアスなどが影響しています。

それにしても、国が直轄する国立病院、労災病院地域医療機能推進機構病院(理事長は尾見茂氏)、国立大学付属病院の病床合計数は11万床を超えますが、この病床が必ずしもうまく使えているとは思えません。国はこれらの中からコロナ専門病院を選定して、コロナ病床に転換することはできたはずですが、なぜそうしなかったのでしょう。昨年10月11日開催の財政制度等審議会の資料によれば、国立病院のうちコロナ患者を受け入れていない病院が46あると言います [4]

2.の「感染症対応病院(発熱外来)の不足」というのは、1.とも関連しますが、いま発熱外来が全医療機関の35%にしかありません。圧倒的に不足していて、なかなか予約がとれないという問題を引き起こしています。発熱外来を増やそうにも、一般病院の多くがそれに設備上あるいは技術的に対応できないという現状があります。すなわち、1、2の問題とも、新型コロナの感染症法上の分類を変えたとしても容易に改善できるものではありません。まずは、遠隔診療、オンライン診療を増やすことが先決でしょう。

3.の「検査資源不足」はパンデミック当初からの課題です。厚生労働省や周辺感染症コミュニティによるPCR検査抑制論がずうっと尾を引いていて、いまだに検査キットが足りない、検査が足りないという事態になっています。先進国の中ではきわめて珍しい事態です。「医療を守る」という現場の必死な思いで緊急声明を出した4学会ですが、その実、軽症者には検査は必要ないと主張していた日本感染症学会をはじめとする関連学会が自ら招いた事態とも言え、その責任は重いです。

もともとは、2009年のパンデミック以後に検査充実を怠った厚生労働省に責任があるわけですが、そこから今回のパンデミックでは不足する検査資源を医療に集中させ、市中検査や社会検査にそれが広がることを防ぐために、PCR検査の精度などを盾にしたPCR検査抑制論を展開したわけです。このPCR検査を貶す風潮は周辺の医療クラスターや社会に蔓延し、日本の防疫対策や公衆衛生の取り組みにブレーキをかける役目を果たしました。市中PCR検査は「野良検査」とも揶揄されました。

その検査抑制の旗ふり役だった厚労省が、今回の爆発的感染にはどうにもならなくなり、PCRより使いやすいけれでもはるかに精度が悪い迅速抗原検査(RAT)キットを大量に使う羽目になりました。神奈川県のように自主療養制度を設け、認証されていないRATキットを自主検査に使ってもよいとする自治体まで現れています。

4.の「流行把握手法の煩雑性・非効率性」というのは、全数把握が手がかかるシステムであったということです。新型コロナはいま感染法上の2類相当の扱いですから、検査陽性になったら医師が判定して直ちに厚労省に報告する必要があります。当初ファックスを使って報告という仕事を、2年前にHER-SYS(ハーシス)への入力に変更したまではよかったのですが、多数の入力項目を医師が入力して報告ということに限定したため、感染者の急増には物理的に対応困難なものになりました。

全数把握という目的なら入力項目を大幅に簡略化し、国民健康保険番号で管理すれば、基本は検査場所、検査日、検査結果の入力だけでいいはずです。そして、民間検査も含めて検査陽性を下した現場で直接、リアルタイムに入力し、かつG-MYSとも共有化して入力という作戦も考えられたはずです(→コロナ禍の社会政策としてPCR検査)。診療に忙殺される医師の仕事量の負担は、かなり軽減することができるでしょう。

このような対応は2年前にできたはずです。さらに、流行把握の方法としてはるかに簡便な下水ウイルス監視もその当時から導入が可能だったはずです。これらが、いまだに実施されていないのは、どのような理由によるものでしょうか。

5.の「パンデミック下でのエンデミック対応」というのは、これまで何度となく指摘していますが(コロナ禍の社会政策としてPCR検査「コロナが5類引き下げになったら」で想像できることゾンビのように復活した「37℃, 4日以上」のなぜ?)、日本の感染症対策が「患者と医療」という面に意識が集中していて、この感染症の高い伝播力とともに起きる社会かく乱が置き去りにされていることです。

新型コロナもオミクロン変異体になり、ワクチン接種も進んで、重症化する患者が以前と比べて少なくなりました。医療という面からは、COVID-19も他の病気も同じで、リスクが高い患者の治療を優先するということはむしろ当然です。ところが、医療従事者はややもすると、ここだけを強調しがちになり、時に季節性インフルエンザと同じ対応でよいということさえも主張しますが、病院外では(病院内でも)パンデミック感染症であることは変わりないのです。

オミクロン変異体の基本再生産数(R0)は、平均で9.5 [5] あるいは6-10 [6] と報告されており、季節性インフルエンザの比ではありません(表1)。BA.5はさらに感染力はオミクロンBA.1に対して1.4倍になっていると言われています。

表1. 主なウイルス病原体の基本再生産数(文献 [5] に基づいて作表)

しかも若者の感染者を中心に無症状、軽症が大部分であり、一方で高齢者に対しては重症化、死亡リスクが高くなり(60歳以上では季節性インフルエンザの3倍、致死率は10倍)、かなりの確率で長期コロナ症(long Covid)を生じるという、多面的な病態を示します。これらの中で、無症候性感染者や発症前感染者が無自覚のまま他者にうつすことであっという間に感染拡大し、社会をかく乱するという特徴があります。これらがエンデミックである季節性インフルエンザとは大きく異なるところです。

そして、従前の重症者の定義(人工呼吸器およびECMO装着患者)に拘泥するあまり、重症者が少ないという認識のままに、多数の基礎疾患を持つ人や免疫不全者が軽症からいきなり全身症状を起こして亡くなるという状況を生んでしまいました。

6.の「防疫対策が欠落」は、事前流行把握、検査・隔離、行動制限、公衆衛生、予防接種などに関わる対策が不備だということです。

事前流行把握(レーダーの役目)として下水ウイルス監視がありますが、これは日本ではやられていません(一部流行予測に使われているのみ)。検査・隔離は、検査不足、トレーシング不足で十分に機能してこなかったのは周知の事実です。蔓延してからの患者確定にさえ今検査不足です。行動制限に関しては、特にまん延防止措置の発出がタイミングとしても効果的であったかどうかは疑問が残ります。公衆衛生については、厚労省や政府系専門家は長らく空気感染を認めず、換気対策が遅れました。ワクチン接種については初期接種が遅れ、ブースター以降は必ずしも順調にいったとは言えないでしょう。

2. 専門家有志の出口戦略

上記のように、8月2日、専門家有志は新型コロナの出口戦略を提⾔しました。この提言を中心になってまとめたのが神奈川県医療危機対策統括官の阿南英明医師です。

BuzzFeed Japan Medical は、この提言の狙いと国民に訴えたいことについて、阿南氏に直接インタビューした内容について記事にしています [2, 3]。この記事には、私個人が思うに、疑問や問題となるような発言や見解が満載されています。このブログでは、この記事のいくつかの部分を引用しながら、そのどこが問題かを指摘したいと思います。

まず、記事 [2] の最初に、この阿南提言の核心とも思われることが書いてあります(引用1)。

引用1

特別扱いされてきた新型コロナ感染症を、一般の病気として診られるような目標を設定し、そこに至るまでの道筋を示したこの提言。

同時に、過去最大規模になった目の前の感染者数を抑え込むために、国民が主体的に感染対策に取り組むよう促しています。

ここは重要なところで、「COVID-19を一般の病気として診る」、そして「国民が主体的に感染対策に取り組むように促す」が提言の性質を言い表しています。つまり、パンデミックの病気を「一般の病気」という位置づけることで、これまで政府系専門家が失敗を重ねて来た(パンデミック下で「患者と医療」重点で対応してきた)ことの上塗りのような感じになっていることです。いま急拡大しているパンデミック病の対応に四苦八苦しているのに、なぜエンデミック対応にしなければならないのか、ピントが完全にずれています。

そこには、誰が高リスクなのか、どのような状態がリスクが高いのか、そしてどのようにして(いわば不平等)リスクを最小化するかパンデミック対応の視点が欠けています。「一般の病気」とすることで、コロナのリスクや被害実態を希釈し、責任を逃れようという意図さえ見えます。

いい例が、新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾見茂会長が事あるごとに言ってきた「感染者数よりも重症者数が重要」という言葉です。人工呼吸器とECMO装着という当初の重症者の定義を変更しないままこの言葉を言い続けるのは詐欺的とさえ思えることであり、オミクロン流行での真の重症者は誰かが見逃されています。そして、感染症対策を国民の自己責任として押し付けるような提言になっています、これは先日の尾見会長の発言でも一端はうかがうことはできました。

次の引用2 [2] では「ウイルスとの共存」、「コロナも数ある病気の一つ」というキーになるフレーズが出てきます。

引用2

着地させると言っても、ウイルスが消えるわけではありません。ウイルスと共存しなければいけません。

今、コロナとコロナ以外の病気とに2分されている形になっていますが、コロナも数ある病気の一つにしていかなければいけません。私たちが日々闘っている病気や怪我の一つにいかに位置付けるか、というのが着地点です。

阿南氏の「ウイルスと共存」という言葉には、(メディアもよくこの言葉を使うのですが)私は違和感をもちます。消えるわけではないがいなくなってほしいウイルスに対して「共存しなければならない」はないでしょう。せいぜい「耐えていかなければならない」という言い方が適切だと思います。世界でも「ウイルスと共存」というフレーズを使うのは日本ぐらいなものです。ウィズコロナを誤解していると思います。

「コロナも数ある病気の一つしていかなければならない」というのは、上述したように、全くエンデミックの発想であり、依然パンデミックの病気であることを薄める発言です。SARS-CoV-2(特にいまのRA.5)は、高い基本再生産数をもつ(表1)リスクグループ3に分類されるウイルスであり、あっという間に社会に伝播・蔓延し、高齢者や基礎疾患を持つ人にとっては危険であるという認識に欠けていると思います。

この感染症を、まだ「数ある病気の一つにはできない」理由として、いま発熱外来を別につくって限定的に対応している現状が挙げられます。数ある病気の一つとなるためには、いま全く無防備な状態にある日本が防疫、医療システムにおいて強化されることが必要です。そして、エンデミックにするためには、ウイルスのリスクグループ分類が一段階引き下げられ、発熱外来仕様でない病院でも診ることのできる状態になることが必要です。それはおそらく、いつになるかわかりませんが、世界保健機構に(WHO)によってパンデミック終了宣言がなされた後です。

引用3

日常の病気になるということは、社会の中に浸透するということです。今までの仕組みは、基本的にコロナウイルスを特別なものと位置付けて封じ込めることを前提としたものです。これまではコロナに対応する医療機関も限局していました。保健所もコロナだけ特別に調べていました。

この病気が社会に蔓延することを前提としていなかったのです。でも第7波では蔓延し、完全に社会の中に入り込みました。多い時だからこそ、今までやれてきたことができなくなっている。仕組みが現状に合っていないのですから変えるべき時なのです。

引用3 [2] の発言は、「日常の病気」という言葉が、エンデミックとパンデミックを混同した状態で使われています。たとえば、季節性インフルエンザはエンデミックあり、社会に浸透した病気ですが、社会と病気は平衡状態にあり、社会がかく乱されることはありません。一方、新型コロナは、全域的に鋭利的に感染が続発するパンデミックであり、この場合の蔓延は、異常性が拡大・継続している状態です。

だから、新型コロナを特別な病気として対応してきたわけですが、蔓延して対応できなくなったもの、医療崩壊させるようなものを「日常の病気」になったとするのは意味不明です。パンデミックは蔓延するものなのに、蔓延することを前提としていなかったというのも変です。「仕組みが現状に合っていないのですから変えるべき」という意味が、パンデミック対応の運用がこれ以上できなくなったというのならわかりますが、阿南氏が言っていることは、無理にエンデミック仕様に変えるいうことなのでしょう。

次の引用4 [2] では、コロナ死亡についての見解がみられます。

引用4

僕は元々、死者数を抑えることを目標とすることには賛成していません。それよりは、どういう死に方がいけないのかを考えなければいけません。

第5波までと、6波以降で圧倒的に変わったことは、若い人が死ななくなったことです。高齢者もそれまでに比較して死亡する確率は格段に下がりました。ワクチンの効果や種々の治療薬が出ているからです。感染を防ぐことはできませんが、重症化を防ぐことはできています。

それを前提として、感染者は適切なケアさえ受けられたら多くの死を回避できます。高齢者はコロナで重症肺炎になるのではなく、飲食ができなくなるなど衰弱して命を奪われる。必要なのは1本の点滴など基本的な医療なのです。

死者数を抑えることを目標とすることには賛成していない」という発言には驚きです。どういう死に方にせよ、死んだらダメでしょう。「重症肺炎になるのではないので、適切なケアで死を回避できる」とも話していますが、それができずに、今100人、200人単位で死亡者が出ている現実に目を向けるべきです。

引用5 [2] ではウィズコロナ戦略の核心部分に触れています。すなわち、コロナ被害についての国民の合意形成に関することです。

引用5

感染が広がってもいい、なんて誰も思っていません。でも社会経済も回さなければいけない。両方正義なんです。最終決定するのは国民です。

国民が決定するためには、政府が情報公開をしなければいけません。都合の悪い部分を隠しているでしょう? 社会経済を回せば、死ぬ人が増えるということを国民に伝えていないじゃないか、と示しているのです。

・・・・・・・・・・・・

亡くなる人は必ず出ます。ただし、医療を提供しても亡くなったのか、医療を提供できなかったから亡くなったのか、では大きな差があります。医療ひっ迫が起きないようにしながら、社会を回そうとする。その絶妙なバランスを取ろうとしているのです。

弱者切り捨てはしない、という原則は掲げておかなければいけません。しかし、誰も死なない社会とは違うのです。バランスを探ることが必要です。それが私たちの生きている社会です。

ただ、この部分は敢えていう必要のない部分があるように思えます。「両方正義」とか「亡くなる人は必ず出ます」とか「誰も死なない社会とは違うのです」というのは、医療の専門家が言うことではないでしょう。死人がでないなどとは誰も思ってはいません。ウィズコロナはある程度の犠牲者を容認しながら経済を回す戦略ですが、その合意形成は政治家が国民向けにいうことであり、医療専門家がこれまでの対策の不備の総括なしに、「それが私たちの生きている社会」と宣うのは、むしろ開き直りに聞こえてしまいます。精神論に傾き過ぎた主張だと思います。

次の引用6 [2] は、聞き手の岩永氏が、感染拡大を抑制する手だてとして「元栓を締める」と訊いたことに対する阿南氏の応えです。

引用6

オミクロンで「元栓」って何でしょうか? 日本ではロックダウンできるんですか? もしできたとしても、別の意味で多くの人が死ぬかもしれません。

オミクロンで人類とウイルスとの関係は変わりました。ものすごい感染力になり、ちょっとやそっとでは止められません。そこを前提とした提言です。社会経済を止めたら感染拡大が止まると思っている医療者はほとんどいないと思います。

阿南氏は、ここで、ロックダウンをはじめとする行動規制を否定しています。そのために「別の意味で多くの人が死ぬかもしれません」というフレーズを引用しています。オミクロンの感染力の高さから感染拡大はとめられないとも言っています。

つまり、これはパンデミックであることを言い換えたにすぎません。コロナを一般の病気の一つとみなすべきという見解とは、明らかに矛盾します。パンデミックの病気を一般の病気として扱うならそれこそカオスです。経済活動推進の中、一般の病気に仕立て上げることで、対策として何もする必要がない、後は自己責任で対処せよということなのでしょう。

記事 [3] では、「現在は特別扱いされている新型コロナウイルスを、通常の医療や保健体制に落とし込んでいくために、5つのテーマでの取り扱いの変更を提案しています」と阿南提言が紹介されていますが、ここに、この提言・記事の勘違いが凝縮されています。

つまり、現在までの日本の感染症対策(防疫、医療提供、社会経済活動、市民生活)の不備や欠陥を総括し、改善することなしに、新型コロナを通常の医療や保健体制に落とし込んでいくことはできないはずなのに、そこをスキップして新しい目標へ話が飛んでいるのです。具体的に言えば、私が上記した、新型コロナ感染症対策の6つの問題点については、この阿南提言やBuzzFeed記事では全くと言っていい程言及されていません。これまでの総括がまるでないのです。そして、提言されている新しい目標も、感染制御の戦略は何もなく、自己責任でやりなさいということになっています。

これは歴代の自民党政権がやっているやり方と同じです。従来の問題点を洗い出し、検証・総括することは一切やらず、新しい目標を設定して、それまでの問題を帳消しにするやり方です(「二度としません、これからはこのようにします」という対処の仕方です)。過去の歴史を振り返ることができない者は、未来の道標を立てることもできないでしょう。

おわりにーウィズコロナと商業主義

ウィズコロナで経済推進を行なっている先進諸国では、いずれもCOVID-19の死亡者は増えているか、下げ止まりのままです。ウィズコロナにはゼロコロナのような感染制御の戦略はなく、COVID-19が収まることを想定していませんし(いかに被害を最小化するかという目標)、犠牲者が出ることも容認しています。そして、為政者自身は、国民向けに、COVID-19をまるでエンデミックのように扱っているのが現状です。一方、専門当局は、COVID-19は依然として脅威であるという認識に基づいて、実際の医薬的、非医薬的対策は日本と比較にならない程入念に練っています。

ところが、これに表面的に習っているのが、上記の専門家有志の提言とも言えます。つまり、各国の担当部局による対策の詳細や目標を吟味することなく、新型コロナは季節性インフルエンザ並みという勘違いのまま対策としては何もせず(むしろ何もできないまま)、国民の努力に任せるというものです。無味乾燥感満載の提言です。

話は飛躍しますが、私はこれを見ていてずうっと腑に落ちない思いを抱いています。妄想に近いものですが、各国は国民世論や経済界の社会経済活動を進めたいという希望(欲望に近い)をいいことに、被害の最小化の対策はとるけれども、ワザとパンデミックをそのままにしているのではないかという疑念が出てくるのです。なぜなら、新型コロナパンデミックは、製薬メーカーおよび利権で共有する専門家、政治家にとっては千載一隅であり、新しいワクチンや治療薬で大儲けできるからであり、被害の最小化のために、為政者は最大限これらを利用するからです。

いま大規模に用いられているmRNAワクチンや組換えタンパクワクチンは全く新しいものです。治療薬として使用されている抗ウイルス剤も新しい薬で金になります。

一方で、COVID-19の予防に有効と言われた既存薬イベルメクチンは、ワクチン推進の担当当局や専門家によって徹底的にデマ扱いをされ、異常なまでの貶される状態になっています。まるで儲からない特効薬が出てきたら困るような..?

抵抗ウイルス薬の専門家でであるアンドリュー・ヒル(Andrew Hill、リバプール大学主席リサーチフェロー)らによるイベルメクチンのメタアナリシスの結果は、当初圧倒的な有効性を示しました。にもかかわらず、同著者らによるその総説論文はなぜか不可解な結論に導かれており、後に論文撤回されています [7]。アンドリュー・ヒルとテス・ロリー(Tess Lawrie、WHOコンサルタント)の個人的なZoomによるやり取りは、イベルメクチンに対して政治的な圧力があったことを匂わせるのに十分です [8]

従前からあるPCR検査は安価で提供できるためにさほど儲けにはなりませんが、RATキットは全く新規の検査資源になります。PCR検査をあれほど貶していた専門家や医者が、精度で劣るRATについては口を噤み、民間検査を野良検査とまで揶揄していた人たちが、RATによる自主検査については一言も文句を言いません。不思議です。

引用文献・記事

[1] NHK政治マガジン: 全国知事会議 コロナ 感染症法上2類相当から5類見直しの意見. 2022.07.28. https://www.nhk.or.jp/politics/articles/lastweek/86903.html

[2] 岩永直子: 「社会経済回して感染者・死者ゼロはファンタジー」どんな社会を選ぶのか、情報を透明にしてオープンな議論を. BuzzFeed 2022.08.06. https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/covid-19-anan-paper-1?bfsource=relatedmanual

[3] 岩永直子:「政府は隠さないで」 新型コロナを普通の病気にするために専門家が提案すること. BuzzFeed 2022.08.06. https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/covid-19-anan-paper-2?utm_source=dynamic&utm_campaign=bfsharetwitter

[4] 松山幸宏: 広域医療圏で病床・人材確保 コロナ「第6波」に備える. 2022.01.12. キャノングローバル戦略研究所. https://cigs.canon/article/20220112_6478.html

[5] Liu, Y. and Rocklöv, J.: The effective reproductive number of the Omicron variant of SARS-CoV-2 is several times relative to Delta. J Travel Med. 2022 29, taac037 (2022). https://doi.org/10.1093/jtm/taac037

[6] Leung, G. M.: Omicron is the most contagious in a 100-Year pandemic. February 1, 2022 (in Chinese). http://www.mingshengbao.com/van/article.php?aid=803103

[7] Hill, A. et al.: Retracted: Meta-analysis of Randomized Trials of Ivermectin to Treat SARS-CoV-2 Infection. Open Forum Infect. Dis. 8, ofab358, https://doi.org/10.1093/ofid/ofab358

[8] ym_damselflyのチャンネル: 日本語字幕】元WHOコンサルタントがイベルメクチンの削除の謎を暴露 FORMER W.H.O. CONSULTANT EXPOSES TAKEDOWN OF IVERMECTIN. 2022.03.27. https://rumble.com/vyozf8-former-w.h.o.-consultant-exposes-takedown-of-ivermectin.html 

引用した拙著ブログ記事

2022年8月3日 ゾンビのように復活した「37℃, 4日以上」のなぜ?

2022年7月31日 「コロナが5類引き下げになったら」で想像できること

2020年9月25日 コロナ禍の社会政策としてPCR検査

                     

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年)

ゾンビのように復活した「37℃, 4日以上」のなぜ?

はじめに

パンデミックが始まった当初に政府や専門家から出された悪名高い、いわゆる「37℃, 4日間」の受診の目安は、まだ記憶に新しいところです(→新型コロナ受診の見直しについて思うこと)。私は、コロナパンデミックの間、このフレーズを聞くことは二度とないだろうと思っていましたが、驚くことに昨日また耳にしてしまいました。

8月2日、日本感染症学会、日本救急学会、日本臨床救急学会、日本プライマリ・ケア学会の4学会が緊急声明を出し、37℃, 4日間」の受診の目安を復活させたのです [1]。私はこれを聞いて、この内容とともに、日本のこれまでに新型コロナウイルス感染症COVID-19)対策を担ってきた専門家にもあらためて怒りが込み上げてくるのを抑えきれず、すぐにツイッター上で批判しました。

今朝のテレビ情報番組 [2] で、この4学会の声明と同日に行なわれた専門家有志の提言・記者会見を紹介していましたので、このブログ記事で紹介しながら、日本の感染症対策の問題点を考えたいと思います。

1. 4学会の声明

今回、4学会が緊急声明を出した理由として、感染拡大で救急外来・発熱外来がひっ迫している、救急要請に対応できない事案が発生している、医療関係者にも感染拡大し、一般診療にも影響が出始めている、などを挙げています(図1)。ちなみに、このメッセージは一般人に向けられたものです。

図1. 4学会による緊急声明とその理由(2022.08.03. テレビ朝日羽鳥慎一モーニングショー」より).

この声明においては、核心部分である発症者の医療アクセスについて以下のポイントが挙げられています。

----------------------

1. 症状が軽く、65歳未満で基礎疾患や妊娠がなければあわてて検査や受診の必要はない

2. 症状が重い場合や37.5℃以上の発熱が4日以上続く場合は、医療機関への受診が必要

3. 救急車を呼ぶ必要がある症状は、顔色が明らかに悪い、唇が紫色になっている、急に息苦しくなった、胸の痛みがある、など

4. 判断に迷う場合は普段から体調を管理しているかかりつけ医への相談

----------------------

その上で、発症から受診までの流れを以下のようにまとめています。

図2. 4学会が提言した発症から受診までの流れ(2022.08.03. テレビ朝日羽鳥慎一モーニングショー」より).

これらを見聞きしていて、まず第一に思うことは、本来「感染症から国民の健康や命を守る」のがパンデミック下における医療の役目であるはずなのに、医療がひっ迫してくると当事者によって「医療を守る」ことに矮小化されてしまうことです。もちろん、医療がひっ迫してくるとコロナ以外の一般医療にも多大な影響が出ますから、当たり前のシフトでもあるわけですが、第7波にもなって、なぜ依然として医療をひっ迫させてしまうのかの視点が見えてきません。

第1波のときに出された「37℃、4日間」の時も、「協力して医療を守って行くことが大事」というスローガンが添えられていました。今回の4学会の声明も、基本的に第1波のスローガンと同じです。

第二に思うことは、「医療を守る」ために、発症者に多大で実情にそぐわない要求をしていることです。上記の4つのポイントには、正直言って素人には判断できないようなこと(自己診断)も含まれています。具合が悪いというだけで、医者に行く判断は簡単にできます。しかし、受診の目安と照らし合わせて、どの程度の悪さかを発症者自身が判断しながらそれを決めるとなると、なかなか難しいです。

判断に迷う場合にはかかりつけ医に相談しろというのも実情に即していません。高齢者や持病があってかかりつけ医を持っている人はいいですが、ここで対象としている軽症で済むような若年層の多くはかかりつけ医をもっていないでしょう。たとえ、かかりつけ医や近くの病院に電話しても、多くは保健所や発熱外来に連絡しろとアドバイスされるのがオチです。そして発熱外来に電話しても繋がらないか予約がとれない、救急車を呼んでもなかなか入院できない現状があります。

そして、問題の「37℃、4日間」の復活です。第1波のときは、この目安のために受診、検査が遅れ、わざわざ重症化させてから治療に入るということが起こりました。今回もこの危険性があります。4日以上経てば、治療薬も効きにくくなる可能性があります。

発症者の大部分は軽症と言っても、第7波は、当初と比べてウイルスの感染力が著しく強く、その分絶対数が桁違いに多く、重症者もその数字に応じて出てくるのです。ここが念頭になかったために被害を拡大したのが第6波であり(→「オミクロンは重症化率が低い」に隠れた被害の実態重症者が増えなければよいという方針で死亡者増 )、それがまた第7波で繰り返されようとしているのです。

「軽症の場合、自宅で4日間待機」はコロナ禍の初期を思い出しますが?というメディアの問いに、日本プライマリ・ケア連合学会の大橋博樹副理事長は次のように応えています [1]

コロナ禍初期はどのような病気か分からず、実は『あの基準が本当に正しいか』ということが確かにあった。オミクロンは基礎疾患のない方・若い方は、ほとんどが軽症と分かっている。今すぐ医療を必要としている高齢者や基礎疾患のある方のために、まずは自宅で療養というのを、この数週間はぜひご協力いただきたい。

ちょっと聞くと、最もらしい意見に思えますが、新型コロナ感染症においては、高齢者や基礎疾患のある人が脆弱者であり、年代における重症化率はウイルス変異体によって若干差があるけれでも、大部分は軽症である傾向は第1波からずうっと同じです。然るに、なぜオミクロンになって、なぜこの第7波になって、「37℃, 4日間」が復活するのかについては直接答えていません。

症状が軽症であれば、自宅療養、自主隔離というのは、世界保健機構(WHO)も認めている国際標準の措置です。ところが、日本が世界と異なるのは、自宅療養の人が症状が悪くなった場合、いざ医療にアクセスしようとしても、それが難しいという状況にあることです。そして、「37℃, 4日間」という受診の目安まで決められていることです。こういうことは欧米諸国ではあり得ません。

医療提供側(学会)が一般人に求めることは(そして政府側に対しても)、このような受診の目安や医療アクセスへの制限ではなく、これ以上感染者を増やさない努力、つまり感染拡大を防ぐための行動変容でしょう。政府の「行動制限なし」方針は、国民の気を緩ませ、感染リスクを伴う行動を広げる方向へしか働いていません。

2. 専門家有志の記者会見

政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長など専門家有志18人は、昨日、医療ひっ迫の深刻化を踏まえて、社会経済活動を継続を両立するための提言を行ないました。これは上記の4学会の声明とは異なり、主に政府向けへのメッセージです。

この提言では、感染の新規陽性者を確認する「全数把握」を見直すこと入院患者ら重症化リスクのある人や死者に絞って情報把握することなどを継続する、などの提案がありました。さらに、保健所による濃厚接触者の特定を行わないようにすること外来・入院可能な病院の拡大も盛り込まれています。

全数把握の見直しは、この業務の煩雑さ(診断した現場の医師がHER-SYSに情報入力、あるいは保健所が代替入力)と、あまりにも感染者が増えたことによる実質全数把握が難しい状況によるものです。いま20万人を超える新規陽性者数が記録されていますが、逆に言えば、これが日本の検査と全数把握の能力の限界だということです。

私はすでに全数把握の限界について以下のようにツイートしています。

専門家有志が言うように、全数把握をやめるのはいいですが、流行把握のためのた代替法を考える必要があります。死者数記録の継続はともかくとして、重症化リスクのある人のスポット的な調査ではあまり意味がありません。外来・入院可能な病院の拡大も第7波が終わってからやることではなく、今直ぐ取り組むことでしょう。

テレビ番組でもコメンテーターの玉川徹氏が述べていましたが、尾身氏らは政府に対していろいろ言える立場の人なので、ここに来ての提言は今さら感の印象しかありません。この人たちの能力の限界と言ってしまえばそれまでですが、検査資源の拡充や医療提供の運用法については、もっと早くにより適切にアドバイスできたはずです。

3. なぜ繰り返されるのか

タイトルに「ゾンビのように復活した『37℃、4日間』」と書きましたが、なぜこのようなことが繰り返されるのでしょうか。一つは、日本の感染症対策が「患者を診る」ための対策ということにばかり注力されて防疫や公衆衛生学の視点を欠いているからです。つまり、患者にどう対応するという、医療の視点でもっぱら考えられているのが日本の感染症対策です。

防疫は、文字通り攻撃をあらかじめ予防するための措置であり、戦争で言えば、敵に攻められる時の戦術としてのレーダーや偵察や情報収集に相当します。新型コロナに当てはめれば、検査、流行監視、情報分析、リスクコミュニケーション、予防注射などがあります。そして、そのために、どの程度の医療提供体制であるべきか、どのように運用すべきかという、ロジスティクスとマネージメントが要求されます。

日本はここがまるでダメなのです。たとえば、検査抑制論は当初からありましたが、検査不足、検査資源不足は慢性的であり、3年目に突入しても依然として続いています。リスクコミュニケーションにおける「重症化率、重症者数が重要」という誤解されやすい情報流布は、脆弱者はだれか、被害の本質は何かを隠してしまい、犠牲者を増や続けています。デルタ以前の定義に基づく重症者数は毎日数十人程度しか増えていないのに、オミクロンでの死亡者は100人以上出しているのがその現れです。

発熱外来が全医療機関の35%しかないというのは、まったくロジスティクスの失敗です。PCR検査は市中、民間、医療機関、大学等のどこで行なうが、陽性と出たら陽性ですが、その確定診断を医師の専権事項にしたことで、彼らの業務に負荷がかかってしまっていることも、ロジスティクスの問題です。今頃になって自宅での抗原検査での陽性判定を認める動きになっていますが、それならPCR検査判定も医師の専権から外すべきでしょう。

二つ目はパンデミックという視点が希薄であることが挙げられます。パンデミックとは簡単に言えば、グローバルに社会的かく乱を起こす病気のことで、感染・伝播力はきわめて重要ですが、致死率や重症化率が一義的に重要でないことは先のブログ記事(→「コロナが5類引き下げになったら」で想像できること)で述べたとおりです。いかに病気が広がり、脆弱者に被害を与え、それが継続し、社会的影響が大きいかということがポイントです。

たとえば、COVID-19の60歳以下の重症化率は0.03%で、季節性インフルエンザ並みです。しかし、発症者が1万人の場合と100万人の場合では、重症者数が前者が3人、後者が300人となり、重症者用ベッドの数は全く異なります。オミクロンは軽症と言われますが、まさに後者のケースであり、感染者数が圧倒的に多いために、医療に負荷をかけてしまうのです。そして、感染力が強いために、軽症者や無症状感染者が脆弱者である高齢者に容易に伝播し、被害を広げるという特質があります。

上記のように、今起きている問題は、防疫体制の不備と医療提供体制のロジスティクスの無さのために、偏に、運用上の医療提供キャパシティをはるかに超えて感染者数が増えていることで起こっています。「重症患者のためにベッドを空ける」と言いながら、その実、重篤患者を増やし死亡者を増やしているのです。

おわりに

新型コロナは2年前と比べて恐ろしい病気か、いやそうではない、軽症ですむ病気だという意見が散見されますが、果たしてそうでしょうか。2年前と異なることはワクチン接種が進んだことと異なるウイルス変異体による流行が起こっていることですが、ワクチンの効果でオミクロンの重症化率が低いようにみえているだけという報告もあります(→オミクロンの重症化率、致死率は従来の変異体と変わらない?)。

また、今流行しているBA.5が先のBA.1やBA.2よりも入院率が高いことや、重症化しやすい可能性をもっていることは論文上でも指摘されています(→見えてきた第7波流行での最悪の被害)。これらは、今回の記者会見や4学会の声明では全く無視されているようです。

いずれにしろ、オミクロンの新型コロナ症はパンデミックの病気という状況は変わらず、依然として脅威なのです。「コロナは軽症」という見解では、感染力を増しているウイルスの病気だということも忘れられているようです。被害の実態と今の社会的混乱をみてほしいと思います。

為政者(例:神奈川県の黒岩知事)や専門家は、立ち行かなくなったコロナ対策や対策の失敗を、感染症上の見直し(いわゆる2類→5類問題)にすり替えるような動きも出てきています。しかし、繰り返しますが、これは防疫戦略と医療提供ロジの失敗に帰因することであって、法律云々以前の問題です。さらに、言わば苦肉の策とも言える「37℃, 4日間」という受診の目安の復活は、「国民の健康と命を守る」という意味からは、本末転倒の提言と言えましょう。

政府は社会経済を回すために、行動制限なしで行くことを継続しています。しかし、そのための検査・医療提供体制は全く不備のままであり、その結果が第7波の感染拡大、医療崩壊、犠牲者の増加です。そして、20万人/日を超える程度の感染者数の規模で、検査キットが足りない、医療用の検査に回せ、全数把握が無理と言っている国力の乏しさが露呈しています。ちなみに米国、欧州主要国、韓国などは、これよりはるかに多い感染者数で、全数把握を含めたパンデミック対応をしてきました。

引用記事

[1] テレ朝news: 4学会が声明 「症状軽い場合、受診や検査せず自宅待機を」Yahoo Japanニュース 2022.08.02. https://news.yahoo.co.jp/articles/e0ebbccf10d1c07318be2f8e83c9617860a6dd36

[2] スポーツ報知: 玉川徹氏、尾身茂会長らの提言に憤慨…「今ごろ何を言っているんだ」. Yahoo Japanニュース 2022.08.03. https://news.yahoo.co.jp/articles/5cc9240119cbb171d587536b3ad98bb0488e0d44

引用した拙著ブログ記事

2022年7月31日 「コロナが5類引き下げになったら」で想像できること

2022年7月27日 見えてきた第7波流行での最悪の被害

2022年5月6日 オミクロンの重症化率、致死率は従来の変異体と変わらない?

2022年5月1日 重症者が増えなければよいという方針で死亡者増 

2022年1月30日 「オミクロンは重症化率が低い」に隠れた被害の実態

2020年5月7日 新型コロナ受診の見直しについて思うこと

                    

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年)

「コロナが5類引き下げになったら」で想像できること

この記事は以下のURLに移動しました。

https://drtaira.hatenablog.com/entry/2022/07/31/083524

 

 

見えてきた第7波流行での最悪の被害

はじめに

今から1ヶ月ちょっと前のブログ記事で、この夏はオミクロン変異体の亜系統ウイルスBA.5による第7波流行に見舞われること、そしてパンデミック以来最悪の被害になりかねないことを述べました(→この夏の第7波?流行)。すでに、1日の新規陽性者数は20万人を超え、この1週間の感染者数は世界最多となっています。残念ながら、第7波では最悪の被害になることは確実なようです。

ここで、なぜパンデミック以来最悪の被害(死亡者数など)になると考えられるのか、4つの理由を挙げて説明したいと思います。

1. BA.5の特性と欧州での先行事例

BA.5は、これまでの中で最強の感染力をもつこと、デルタ変異体と同じL452R変異をもつこと、免疫逃避の能力が高まっていることなどで特徴付けられます。感染力はBA.2の約1.3倍と言われています。

東京大学医科学研究所の佐藤圭教授の研究グループは、先行研究で、L452R/M/Qを持つBA.2関連オミクロン変異体の実効再生産数は、オリジナルのBA.2のそれよりも大きいことを明らかにしました [1, 2]。細胞培養実験やハムスターを用いた感染実験に基づいて、L452R/M/Qを持つBA.2関連オミクロン変異体(特にBA.4とBA.5)は、BA.2より健康リスクが大きい可能性があることが示唆しています。

BA.5の威力は、先に流行が広がったポルトガルでの被害状況である程度推察することができました。Our World in Dataがリアルタイムで示す統計データでは、BA.2の流行に比べてBA.5の流行では感染者数が少ないにも関わらず、死亡者数があまり変わらないことを示していました(→COVID-19パンデミックにBA.4/BA.5変異体がもたらすもの)。つまり、ポルトガルにおけるBA.5の流行では、致死率が高くなっていることを示すものであり、日本と同様に高齢化率の高い国の先行事例として大いに参考にすべきなのです。

このポルトガルでのBA.5流行の臨床データについては、最近プレプリントサーバーに報告されました [3]。 この結果は、エリック・トポール(Eric Topol)教授によって、ツイート上で簡潔に紹介されています。

すなわち、ワクチン接種後およびブースター後の入院率は、BA.2よりもBA.5で3倍以上高く、再感染のリスクも有意に高いことがわかりました。BA.5感染者では,ブースター接種によるCOVID-19入院および死亡のリスク減少は、BA.2においてはそれぞれ93%および94%と高い値を示しましたが、BA.5においては、それぞれ77%および88%と低くなりました。つまり、BA.5はBA.2よりも重症化リスクが高いということです。

この傾向は、デンマークの国立血清学研究所が出したプレプリント [4] でも見ることができます。この報告では、ブースター接種後のBA.5の入院リスクはBA.2よりも1.78倍高くなっていることが示されています。

このようなBA.5の特性と海外の臨床に関する研究結果は、日本における第7波(BA.5)が第6波(BA.1/BA.2)よりも被害が大きくなることを示唆するものです。しかもL452R変異をもつこのウイルスは、東アジア人に多いHLA-A24による細胞免疫から逃避する可能性もあり(→COVID-19パンデミックにBA.4/BA.5変異体がもたらすもの)、日本や韓国における被害をより拡大することも予測されます。

2. 季節性インフルエンザ並み、重症者は少ないのプロパガンダ

上記のように、先行研究では、BA.5流行の被害の大きさが予測されるにもかかわらず、日本政府や報道機関の情報の伝え方がきわめて楽観的になっていることが、被害をさらに大きくしかねないと考えられます。

たとえば、上記のポルトガルの事例について、26日放送のテレビ朝日の「ワイドスクランブル」では、ほとんど無症状・軽症であった、4回目のワクチンで重症化を防いだ、すでに収束に向かっているという楽観的な伝え方で、重症化リスクや致死率が高くなっていることや、高齢化率の高い国でのリスクついては全く触れていませんでした。これについて私は以下のようにツイートしました。

今日のワイドスクランブル、TBSの番組「ひるおび」、日本テレビの「ミヤネ屋」などの情報番組でも、「感染者は増えているけども重症者は増えていないと、もっぱら「軽くみる方向」で強調されていました。日本で今重症者と言われているのは、デルタ以前の基準による、肺炎を起こし人工呼吸器やECMOを装着された患者です。オミクロンでは肺炎を起こすことは少なく、軽症や中等症からいきなり衰弱して亡くなることや、たとえ肺炎を起こしても人工呼吸器装着を望まない高齢者もいるという実態がスルーされています。

オミクロンは軽症、重症化しない」、「感染者数よりも重症者数が大事」というフレーズは、BA.1/2の第6波当初から盛んに言われました。専門家の間でも、新型コロナはもはや季節性インフルエンザ並みで、エンデミック(風土病)になるとさえ言われ始めました。これらの言葉の陰で被害を拡大していったのが第6波であり(→「オミクロンは重症化率が低い」に隠れた被害の実態 )、結果としてパンデミック以来最多の死者数を記録してしまいました。

この風潮は第7波になっても続いています。この感染症の本質は、インフルエンザ以下の症状をもつあるいは無症状の多数の感染者を発生させ、そこから脆弱者に容易に伝播し、肺炎のみならず、全身性症状、持病悪化で死亡リスクを高めるというところにあります。にもかかわらず、この本質を飛ばして「季節性インフルエンザ並み」「重症者は少ない」というフレーズがプロパガンダ風に盛んにテレビやSNSなどを通じて流され、国民の意識を緩ませるには十分であったと言えます。

実態は、ワクチン接種おかげで見かけ上重症化率が下がっているだけだという報告もあるように(→オミクロンの重症化率、致死率は従来の変異体と変わらない?)、過去最強と言われたデルタ変異体と比べてもウイルスの病毒性は下がっていない可能性があります。オミクロン変異体の感染力の強さに注目せず、いわばウイルスを舐めたこの風潮が感染拡大の下地を作り、第6波の悲劇が繰り返されるとも言えます。

3. 行動制限なしの方針

きわめつけは、政府の行動制限なしの方針です(→ 第7波流行での行動制限なしの社会実験)。過去最強の感染力を有し、病毒性もデルタと変わらない(ワクチンの効力があるときだけ抑えている)と推察されるBA.5の流行なのに、「何もしない」ということは、過去最多の感染者数を出してしまうことは自明なのです。そして、感染者の絶対数が増えた分医療がひっ迫し、重症者や死亡者の絶対数も増える、高齢者層の死亡が増えれば、若年層の死者数も増えるという、当たり前のことが起きるのです。

海外のウィズコロナの方針で、全面解除された風景を見て、日本政府も専門家集団も「日本もこれで行ける」と何か勘違いし、経済活動推進に舵を切ったのではないかと思われます。しかし、ウィズコロナの理解、国民性、文化・習慣、高齢化率、公衆衛生対策、医療事情(医療提供体制、医療保険など)で大きく異なる海外諸国と、単純に比較して、うわべだけで真似すべきではありません。

ウィズコロナ(living with the coronavirus)には防疫上(感染制御)の戦略は何もありません。あるのは、ワクチンに依存しながらある程度の犠牲者は寛容し、自由と経済活動を選択するという戦略と、その犠牲を最小化するための公衆衛生対策と医療提供体制をとるということだけです。この点で、日本では多くの国民が誤解していると思われ、合意形成も対策の準備もできていないと思います。日本は感染に対してはほとんど無防備であり、犠牲を最小化する体制も脆弱です。

4. 医療提供の窓口の狭さ

そして出てきたのが、医療ひっ迫の問題を感染症上の問題とする風潮です。いわゆる新型コロナの扱いを「2類相当から5類相当にすべき」という意見が盛んに出てきたことです(図1上)。分科会尾見茂会長は「リアリティーとして2類から5類に動いている」と発言しています。厳密に言えば、新型コロナの扱いは2類ではなく、「新型インフルエンザ等感染症」として分類でされており、むしろ2類よりやや厳しいです。

しかし、これはテレビ報道の間違いもあって国民の多くが誤解していると思います。たとえば、7月26日のテレビ番組では、「2類における受診は指定医療機関」「5類では一般医療機関でも対応可能」として紹介していましたが、これは誤りです(図1下)。

図1. テレビの情報番組が伝える感染症法上の2類と5類の違い(2022.07.26. TV朝日「ワイドスクランブルより).

これはちょっと考えればわかることですが、一般人が熱がある、頭痛がある、腹痛がある、というだけではコロナ感染とは判断できないわけであり(ほかの病気かもしれない)、この段階でかかりつけ医とか街角の医院で受診することはもちろん可能なのです。事実、コロナ感染でも、診察自体は多くのかかりつけ医やファストドクターなどが対応しています。

ただ2類相当では、感染を制御するために保健所が介入し、指定の発熱外来を設け、指定病院への入院勧告を行なっているわけであり、現状では、このシステムのマネージメントがうまくいっていないことで問題になっているわけです。簡単に言うと、以下のように、受診の窓口が非常に小さくなっているのです。

自治体は、発熱がある場合は、まずはかかりつけ医や近くの医院に電話で相談するように勧告しています。そこで無事受診できればいいですが、実際は、指定の発熱外来に行くように勧められたり、受診拒否されたりすることが数多くあります。そして、発熱外来に行っても混んでて受診できない、あるいは電話さえ繋がらないということが問題なのです。これが発熱外来が全医療機関の35%にしかなく、医療の窓口が小さくなっているという問題です。これは5類であったとしても同じことになるでしょう。あるいは感染制御もなく一般病院で診療するようになれば院内感染が爆増し、事態がより悪化することは容易に想像されます。

今は、感染者数が増え過ぎて病床が満杯になる、ひっ迫するという状況になり、入院ができない、ほかの緊急の重病でも診てもらえないという、医療崩壊が起きているわけです。要は、偏に、現状の医療提供キャパシティーを超えて、患者が増え過ぎているということに帰因しているわけであり、被害拡大の道を進んでいるのです。

これは感染症法の変更で解決できる問題ではありません。医療提供のマネージメントの問題や「何もしないこと」を棚に上げて、為政者や専門家が2類→5類変更へと論点をすり替えることは問題でしょう(→打つ手なしから出てきた5類相当への話)。さらに、これ以上感染者数が増加していくと、HER-SYSによる全数把握も難しくなり、それをやめるようなルール変更の話も出てくるでしょう。HER-SYS運用の問題点はもう2年前から明らかです(→コロナ禍の社会政策としてPCR検査

おわりに

いまのSARS-CoV-2の変異体の特性を理解せず、季節性インフルエンザ並みとか重症者数が重要とかおまじないのように唱え、確たる戦略もなくウィズコロナのスローガンで経済活動推進、行動制限なしに舵を切った政府ですが、この先に過去最悪の被害(死亡者数最多更新、長期コロナ症患者数の増加)が待ち受けています。そして、社会経済を回すつもりが、多くの感染者と患者を生むことで、かえって社会混乱と経済停滞を招くことになるでしょう。過去に学ばないものは、未来も切り開けないという悪例が繰り返されます。

引用文献・記事

[1] Kimura, I. et al.: Virological characteristics of the novel SARS-CoV-2 Omicron variants including BA.2.12.1, BA.4 and BA.5. bioRxiv Posted May 26, 2022. https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2022.05.26.493539v1

[2] テレ朝 news:「BA.5」肺で増殖か 「BA.2」の18.3倍 病原性も高い可能性 東大医科研. 2022.07.11. https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000261127.html

[3] Kisiaya, I. et al.: SARS-CoV-2 BA.5 vaccine breakthrough risk and severity compared with BA.2: a case-case and cohort study using Electronic Health Records in Portugal. medRxiv Posted July 25, 2022. https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2022.07.25.22277996v1

[4] Hansen, C. H. et al.: Risk of reinfection, vaccine protection, and severity of infection with the BA.5 Omicron subvariant: A Danish nation-wide population-based study. SSRN Posted July 18, 2022. https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=4165630

引用した拙著ブログ記事

2022年7月20日 第7波流行での行動制限なしの社会実験

2022年7月15日 打つ手なしから出てきた5類相当への話

2022年7月2日 COVID-19パンデミックにBA.4/BA.5変異体がもたらすもの

2022年6月21日 この夏の第7波?流行

2022年5月6日 オミクロンの重症化率、致死率は従来の変異体と変わらない?

2022年1月30日 「オミクロンは重症化率が低い」に隠れた被害の実態

2020年9月25日 コロナ禍の社会政策としてPCR検査

                    

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年)

"ケンタウロス"(BA.2.75)の脅威?

いま日本を席巻している新型コロナウイルスSARS-CoV-2)は、オミクロン変異体から派生したBA.5ウイルスです。この2、3日、20万人/日を超える新規陽性者を記録しています。ただ、検査陽性率が50%を超えることも多い現状や、オミクロン系統には特に感度が悪い迅速抗原検査も多く使われていることから、実態は数字よりはるかに多い感染者数になっているものと推察されます。

このところ、さらに検査キット不足も顕著になってきましたので、検査が抑制気味となり、20万人を大きく超えるような数字はこの先でないと予測されます。発熱相談件数の伸びもこのところ鈍化しているようです。

BA.5の次にやってくるのではないかと恐れられているのがBA.2.75です。この変異体は、今年の6月にインドで最初の感染者が見つかり、現在まで、英国、米国、カナダ、韓国、日本(神戸、大阪、東京で感染確認)などを含む20ヶ国で検出されています。この変異体は、一部でケンタウロス(Centaurus)という俗称でよばれています。

図1. BA.2.75ウイルスの各国における分布(cov-lineages.orgより).

今日のテレビ番組「ゴゴスマ」は、そのままケンタウロスという名前を使いながら、BA.2.75の特性と流行状況を紹介していました。それを観て、私は以下のようにツイートしました。

ところが、この番組と私のツイートを見たという人からDMが来て、「ケンタウロスとはどんなウイルスか、正式な名称か?」と問われました。私はこのメールに対して、これは世界保健機構(WHO)が正式につけた名称ではなく、ツイッター上で付けられた名前だと回答し、ブログで少し説明するからと応えました。というわけで、いまこのブログを書いているわけです。

BA.2.75は、今月初めのツイッター上で、アカウント名 Xabier Ostale によってケンタウロスと勝手に名付けられました。しかし、"I'm in command of anything pandemic."と言ってるように、この人はかなり傲慢なタイプのように感じます。とはいえ、このケンタウロスという名前はいろいろなウェブ記事 [1, 2, 3] で取り上げられ、急速に広まっているようです。

COVID-19について情報発信しているエリック・トポール(Eric Topol)教授(米スクリップス研究所)は、BA.2.75を"scariant"(恐い存在)と形容していますが、同時にインド以外はあまり広がっていないし、他にも気になる新しい変異体があるが、その一つではないとツイートしています。

YouTubeにも、内科医、肺疾患専門医であるマイク・ハンセン(Mike Hansen)博士によるBA.2.75について簡潔にまとめた動画がありました [4] 。ここでは、それを参考にして説明したいと思います。

オミクロン変異体は当初BA.1、BA.2、およびBA.3に分けられていましたが、BA.2から派生したのがBA.4/BA.5です(図2)。一方で、BA.2から派生したもう一つの亜系統がBA.2.75です。

図2. オミクロン変異体、亜系統BA.4/5、BA.2.75(ケンタウロス)の系統関係([4] からの改変図).

BA.2.75のゲノム上の特徴は、何と言ってもオリジナルの武漢株と比べた場合の変異の多さです。BA.4/5と比べても、共有部分の変異もたくさんありますが、各々の独自の変異の部分で大きく異なることがわかります(図3)。

ゲノムの上流から向かってORF1a、ORF1b、S(スパイクタンパク)、E、M、N(ヌクレオカプシド)のそれぞれに多くの変異があり(もともとオミクロンは組換えで生じた可能性あり)、Nにも欠失や変異が見られますので、武漢株のヌクレオカプシドを標的として設計されたいまの迅速抗原検査キットも反応しにくくなっている可能性があります。

図3. BA.4/5 BA.2.75の変異の違いおよび共有部分([4] からの転載図).

図4にはスパイクタンパク質部分の変異を示します。スパイク部分には36の変異がありますが、このうち、34個はBA.4/5と共有し、2個はBA.2.75独自のものです。BA.4/5で見られたデルタ変異体と共通であるL452Rは、BA.2.75にはありません。

図4. BA.2.75およびBA.4/5のスパイクタンパク質のみられる変異(共有部分は赤字、BA.2.75特有は青字、BA.4/5特有は黒字で表示、[4] からの転載図).

B2A.2.75の表現型の特徴としては、感染力の強さがあり、BA.5の約3.24倍と言われています [1]。武漢株の実効再生産数を3.3とすると、BA.2.75のそれは実に60ということになります。世界保健機関(WHO)は、すでにBA.2.75を「懸念される変異体における監視下の系統」に分類しています。BA.5でも第7波の大流行となっているわけですから、BA.2.75の流行波が来るとすれば、どの程度の感染者数を出すか想像もつきません。

また、スパイクタンパク質に沢山の変異が入っていますので、自然感染や既存ワクチンでできた免疫を回避する能力がさらに強くなっています。他方で重症化の程度や致死率についてはよくわかっていないようです。

いずれにしろ、要警戒のウイルス変異体です。

引用記事

[1] クォン・ジダム、チャン・ヒョヌン: 最強級の感染力…コロナ「ケンタウロス」の感染者を韓国で初確認. Hankyoreh 2022.07.15. https://news.yahoo.co.jp/articles/cb4b1536632b4a598fad2daa46b298d5cc958dea

[2] Lim, V.: CNA Explains: What we know about the new COVID-19 variant BA.2.75 or 'Centaurus’. July 22, 2022. https://www.channelnewsasia.com/singapore/new-covid-variant-centaurus-omicron-infectious-2825556

[3] Krishna, B, Centaurus: what we know about the new COVID variant and why there’s no cause for alarm. Conversation. July 22, 2022. https://theconversation.com/centaurus-what-we-know-about-the-new-covid-variant-and-why-theres-no-cause-for-alarm-187243

[4] Doctor Mike Hansen - BA.2.75 "Centaurus" - The New Covid Variant of Concern - Covid Variant Update. https://www.youtube.com/watch?v=t0Lhnib4KsI

                    

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第7波流行での行動制限なしの社会実験

いま、COVID-19第7波流行下にある日本ですが、ほんの1ヶ月前は検疫や入国制限が緩和された後でもあり、専門家の間やメディア上で脱マスク論が展開され(→出羽守の脱マスク論)、日本全体でコロナ収束気味の雰囲気でした。折しも、参院選の活動が始まったばかりの頃でもあり、コロナなど念頭にないかのように、感染症対策は公約の隅っこに追いやられていました。

しかし、1ヶ月前の状況からは、この夏に第7波流行が起こることが確実であることも予測できました(→この夏の第7波?流行)。第7波の主体と予測されるのが、オミクロン変異体の亜系統であるBA.5ウイルスであり、この変異ウイルスの性質(感染力の増強、L452R変異、免疫逃避性)や欧州で先行した流行の様子を考えれば(→COVID-19パンデミックにBA.4/BA.5変異体がもたらすもの)、第7波予測はむしろ当然でした。

私はこのブログやSNS上で、感染症においては脆弱者を特定化し、その被害を抑えること、それが他に波及することや逆に脆弱者に影響を及ぼす因子を排除することが、感染症対策の基本であることを何度も指摘してきました。そして、この基本に沿って検査や医療提供の必要量を把握することが重要であり、この把握のために日々発表される感染者数が先行指標として重要であることも述べてきました。

COVID-19における最大の脆弱者は高齢者や基礎疾患を有する人たちであり、オミクロン変異体になってからは小児へのリスクも高まっています。そして、感染は常に活動の量と範囲が大きい若年層を中心に先行して起こり、高齢者層や小児に広がっていくというパターンを示します。若年層にとっては単なる"風邪"程度であっても脆弱者にとっては危険な病気なのです。このコロナの本質(言わば不平等リスク)は第1波から一貫して変わっていません。

そして、日本は人口密度が高く、世界でも断トツの高齢化率を示す国です。肝心の検査・診断・医療提供の人口比キャパシティーは欧米諸国に比べて小さく、特に早期検査・診断の能力はきわめて低いにもかかわらず、これまで改善されていません。医療水準は高いのに、医療提供の管理とロジスティクスがきわめて拙く、医療アクセスの窓口は狭く、対応可能な病床数は不足しています。この日本特有の不都合な条件を念頭に置いておく必要があります。

何をすべきかということはここから明らかです。すなわち、単純に検査・診断・医療提供のキャパ以上に患者を増やさないということです。受ける水桶の大きさが決まっているのに、蛇口のひねりが大きければ、簡単に水はオーバフローしてしまいます。特に若年層の感染を抑えること、若年層から高齢層、小児への伝播を防ぐことが重要です。

問題はそれをどのようにして行なうかですが、今日のNHKクローズアップ現代」に出てきた新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾見茂会長は、感染を一定レベルに抑える必要があると言いながらも、結局感染対策として個人が工夫する必要があると発言しました。つまり、流行がどうなるかは個人の責任であり、国としては何もせず、成り行き任せという姿勢を述べたようなものです。これについて私はツイートで以下のように批判しました。

また、同番組に出演した大阪大学大竹文雄教授(経済学)は、隔離期間の短縮と(感染者数の)全数把握をやめることを提言していました。COVID-19は季節性インフルエンザ並みに軽いものだという彼の認識からです。これに対しても私は上記ツイートのリプ欄で批判しています。

「COVID-19は季節性インフルエンザ(あるいは風邪)のようなもの」という論調は、専門家や識者の間でも見られますし、これを受けてメディアも盛んにCOVIDインフル論が伝えています。埼玉医科大学の岡秀昭教授(感染症専門医)もその中の1人で、先日放送の報道ステーションでもそのように述べていましたが、医療維新に寄稿した論説 [1] では以下のように主張しています。

ただし、季節性インフルエンザのように発熱外来ではなく通常の場で診療するには、いまだ新型コロナの感染性は高く、高齢者などの重症化リスクも高い。大前提として、コロナを日常的な医療提供体制の中に位置付けるためには、ワクチン接種率のさらなる向上が不可欠だ。

さらに、コロナは「いずれ風土病(かぜのように)になる」という論調も、専門家の間でも枚挙にいとまがありません。たとえば、長崎大学熱帯学研究所の山本太郎教授は以下のように述べています [2]

新型コロナは今、ヒト社会に定着しつつある段階といえる。感染者が増え、ワクチンの接種が進んだことで、集団としての免疫ができつつある。今の乳幼児が大人になる頃には、成長する過程で新型コロナへの感染を繰り返す、あるいはワクチン接種によってほとんどの人が免疫を得る。そのため重症化しにくい、かぜのような存在になっていくだろう。

しかし、新型コロナが風邪になるというのは科学的根拠がなく、単なる寓話に過ぎないというのはウイルス学者の一致した見方です(→エンデミック(風土病)の誤解)。ウイルスは弱毒化、強毒化など、あらゆる方向に進化するポテンシャルをもっており、風邪になるとは断定できないのです。また、ワクチンによって集団免疫ができるというのももはや幻想でしょう(局所的、一時的にはあり得ますが)。

私は世界中に微生物学、ウイルス学、公衆衛生学などを専門とする沢山の知人(大学教授、公的機関の研究者)をもっていますが、彼らの中で、COVID-19が季節性インフルエンザ並みであると言っている専門家は1人もいませんSARS-CoV-2はインフルエンザウイルスよりもはるかに危険なウイルスであり(だからこそインフルエンザよりも上位のリスクグループ3に分類されている)、COVID-19は依然として脅威であり、季節性インフルエンザよりもはるかに懸念される感染症と異口同音に指摘します。世界保健機構(WHO)も同様な見解です。

英米の規制解除(行動制限なし、マスク不要など)は、このような専門家とは異なるあくまでも政府の認識に基づく方針です。ワクチン、治療薬など利権が絡んだ医者や免疫学者、財界の後押しや束縛を嫌う国民の世論も影響しているでしょう。インフエンザ並みと考えた方が、世論対策の上でも経済活動推進の上でも都合がよいということです。

そこには「ワクチン接種と自然感染が進んだ」、「国民の多数が抗体を有している」、「重症化する人が少ない」、「医療提供体制が整っている(罹っても直ぐに診てもらえる)」として、「一定レベルの犠牲者数があるとしても自由と社会経済活動を優先する」という「政府」のウィズコロナの考え方があります。

一方で、日本のウィズコロナ戦略はきわめて不明瞭です。感染対策と経済活動の両立というのも何を言っているのか、具体性に欠けます。日本は、いま、社会経済活動を回すことを選択しているわけですが、文字通りの両立は不可能です。当たり前ですが、社会・経済活動を推進すれば感染者は増え、感染者は一時経済活動からの離脱を余儀なくされ、それがまた経済を停滞させるのです。

今日、全国では15万人以上の新規陽性者数を記録しました(図1)。検査数に連休の影響がほぼなくなる明日は、もっと増えるでしょう。とはいえ、PCR検査能力の問題があるので、抗原検査みなし陽性の上積みがあったとしても、今後20万人/日を超えたところで頭打ちになり、今の2倍に達することはないと思われます。

図1. COVID-19新規陽性者数と死者数の推移(Yahoo新型コロナウイルス感染症まとめより転載).

このような流行状況をみても、日本はいま感染者数では世界トップクラスであり、私は以下のようにツイートしました。

世界でトップクラスの感染者数を出している現状を、メディアは一切報道しません。死亡者もこれから急激に増えていくでしょう。季節性インフルエンザ並みという 「軽さ」の演出と気の緩みがこのような流行状況を生み出していると言っても過言ではなく、いま甚大な被害へと突き進んでいるのです。逆に言えば、打つ手なしの状況であるから、コロナの軽さや感染症上の問題(5類へ変更すべき)をダミーとする「言い訳」が出てくるのかもしれません(→打つ手なしから出てきた5類相当への話)。

政府は若干の含みはもたせていますが、第7波流行への対策として、このまま一切の行動制限なしで進めるようです。つまり、尾見会長が言っていたように、国民自身の行動に委ねるということになります(何もしないということです)。そこには経済活動をとめたくない、とめた場合に甚大な社会・経済的な被害を被るという財界の強い声や、経済優先の人たちの後押しがあるのは明らかでしょう。これに伴い、これまでは自粛されていた大規模なイベントが開催されます。観光やお盆の帰省で民族第移動が起こるでしょう。

言わば、いま、何か成果として期待するという意味では目的がない、大きな社会実験をやっているということになります。国民の行動に責任を押し付けた上で、国自身は何もしないでやり過ごし、やがて減衰すればそれでいいのではないかという、根拠なしの楽観論と結果論が同居する、ウイルスを舐めた社会実験です。どれだけ被害が出ようが国民がそれに耐える、あるいは国民やメディアから批判的意見が出ないまま減衰することを待つ、という意味ではそれが政府の意図なのかもしれません。

上記したように、日本の医療アクセスの窓口は狭く、病床数は足りません。20万人以上/日の感染者数を出してしまったら、それに見合う医療提供力はないのです。医療崩壊救急医療崩壊が確実に起こります。そうすると今度は、防疫や公衆衛生対策の不作為の責任を転嫁するように、感染症法上の分類見直し論や感染全数把握の中止論の声がますます大きくなってくるでしょう。感染者が病院に押し寄せることで、ひょっとして医療提供側が入り口を制限することも起こるかもしれません。

コロナは季節性インフルエンザ並みと唱えたところで、5類に変更しろ [3] と主張したところで、国民の命と健康を救う観点からは何の意味もありません。季節性インフルエンザや風邪並みの病気と考える人たちは、「風邪並みが医療崩壊を起こす」という矛盾にも気づいていません。COVID-19と季節性インフルエンザは感染力や病態において全く異なり、高齢者や基礎疾患を有する人、小児・幼児の脆弱者を攻撃する病気の本質は変わらないし、法律を変えても医療提供キャパ(病床数+人員など)と感染者数の関係も変わらないということです

若年層の病気の"軽さ"を基準にするという、コロナの本質(不平等リスク)を忘れた姿勢、および日本特有の不都合な条件を考えないで経済を回す選択は、感染者と患者を大量発生させ、医療を圧迫し、第6波以上の犠牲者を出すことになり、そして多数の長期コロナ症(long COVID)の人たちを生むことになる可能性大です。

上記のNHK番組で、坂本歴史衣氏(聖路加国際病院感染管理室マネージャー)は、「5類に変更しても病気の性質は変わらない」、「緩和した結果を示し、受け入れるか否かを方針を明確に」と言っていましたが、まさしくそのとおりだと思いました。私はこれまで、「PCR検査の感度は低い」などの彼女の言述を批判してきましたが、ここでは意見が一致しました。

引用記事

[1] 岡秀昭: 豪雨後の河川が氾濫するように入院急増」埋まり始めたコロナ病棟. 医療維新 2022.07.20. https://www.m3.com/news/iryoishin/1061632

[2] 朝日新聞DIGITAL: コロナ感染1000万人、やまぬ波 うち800万人超が「第6波」以降 ワクチンの予防効果、減少懸念. 2022.07.16. https://digital.asahi.com/articles/DA3S15358071.html

[3] デイリー: 三浦瑠麗氏「早く5類にしておけば」「軽症ならPCRにこだわる必要ない」新型コロナ急増で. Yahoo Japanニュース 2022.07.20. https://news.yahoo.co.jp/articles/14787d5770077e798c681534e9e1854d9effcc6c

引用したブログ記事

2022年7月15日 打つ手なしから出てきた5類相当への話

2022年7月2日 COVID-19パンデミックにBA.4/BA.5変異体がもたらすもの

2022年7月1日 出羽守の脱マスク論

2022年6月21日 この夏の第7波?流行

2022年1月31日 エンデミック(風土病)の誤解

                    

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年)

英文記事が伝える統一教会と日本政治との関係

はじめに

安倍元首相暗殺事件は、日本のみならず世界に衝撃を与えました。そして、事件に付随して俄に注目を浴びているのが世界統一家庭連合(旧統一教会)であり、そして教会と安倍晋三や日本政治との関係です。

報道によれば、事件を起こした山上容疑者の動機には、旧統一教会のへの恨みがあるとされています。そして、安倍元首相を殺害した理由として「同教会と安倍元首相が関係があると思い込んだ」と捜査関係者は伝えています。

ここから同教会と日本社会、とくに政治との関係がクローズアップされているわけですが、この件については、日本メディアの報道はきわめて抑制的です。一方で、海外のメディアや日本メディアの英字記事はよりストレートに情報を発信している印象を受けます。

このブログ記事では、日本のメディア報道や警察情報だけでは分からない、旧統一教会と日本政治との関わりについて、英字記事の報道に基づいて紹介します。ここでは、便宜上、当該宗教団体を統一教会とよぶことにします。

1. 警察発表、日本・海外メディアの論調と背景

今回の事件と関わりがあるこの宗教団体が統一教会であることはすでに明白であり、民放の情報番組やインターネットメディアはこの名称を用いています。にもかかわらず、警察はいまだに団体名称を公表していません。NHKも然りで、ある宗教団体という言い方を通しています。これについて、先日、私は以下のようにツイートしました。

NHKのニュースは、統一教会と安倍元首相について、当該団体の名前を出さず、かつ山上容疑者が「関係があると思い込んで」という部分を毎回強調して報道することで、視聴者へのすり込みを行なっている印象を受けます。この点で、警察とNHKの伝え方は完全に同調しており、政府権力側からの何らかの働き、あるいは組織内の調整をうかがわせるものです。

そして、こともあろうに、警察庁を管理する国家公安委員会のトップである二乃湯智氏が、統一教会関連イベントの呼びかけ人だったという記事が出てきました [1]。こうなると、警察とNHKの名称隠しや一連の報道・発表は、意図的な情報隠蔽・印象操作だという疑いが益々拭いきれません。これに関して、私は以下のようにツイートしました。

実は、統一教会は、公安委員会の監視対象であった可能性があります。公安調査庁の「内外情勢の回顧と展望」の2005年(平成17年)1月〜2006年(平成18年)1月版には、監視対象としてのオウム真理教日本共産党とともに、最後に「特異集団」というカテゴリーが出てきますが [2]、この記述を見ると(名指しこそしていませんが)ここに統一教会が含まれていたとしても不思議ではないです(図1)。

図1. 公安調査庁の「内外情勢の回顧と展望」の平成18年1月版に記された特異集団 [2].

そのように思わせるのが、翌年(2007年)から、この「特異集団」の記述がなくなっていることです。つまり、2006年9月から第一次安倍政権が始まり、同年12月に公安調査庁の長官が柳俊夫氏に交代しているのですが、それ以降記述が消えたということは、政権の意向が働いていることを想像させるものです。

これに関するツイートがありましたので以下に引用します。

上述のように、日本の大手メディアの報道はきわめて抑制的です。たとえば、朝日新聞は、「統一教会を日本に入れたのは安倍氏の祖父の岸信介氏で、安倍氏も教会とつながりがあると思った」という捜査担当者の発表をそのまま流しています。統一教会の名前は出していますが、論調は捜査担当者の発表をそのままという感じです。統一教会安倍氏、あるいは自民党との関係は、赤旗などのごく少数のメディアが部分的に取り上げるのにとどまっています [3]

一方で、フィナンシャル・タイムズ(FT)、ワシントン・ポストブルームバーグ(→元首相の死で浮かび上がった少数政党の主張)などの海外メディアは、今回の件についてより踏み込んで、事実や歴史的背景を忖度抜きで報道しています。たとえば、FTの記事は、統一教会と日本の政治の関係を直接示唆する内容であり、日本語に翻訳された記事もでています [4]

そしておもしろいことに、日本のメディアでも、英字記事になると、統一教会安倍氏ら、自民党議員との関係についてもっと踏み込んで書いていることがわかります。ここでは、毎日新聞社が提供するニュースサイトThe Mainichi(旧名:Mainichi Daily News)に掲載された英文ウェブ記事 [5] を紹介したいと思います。取り立てて新しい事実は出ていませんが、割とストレートにこれまでの事実と背景が書かれています。

2. The Mainichiの記事

Mainichiのウェブ記事 [5] は、昨日(7月15日)に配信されたもので、"The Unification Church's ties to Japan's politics"(統一教会と日本の政治との結びつき)という見出しがついています(下図)。

以下、全翻訳文です。

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安倍晋三元首相が暗殺された事件で、長年疑われながらあまり語られてこなかったある宗教団体と安倍首相とのつながり、すなわち、韓国で始まり世界中に影響力を持つこの団体と安倍氏との関係が明らかにされた。

その場で逮捕された山上徹也容疑者は、安倍元首相と統一教会との関係を知って怒りをもったことを、警察やメディアは示唆している。この教会は米国、日本、欧州の政治的に保守的な団体や指導者と関係を追い求めてきた。容疑者は、母親が教会に多額の寄付をしたため、一家が破産したことに腹を立てていたという。

冷戦時代の共産主義で思想共有したことに端を発するこの教会と日本のトップリーダーの結びつきが今週明らかになったことは、多くの日本人にとって驚きだ。与党の保守的な世界観がいかに強力に現代日本の政策を動かしてきたかを、人々がより詳細に探るきっかけになるかもしれないと、アナリストは語る。

ここで、日本の政権党や安倍首相一族と深いつながりを持つ教会に迫る。

統一教会とは?

統一教会は、朝鮮戦争終結した翌年の1954年に、故・文鮮明によって創設された。彼は、聖書の新解釈とともに保守的で家族的な価値観を説き、自らを救世主と称する。反共産主義を唱え、全体主義北朝鮮と民主主義の南朝鮮(韓国)に分裂している朝鮮半島の統一を目指した教会である。

この教会は、おそらく合同結婚式を行うことで最もよく知られている。スタジアムや体育館などの広く開放的な場所で、しばしば異なる国のカップルがペアを組み、既婚者に対して誓いを新たにする集団結婚式だ。世界には数百万人の会員がいると言われ、日本にも数十万人がいる。

同教会は1970年代から80年代にかけて、悪質な勧誘戦術を用い、信者を洗脳して所得の大部分を文鮮明に差し出させたということで非難にさらされた。教会はこのような疑惑を否定しており、多くの新宗教運動がその初期に同様の非難を受けたことを述べている。

日本では、「霊感商品」を提供したとして訴訟にまで発展している。これは教団への寄付を集めるために教団員が高価な美術品や宝石を買ったり、不動産を売ったりしたとされる行為だ。

●世界の指導者たちと教会のつながり

文鮮明は生涯を通じて、自分の教会を世界的な宗教運動に変え、ビジネスや慈善活動を拡大することに努めた。彼は1982年に脱税で有罪判決を受け、ニューヨークで服役した。彼は2012年に死去した。

同教会は、リチャード・ニクソンロナルド・レーガンジョージ・H・W・ブッシュ米大統領、最近ではドナルド・トランプを含む保守的な世界の指導者たちと関係を深めてきた。

文鮮明は、北朝鮮の建国者である金日成氏(現政権者金正恩氏の故祖父)とも関係があった。彼は自伝の中で、金氏に核開発の放棄を求めたところ、金氏は原子開発は平和目的であり、「(韓国の)同胞を殺す」ために使用するつもりはないと答えたと述べている。

●安倍元首相とつながりは何だったか?

安倍元首相は、安全保障や歴史問題で旧来の保守的な考えを持つことで知られ、また日本会議などの強力なロビー団体に支えられていた。2021年9月にも教会関係者が主催するイベントに出演している。

教会系の万国平和連合(UPF)の会合で、安倍首相は大型スクリーンに映し出されたビデオで、朝鮮半島の平和に向けた活動や家族の価値を重視する同連合会の活動を称賛した。伝統的な父権的な家族制度を重視することは、安倍氏の重要な立場の一つであった。

安倍元首相は、「UPFが家族の価値観を重視していることは評価できる」とビデオで語っている。「偏狭な価値観を持つ、いわゆる社会革命的な運動には注意しよう」とも述べている。

2021年のイベントへの出演が報じられると、日本共産党や、統一教会の活動を監視し、被害者とされる人々を支援してきた弁護士グループなどのカルト・ウォッチャーから批判を浴びた。

安倍暗殺とUPFの関係が明らかになった後の月曜日の記者会見で、日本におけるUPFのリーダーである田中智博氏は、安倍元首相はUPFの平和運動を支持しているが、会員ではなかったと述べた。

警察は、暴力の連鎖を避けるためなのか、山上容疑者が挙げた団体をまだ公表していない。

●日本の政権党について意味するところ

安倍元首相の祖父である岸信介は首相を務め、1960年代に、労働組合の活動家が力をつけるにつれて日本で共産主義の広がることを恐れ、その懸念をワシントンと共有していた。

岸は、戦犯として逮捕されたが起訴されなかった。右翼的な政治観で知られ、統一教会の反共的な姿勢は、彼の日本の国益に対する見解と一致していたと専門家は言う。

岸と教会との親密な関係は一般的に知られていた。岸の東京の自宅の隣には教会本部があり、教会で撮影された写真や団体出版物に掲載された写真には、岸が文鮮明と一緒にいる姿が写っていた。マスコミの報道によると、山上容疑者は岸が日本に教会を持ち込んだと信じていたという。

「当時の日本の指導者たちは、教会を日本の反共産主義を推進する道具として見ていた」と、弁護士で宗教ビジネスの専門家である紀藤正樹氏は言う。宗教団体にとって、著名な政治家との密接な関係を誇示することは、彼らの活動への賛同を得るための方法だったのだ。

教会系組織と自民党議員の結びつきは、教会の拡大以来、数十年にわたって発展してきており、政権党に確かな政治的支援と票を提供した、と専門家は指摘するが、同団体は否定している。

週刊現代は、1999年、警察から入手した128人の国会議員の調査結果を記事として掲載した。ほとんどの議員が、統一教会の反共関連団体である「国際勝共連合」が主催するイベントに参加しており、自民党議員の事務所にも少なくとも1人はボランティアとして教会の信者がいることがわかった。

●教会とその批判者の言い分

教会は日本支部を開設する際、岸氏による優遇措置を受けたことを否定した。田中氏は、安倍首相は現在の指導者であるムン・ハクジャ(韓鶴子)氏の平和運動を支持していると述べたが、同団体と自民党の間の金銭の動きについては否定した。

同教会は月曜日、山上容疑者が会員であったことを示す記録はないと発表した。同教会は、関連団体を通じて他の議員と交流はあるが、安倍首相とは直接の関係はないという。

教会を監視する「霊感商法対策弁護士全国ネットワーク」のメンバーは、統一教会や関連会社が主催するイベントへの出演やメッセージの発信をやめるよう、安倍首相ら自民党議員に繰り返し求めてきたという。だが、この間、長らく教会関連の問題は無視されてきた。

自民党にとって何を意味するのか?

上智大学の中野晃一教授(国際政治学)は「今回の暗殺は統一教会に光を当てている」と指摘する。「統一教会自民党右派の関係や超右派的な政策が精査され、安倍首相のレガシーの再評価につながる可能性がある」と指摘する。

自民党の見解は、男女平等や性的多様性の問題の進展を阻害しているが、それがいかに戦後日本社会を歪めてきたかを明らかにすることにつながるかもしれない、と中野氏は述べている。

岩手県達増拓也知事は、金曜日、元官僚や国会議員として自民党と教会のつながりを知っていたと述べた。そして、投票や政府の政策に影響を与えたとされる教会を、徹底的に調査するべきだと語った。

おわりに

安倍元首相の殺害事件以降、このところの日本のテレビ、メディアの報道は明らかにおかしいです。とくにNHK偏向報道というか、プロパガンダ風の報道は目に余ります。

そんな中で、日本語と英語の記事を配信しているメディアの中には、微妙に使い分けている印象もあります。すわなち、より本音の記事を英語で伝えているという印象です。それを今回の The Mainichi の記事 [5] で感じました。統一教会と日本の政治との関係については、しばらく海外メディアの報道と日本の英文記事を参考にするのがよさそうです。

引用記事

[1] FLASH: 倍元首相銃撃事件で注目の旧統一教会「主導イベント」国家公安委員長が呼びかけ人だった! Yahoo Japan ニュース 2022.07.15. https://news.yahoo.co.jp/articles/b3f95dd0e9eafbe01f742863a7c23d18cb0f1fe9

[2] 公安調査庁: 内外情勢の回顧と展望(平成18年1月). 
https://www.moj.go.jp/psia/kouan_naigai_naigai18_naigai18-04.html

[3] しんぶん赤旗電子版: 杉田水脈氏 旧統一協会関係団体で講演 19年. 自民との関係に批判の声.2020.07.16. https://www.jcp.or.jp/akahata/aik22/2022-07-16/2022071602_04_0.html

[4] COURRiER Japon:自民党とカルトの“近すぎる距離” 英紙が「安倍晋三統一教会の関係」に迫る─それは祖父・岸信介の時代から「公然の秘密」だ. 2022.07.12. https://courrier.jp/news/archives/294114/

[5] The Mainichi: EXPLAINER: The Unification Church's ties to Japan's politics. 2022.07.15. https://mainichi.jp/english/articles/20220715/p2g/00m/0na/053000c

引用したブログ記事

2022年7月10日 元首相の死で浮かび上がった少数政党の主張

                

カテゴリー:社会・政治・時事問題

打つ手なしから出てきた5類相当への話

はじめに

新型コロナウイルス感染症COVID-19)は、いま急拡大中です。先月、第7波流行を予測、危惧しましたが(→この夏の第7波?流行)、残念ながらそのとおりの展開になってしまいました。流行の主体として置き換わりが進んでいるオミクロン変異体の亜系統BA.5ウイルスの伝播力(→COVID-19パンデミックにBA.4/BA.5変異体がもたらすもの)、検疫・感染対策の緩和、国民の気の緩み、参議院選挙活動の影響を考えれば、当然の結果でしょう。医療ひっ迫と第6波並みあるいはそれ以上の被害拡大は目前です。

ここへきて、また専門家筋からCOVID-19の感染症上の扱いを5類相当へ移行しようという動きが出てきました。このブログで少しまとめたいと思います。

1. 政府と専門家の発言

政府は、先日の記者会見で、COVID-19の感染症法上の扱いを、季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げることについて「最大限の警戒局面にある現時点で、5類に変更することは現実的ではない」と否定しました [1]。その理由として、「専門家からはオミクロン株であっても、致死率や重症化率がインフルエンザよりも高く、さらなる変異の可能性もあると指摘をされている」と説明していました。

ところが、7月14日、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は、同日開かれた分科会後の記者会見上で、COVID-19の感染症法上の扱いを季節性インフルエンザと同じ扱いにする必要性を示唆しました [2]。すなわち、COVID-19を「5類」に引き下げることを念頭に、「コロナを一疾病として日常的な医療提供体制の中に位置づけるための検討も始める必要があるのではないか」と提言しました。併せて「世界中が5類に近づいている」とも述べました。

尾身氏によると、分科会では「いまの第7波の感染が落ち着いてきてから議論を始めたらいいのでは」との意見が上がった一方で、保健所のひっ迫などへの懸念から「それでは遅い」との意見が多数を占めたということです。

尾見氏は「5類にやや近づけていくということであって、一番大事なことは、現状を法律に合わせることではなく、結果的にそれが法律でのこれにあたる、というのが筋だと思う」と語っています。必要な対策を議論する中で、結果的に類型が決まるとの考えを示しました。

2. 感染症法上のCOVID-19およびSARS-CoVの危険度

ここで、表1にCOVID-19と他の感染症感染症法上の扱いを比較して示します。COVID-19は指定感染症を外された後、感染症法上の新型インフルエンザ感染症の扱いになっています。メディアなどではよく2類相当の扱いと言っていますが、むしろ2類よりもやや厳しいという感じで、新型インフルエンザ等感染症に仮分類した弊害が出ているかもしれません。

表1. 感染症法上の新型コロナウイルス(COVID-19)およびその他の感染症の分類と措置*  *シンボル: ◯, 該当する; ×, 該当しない; △, 一部該当.

ここで、併せて、新型コロナウイルスSARS-CoV-2)がどの程度危険なウイルスなのか、世界基準の病原体の取り扱いに関するリスクグループやバイオセーフティレベルの分類 [3] から見てみましょう。表2に示すように、SARS-CoV-2は上から2番目に危険なリスクグループ3(BSL-3)に分類されています。これは、SARSやMERSコロナウイルス結核菌と同じレベルです。一方、インフルエンザウイルスは1段階下のリスクグループ2に分類されています。

表2. 病原ウイルスおよび細菌の取り扱い上のリスク分類

ウイルスのリスクグループの分類とそれらが起こす感染症の病態・重篤度とは必ずしも対応していません。とはいえ、SARS-CoV-2を含めてリスクグループ2以上の病原体は、感染症法の4類以上に分類されていることがわかります。リスクグループ3の病原体が5類にされた例はありません。パンデミックを起こすくらいの病原体ですから、むしろ2類相当の扱いは当然だと言えます。

ちなみに感染症法に基づく感染症の分類(1〜5類)は日本独自のものであって、尾見氏が「世界中が5類に近づいている」というのは具体的にどのような状況を指すのか、それだけでは不明です。おそらく英国などでの、規制全面撤廃を指しての言述かと思いますが、それを示さない状態で「5類」という言葉に置き替えて話すのは、無責任だと思います。

3. 5類変更の意味

まずは、巷によくある意見として、現行法下(2類相当)では「一般病院でコロナ患者を診ないから医療がひっ迫する」、「一般病院でコロナを診られるようにすれば解決する」というのがありますが、これは完全な誤解です。いまは、入院措置として指定医療機関が対応するとなっているだけで(表1)、(別に5類にしなくとも)一般病院でももちろん患者を診ることができます。

ただ、電話で相談しても発熱外来を紹介されるだけとか、(設備が)感染症対応になっていないなどの理由で受診拒否されるだけという事情があるわけです。これは5類相当にしたところで同じことです。また一般病院は、もちろんコロナ以外の病気も診るという地域医療の役目を担っているわけですが、その医療バランスは5類にしたところで変わりません。むしろ、5類にすることで、一般病院の地域医療は圧迫を受けるでしょう。

COVID-19が今の2類相当扱いから5類に変更されると、実際国民にとってどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。東京新聞はこの問いに簡単な回答を記事として掲載しています [4]。端的に言えば、5類変更で都合がよいのは保健所や担当者側であり、現状では国民にとってメリットはほとんどありません

表1に示すように、5類変更となれば、消毒、診断時の届け出、入院勧告、無症状者への適用、就業制限など様々な項目の縛りがなくなりますので、担当する保健所の業務としてはかなり負担が軽くなり、かつ人々も動きやすくなります。一方で、医療費は自己負担となりますので、保険が効くものもあるとは言え、長期入院や高額治療薬を考えると患者は相当な自己負担となります。おそらく受診控えが起こるのではないかと思われますが、そうなると、検査、診療が遅れ、多数の重症の患者を増やす結果になるでしょう。

さらに患者発生の即時の届けや無症状者への適用がなくなりますので、流行の把握ができなくなります。いまテレビなどで伝えられる流行状況の情報がリアルタイムで得られなくなるわけです。人々の行動に縛りがなくなり、感染者が急速にまん延するでしょう。にもかかわらず、ウイルスのまん延状況が掴みにくくなりますので、その警戒感から病院側の診療拒否が起こる可能性があり、これがまた検査・治療の遅れに繋がります。

全体として、5類の流行把握不可の状態では感染者が爆増し、多数の重篤な患者を増やす結果になり、かえって医療はひっ迫し、地域医療はかく乱され、今よりも被害が拡大すると考えられます。つまり、いまは、法律改正云々以前の現行の医療提供体制とロジスティクスの問題であり、それを改善した上で、5類という法令上の緩和で、コロナ被害と医療ひっ迫をより防ぐことが可能か?という観点が必要なのです。

先行事例として、全ての規制を解除し、もはや感染者の追跡も、街角のPCR検査も行なっていない英国をはじめとするいくつかの先進諸国の状況を、5類変更への参考にすることができるでしょう。英国の友人(微生物研究者)から聞いたところでは、サンプル調査で感染者数は30万人以上/日程度出ているようです。彼は、感染情報がわからない潜在的脅威long Covid(長期コロナ症)の広がりが国に与えるダメージを心配していました。そして、すでに医療ひっ迫が起きているようです(公的医療NHSはすでに破綻している)。

また、同様に規制解除が進んでいる米国の知人(ウイルス学の専門家)からは、米国ではワクチン接種さえしていれば濃厚接触者の隔離はないので、これからのBA.5の急拡大が起こるだろうと予測していました。ワクチン至上主義のファウチの国らしいです。ただ、COVID-19は依然として脅威であるという認識は担当部局、専門家で共有されているようです。

2類から5類への論争は、まったく見ているが違うところから起こっているようです。5類変更を推進したい人は、主に保健所業務の軽減など、病気を管理・診療する側の運用上のメリットから主張しているのであって、病気や患者そのものを見ているわけではありません。他方で、5類変更に慎重な立場の人は、病気の流布や患者そのものの状況の観点から主張しているわけです [5]

ちなみに、SNSを見ていると、5類変更することによって、あたかも病気そのものが軽くなったように錯覚している人もいるようですが、これは論外です。

4. 流行と対策の現実

ここで実際の流行状況を見てみましょう。図1パンデミック期間中の、日本の流行パターンを世界およびアジアのそれと比較して示します。感染者数でみれば、第5波で世界、アジア平均を上回るピークになり、第6波でそれがより顕著になっていることがわかります(図1上)。つまり、前の流行波に学んで次の流行波の対策に生かし、被害を軽減するという世界標準のアプローチが日本はできていないということです。

死者数についても同じことが言えます(図1下)。第6波で世界・アジア平均を上回る最多の死者数を出したことは、それまでの経験が対策に生かされていないということです。世界全体としては、ワクチン接種の効果もあって、死者数がかなり抑えられてきましたが、ワクチン逃避型のBA.5流行によって先進国では再び死者数が増加しています。日本の第7波ではどうなることでしょう。第6波以上の犠牲者が出ることを危惧します。

図1. 日本のCOVID-19流行の推移(世界およびアジアとの比較、Our World in Dataより転載).

いま置き換わりが進行中のBA.5はBA.2の約1.3倍の伝播力を有し、過去最強の感染力と病毒性の強まりが懸念されるL452R変異をもっています。第7波の感染者は爆発的に増え、今日の新規陽性者数は全国で10万人を超えました。医療がひっ迫することは確実です。このような状況下で「2類から5類へ」という話が尾見会長から出てくること自体が奇妙であり、「国民の命と健康を守る」、「医療ひっ迫を防ぐ」という観点からは何ら解決にはなりません。それどころか、状況も悪くする可能性に方が高いのです。

岸田文雄首相は7月14日の記者会見で「新たな行動制限は現時点では考えていない」と述べました。これは、岸田首相と尾身会長も事前会談で「必要ないのではないか」と述べたことを踏まえた上での発言です。

しかし、これらの言葉とは裏腹に、14日午前の分科会で示された専門家らによる提言には、医療ひっ迫が生じる場合は「人々の行動や接触を抑える施策も選択肢の一つ」と記されています。専門家らは、感染の拡大が進んだ場合は「行動制限の他に打つ手がない」とみているのが実態です [6]。さらに、経済との両立に向けた対策の緩和について、季節性インフルエンザ並みの扱いを想定して専門家らが水面下でつくった、一定の感染拡大を許容する社会をめざす「行程表」の提出は見送られました。とても出せる状況ではないということでしょう。

この先、さらに感染拡大した場合はどうなるでしょう。政府が行動制限を実施するとしても、まん延防止などは飲食店中心の制限になり、国民の理解を得られにくくなっている上、効果があるのかも見通せていません。第1〜5波のデータを見れば、行動制限が一定の効果を示したことは明らかにように思いますが、発出するタイミングが悪すぎました(つまり発出の遅れ)。

医療ひっ迫の兆候は、すでに起きています。発熱外来には患者が殺到し、救急や一般医療で診療制限が始まりました。医療機関の職員が濃厚接触者となって欠勤し、入院を断らざるを得ないケースも発生しています。

頼みの遺伝子ワクチンも期待はずれでした。政府や医療専門家は盛んに3回目、4回目接種を促していますが、ブースターが高い感染予防効果を示す証拠はなく、その対象を拡大したとしても感染拡大抑制には繋がらないでしょう。中和抗体価の上昇を示すデータはあっても、一方で、ブースターによる細胞性免疫低下、抗体依存性増強(ADE)などの可能性は一切無視されています。

おわりに

いま、COVID-19は、実質、2類相当の扱いはされていません。感染者の原則入院はなく、多くが自宅療養であり、濃厚接触者の隔離措置や就業制限も緩和されています。まん延時には無症状者は検査されず、濃厚接触者のトレーシングも行なわれません。このような状況で5類相当にしても、患者側にとっては医療費負担が伸し掛かってくだけでメリットはほとんどないでしょう。

BA.5まで変異が進んだ段階で、SARS-CoV-2の病毒性が軽くなっているという証拠はありませんし、無論、季節性インフルエンザ並みということもありません。ウイルス病原体は病毒性が低下する方向に進化するという説も、科学的データはなく、単なる寓話にすぎません [7, 8]エンデミック(風土病)の誤解予測不能な病毒性をもつSARS-CoV-2の出現)。

分科会委員の一人は、尾見氏の一連の発言について「行動制限をかけたくない政府の気持ちをくみ取ったのだろうが、先走りすぎだ」と話しています [6]。どうやら、ここにきての5類相当への変更の話は、新型コロナが季節性インフルエンザに近づいたという思い込みと、「もう打つ手なし」という焦りと諦めと政権への忖度が合わさって出てきた専門家筋からの話ということになるでしょう。英国のように規制解除して全面自己責任にしてしまえば、はるかに楽なわけです。

感染の急拡大によって、感染対策と経済活動の両立も遠のきつつあります。もとより、社会経済活動を維持するために、感染者数を一定レベル以下に制御する必要があるのです。そういう意味で先行指標としての感染者数はきわめて重要なのです。

私は、今回の5類変更の話を受けて、以下のようにツイートしました。

もう世界中で、規制緩和や追跡中止に伴い、新型コロナに関する統計情報は壊れつつあります。被害の実態もわかりにくくなっています。海外の表面的な動きや数字に惑わされないように、慎重なコロナ対策が求められるでしょう。ひょっとしたら、長期コロナ症を含むCOVID-19とワクチンの両方によって、知らず知らずのうちに日本人のみならず、人類全体の健康が損なわれているということになりかねないですから。

引用文献・記事

[1] ロイター: 新型コロナの2類から5類への変更、現実的でない=官房長官. 2022.07.13. https://jp.reuters.com/article/matsuno-comment-covid-idJPKBN2OO0IU

[2] 高橋杏璃、市野塊: 「5類に近い方向」検討を 尾身氏、コロナの感染症法分類めぐり提言. 朝日新聞DIGTAL 2022.07.14. https://digital.asahi.com/articles/ASQ7G7JW5Q7GUTFK026.html

[3] Kaufer, A. M. et al.: Laboratory biosafety measures involving SARS-CoV-2 and the classification as a Risk Group 3 biological agent. Pathology 52, 790-795 (2020). https://doi.org/10.1016/j.pathol.2020.09.006

[4] 柚木まり: <Q&A>新型コロナを「2類相当」から「5類」に引き下げると何が変わる? 東京新聞 2022.02.20. https://www.tokyo-np.co.jp/article/161261 

[5] JIJI.COM:「2類相当」見直し、国に要請 新型コロナ、「5類」には慎重―知事会. 2022.05.10. https://www.jiji.com/jc/article?k=2022050900875&g=pol

[6] 枝松佑樹: 政府否定の行動制限、でも実際は「他に打つ手ない」 遠のく対策緩和. 2022.07.14. https://digital.asahi.com/articles/ASQ7G6SVJQ7GUTFL01L.html?iref=pc_extlink

[7] Katzourakis, A.: COVID-19: endemic doesn’t mean harmless. Nature 601, 485 (2022). https://doi.org/10.1038/d41586-022-00155-x

[8] Markov, P. V. et al.: Antigenic evolution will lead to new SARS-CoV-2 variants with unpredictable severity. Nat. Rev. Microbiol. 20, 251–252 (2022).  https://doi.org/10.1038/s41579-022-00722-z

引用したブログ記事

2022年7月2日 COVID-19パンデミックにBA.4/BA.5変異体がもたらすもの

2022年6月21日 この夏の第7波?流行

2022年3月16日 予測不能な病毒性をもつSARS-CoV-2の出現

2022年1月31日 エンデミック(風土病)の誤解

                    

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年)